「オードリータン デジタルと AI の未来を語る」 要約・所感
おはようございます。本日は、「オードリータン デジタルとAIの未来を語る」を取り上げたいと思います。
台湾は世界で最もコロナ政策に成功したとして話題となり、日本でもテレビなどで取り上げられその先進性を目にする機会が増えていると思います。成功の背景にはテクノロジーを用いたデジタル民主主義があります。
しかし本書を読めば成功の理由がそれだけではないということがわかります。台湾政府がどのように民主主義を捉え政策に落とし込んでいるかを知ることはとても大きな学びになります。この点について感じたことを以下の3つに分けて説明していきます。
1. 台湾が歩んだ民主化の歴史
台湾は歴史的には日清戦争以後は日本の統治下でしたが戦後は日本に変わり中国本土から内戦によって逃げてきた国民党軍が統治する厳戒態勢の時代が長く続きます。1980年代になって台湾の民主化が進行し、その立役者となったのが李登輝という人物でした。
李登輝は自分が何をしたいかではなく人々が何を望んでいるかで政策を遂行しました。また、「国民のために」ではなく「国民とともに歩んだ」政治家でした。1990年に起こった野百合学生運動ではデモを起こした学生を武力で鎮静するのではなく、平等な立場に立って対話をしました。
デモは圧力や破壊行為ではなくたくさんの人々の多様な意見があることを示す行為、政治は国民が参加することによって前に進める、台湾には李登輝時代のこういった成功体験があります。今の50-60代の世代はこのときに自らの行動で民主主義を作った事に自信を持っているので、2014年のひまわり学生運動はじめ今の若者たちがよりよい民主主義を望んでの行動を大切に尊重しています。
2. インクリュージョン
台湾はインクルージョンという考え方に重きを置いています。「誰も置き去りにしない」「すべての人々に利益につながる」この考えに基づいて政策がたてられます。公共のインフラ事業である5G通信網の整備においても都市からではなく地方から先に進めるといった方針をとっています。
田舎に暮らしていると教育や医療といった場面において都市ほど簡単にアクセスすることは難しいです。これを政府は「公平ではない」とし地方の人々にインターネットを通じて都市と機会の均等をはかっています。台北市街を歩けば至る所にまでバリアフリーが行き届いており、公園に行けば車椅子用のブランコも設置してあるそうです。
LGBT 問題についても寛容でありジェンダーレストイレの設置も進んでいます。そう、アジアで初めて同性婚を政府が認めたのも台湾です。このように、先進的な政策が実現するのも国民の間で多様性のある社会、公共の利益の追求といったインクリュージョンという価値観の共有がはかれている証拠とも言えるでしょう
3. オープン・ガバメント
オードリータンは現在デジタル担当政務員という職務についています。台湾にも日本の各省庁にあたる行政院がありますがそのうちの一つという立て付けではなく、各行政院の異なる価値を調整しデジタル技術を使ってクリアにつなげていく横断的な役割を担っています。
また、国と国民が双方向で議論ができる環境を構築していくことも進めています。オンラインで誰でも生活上の問題を解決するための新しいアイデアを投稿し、そこでディスカッションができる「vTaiwan」と「Join」というデジタルプラットフォームを提案しました。
ここで一つの提案に5000人以上の賛同者が集まると、行政側は必ず請願として受け付け、書面にて回答を出さなければなりません。17年に書き込まれた『プラスチック製の皿やストローを禁止すべき』という提案は、またたく間に5000票を集め、ついに段階的にプラスチックストローを禁止する方針が打ち出されました。実はこの投稿したのは16歳の女子高生であったのです。
台湾ではたとえ選挙権がなくても政治に参加することが可能なのです。また、会議の様子がWEB上で公開され中継もされるとともに、話し合われた内容が一字一句記録されそれも公開されます。このような政府が示す「透明性」は、国民の信頼を産み民主主義をさらに進めることが可能となるでしょう。
台湾は国民が政治を動かすという意味で民主主義が日本よりも一歩二歩進んでいますね。台湾国民が民主化以降に育て上げてきた公共の利益の追求といった価値観が大きく影響しているように感じました。日本が台湾から学ぶべき点がたくさんあると思いました。皆さんも是非手にとってみてください。
オードリータン自身に踏み込んだ内容が書けなかったので次回に改めて取り上げたいと思います。