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「オードリータン 自由への手紙」 要約・所感

おはようございます。本日は「オードリータン 自由への手紙」を取り上げたいと思います。前回のnoteの内容ではオードリータン自身について書けなかったので今回こちらの本と前回の本を合わせて深掘りできればと思います。

次代の世界的カリスマとして注目を集める台湾IT担当大臣がどのような考えで活動に取り組んでいるかをお伝えできればと思います。

1. オードリータンの生い立ち

オードリーの家系を祖父母まで遡ると特別なルーツを持つ家柄と言えます。国民党軍と一緒に中国本土から移ってきた祖父、日本統治時代に教育を受けた台湾出身の祖母、この二人が結婚するのは当時かなり珍しい事だった様です。

また、ともに新聞社で働いて知的で進歩的な両親は、子供の探究心を抑えつけることを一切せず伸び伸びと育てました。生まれつき病弱で学校生活に馴染めなかったことで6つの小学校を転々としました。また、両親の仕事の関係で海外生活も経験します。図らずとも様々な意見や文化的多様性に触れる機会があったと言えます。

そんな経験の中で人種、地域、文化は異なれど、人間には普遍的な価値観があるという事実に気づかれます。

12歳のときにインターネットと出会い、プログラミングに没頭します。中学を中退し、アメリカに渡りIT企業家として成功し、若くして経済的自立を果たします。その後、公益に資することが自らの仕事だとして「公僕の中の公僕になる」と自ら宣言し、2013年に台湾のデジタル政務院という役職に就き、様々な政治課題をテクノロジーの観点で解決へ導いていきます。

2. オードリータンが考える AI と人間関係

急速にテクノロジーが発達している現在では、「AIの台頭によって、人間は職を奪われる」という危機を感じる人も多いです。「この仕事のこの技術こそ自分である」という自身と技術を一括りにするスキルセットの考えでは AI を敵対視してしまいます。

オードリーはAIを人工知能Artificial Intelligenceではなく補助的知能Assistive Intelligenceと捉えたほうがいいと説きます。ちょうどドラえもんとのび太の関係と例えます。ドラえもんはのび太に命令や強制はしません、のび太の成長をサポートするのが役割です。のび太もドラえもんが便利な道具を出してくれるからといっておんぶに抱っこで全幅信頼を置いている訳ではありません。テストも宿題も投げ出して学校に行かなくて良いわけではないのです。

もし仕事の結果に対する喜びが公共の方向を向いていれば、AIと競争原理に囚われる事はありません。「AIにできることはAIに任せて、自分はより良い公共の価値を生み出す」とポジティブに考えます。AIに仕事を譲ったことで自分はより価値のある高い仕事に専念できると満足する事ができる。AI と共存するためにはそういった考え方も必要です。

3. オードリータンが考える デジタル時代の教育

オードリーは自身の経験からプログラミング思考の重要性を説きます。プログラミング思考とは「一つの問題をいくつか小さなステップに分解し多くの人たちが共同で解決する」というものです。一人で問題を抱えて完遂するのではなく、他者に共有しながら協力して解決するという点では、どの分野でも通用する問題解決能力になります。まさにこれからのデジタル時代の求められるスキルと言えます。

しかし、さらに子供達には「スキル」ではなく「素養」をと説きます。その素養とは以下の3つです。

①自発性

②相互理解

③公好(ゴンハオ)

①とは 誰かの命令や指示ではなく、自分自身でこの世界を理解し、何が問題なのか、自分たちに何ができるかを考えること。

②とは 自分の考えをシェアすることを厭わず、またシェアされたものを耳を傾けると言った寛容な姿勢です。人と接触すること恐れず、押し付けや迎合にならないよう関係性を築くことです。

③とは 自分には自分の価値があり、相手にも相手の価値観がある。これを常に頭の片隅において、どうやったら皆が受け入れられる共通の価値を生み出す事ができるかを考えながら共同で作業をする。この3つがデジタル時代に求められる素養と言われます。

普遍的な価値を見つけるためには異なる考えの方をする人と交わること。自分とは全く異なる文化、異なる世代、異なる場所にいる人の話を聞き続けることで自ずと普遍的な真実、普遍的な意見というものがあるということを理解できる。SDGsはまさに人間が共有できる普遍的な価値と言えます。

「自分とは意見の対立する相手にも耳を傾け対話をする」「お互いの共通の価値観を見つける」「お互いの意図にも添う第三案が建てられる」この様なスキルは現代の大人にこそ求められるものだと思います。前回の書籍を含めて世界的カリスマであるオードリータンの考え触れられて、非常に学びある良い読書経験となりました。皆さんも是非手にとって読んでみてください。



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