春のような温かさがいつもある学校に…きっと、君は何かを難しく考えて、行動したのではないのだろう 〜心の宝物74
🌷雑巾でふいたほうがきれいになるよ
山に囲まれた小さな学校
「タイルの土間を雑巾で拭く」という方式を児童玄関掃除に取り入れたものの、それまでになじみのないことで、この頃は、取り組む子はまだ少数でした。
無理もありません。もとより人が土足で使用するところです。磨こうとついた膝には、細かな石粒が食い込みます。きれいになるのも束の間。続いての昼休みの後には、前にもまして大量の砂や小石が入り込み、掃除をしたのがうそのような状態に戻ります。
しかし、3年生の彼は、それらのことを全く意に介さないかのように、生き生きと土間の水拭きに取り組んでいます。
思うところを尋ねました。
「雑巾でふいたほうがきれいになるよ。そのほうがきもちいいから」
先に取り組んでいた子や私と競うように、しかも楽しむように磨いていく小柄な彼が大きく見えました。
🌷きっと、君は何かを難しく考えて、行動したのではないのだろう
彼の元気な姿と、そこから発せられる明るい空気は、同じ掃除場所の子だけでなく、別の分担場所へ向かう子、そこから帰る子の目を引きました。
「自分たちが土足で使用しているところに膝をついて磨く」という行為への、感嘆や賞賛の声なき声が少しずつ広がっていきました。
それが、彼や、すでに取り組んでいた子の心に届き、勇気ややりがいに転化していくのが分かりました。
学校に新しいものがうまれ、それが全員の幸せを支える方向に進化を遂げるときには、それを発想し、取り掛かる子と、彼のように、そのことに共感し、周囲の違和感や戸惑いをよそに、正面から強力に取り組む子の存在が欠かせません。
しかし、それは言うほど簡単なことではありません。感じたり、気づいたりすることと、それを自らの言葉や行動で実現する選択をすることとの間には、とても大きな距離があります。
きっと、君は何かを難しく考えて、行動したのではないだろう。
この頃、朝の挨拶をそうしているように「そのほうがきもちいい」という、そんな、ありのままの感覚を素直に実現したのだろう。しかし、その感覚の底には、自分や他の人の幸せを実現することへの強い願いがあると思う。
その願いと行動する勇気が、今、学校に新しい文化を根付かせつつある。この経験が、君が将来、君自身と君の大切な人の幸せを実現する力に必ずつながると信じるよ。
そんな思いでお伝えしました。
かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。