顧客の「声」をLIFULLのプロダクトグロースに活用する仕組み
こんにちは。LIFULLでサービス企画職の生産性可視化・向上に取り組んでいる島原です。
映画鑑賞が趣味で、毎年120本の目標を達成するために私生活の生産性向上にも努めています。
現時点での2023年おすすめ映画は「アフター・サン」です。
今回の記事では、顧客の「声」をプロダクトグロースに活用するために、LIFULLが約3年間かけて取り組んだ仕組みづくりについて紹介します。
はじめに:この記事を3行でまとめると
LIFULL HOME’S が顧客から愛されるプロダクトであり続けるためには、顧客からの要望に寄り添うことが大切だと考えています。
「集約→可視化→対応→FB」の4工程から成り立つ「顧客要望の改善サイクル」をものづくり組織に定着させました。
今後は改善サイクルの高速回転化を目指し、ツールの自動化やものづくり側の目標設定などを検討しています。
なぜ顧客の「声」が大切だと考えたのか
LIFULL HOME’S は、物件を探しているユーザーと不動産会社をマッチングするサービスです。
私たちの顧客とは「ユーザー」と「クライアント(不動産会社)」の両方を指し、プロダクト開発にはその両者のニーズをしっかりと理解する必要があります。
しかし、3年前のLIFULLは顧客のニーズの収集からプロダクトグロースへの活用が上手くできているとは言い難い状況でした。
思うように顧客の要望をプロダクトに反映できていない現状を打破するために、LIFULL代表の井上が専門組織「PM推進室」を立ち上げました。
この専門組織はプロダクトマネジメント(PM)という「顧客に提供価値のある製品を計画・開発・提供するプロセス」を推進し、LIFULL HOME’S が顧客から愛されるプロダクトであり続ける仕組みを作り上げることがミッションです。
つまり、顧客の声をプロダクト開発に繋げる役割を担います。
状況整理から気づいた「顧客要望の改善サイクル」
まずは、LIFULL HOME’Sが顧客から愛されるプロダクトであり続けるために、今の私たちに不足している要素は何なのかを検討しました。
1.顧客要望を収集できていない
そもそも、LIFULLには顧客要望が1つに集約されている場所が存在していませんでした。
もちろん、ユーザーの要望はサポートデスクやものづくり、クライアントの要望は営業、のように担当組織ごとでは把握していましたが、複数部門に散在しておりプロダクト共通の課題として受け止められる場所がなかったのです。
2.関係部署間で課題への共通認識を持てていない
前述のように、顧客要望が複数部門に散らばっているため、LIFULL全体で課題への共通認識を持つことができていませんでした。
例えば、ユーザー側の「問合せフォームを簡易化してほしい」という要望に対しフォーム簡略化の改善を行ったとして、それは蓋を開けてみるとクライアント側の「もっとユーザー情報をフォーム内で仕入れて欲しい」という要望に反している、なんてことがいつ起きてもおかしくない状況でした。
3.改善施策からの施策立案が管理できていない
それぞれの部門が顧客要望に対し改善施策を企画していましたが、こちらも各部門ごとの管理となっていたため企画の進捗や改善結果がLIFULL全体で把握できていない状況でした。
4.改善対応をフィードバックできていない
また、要望に対する改善を行っても、それを顧客にフィードバックするためのフローが構築されていませんでした。
そうすると顧客側は「いつまでも自分の意見に応えてもらえない」「顧客のことを大事にしてくれないサービスだ」と感じてしまいます。また、顧客だけでなくクライアントの1番近くで接している営業も「自分はお客さんから何度も同じ指摘を受けていてエスカレーションしているのに、一向にものづくり側は対応してくれない」と不満を抱いてしまいます。
これにより、社内外双方で悪循環を生んでしまっていました。
以上の4つの現状を改善するためにそれぞれ解決策を考えました。
1.顧客の声に傾聴し、集約する
2.顧客の声を可視化し、関係部署間で共通認識を持つ
3.顧客の声から改善施策を立案する
4.顧客への要望対応をフィードバックするフローを構築する
これらの取り組みを「1.集約・2.可視化・3.対応・4.FB」として顧客要望の改善サイクルに組み込み、顧客に寄り添ったプロダクト開発を目指しました。
4つのステップにおける具体的アクション
それぞれの工程に対する具体的な取り組みを紹介します。
1.集約:顧客の声に傾聴し、集約する
はじめに、バラバラに管理されている顧客要望を1つに集約することから取り組みました。
まずは既に部門が各々で持っている顧客要望をスプレッドシートにまとめる作業を行いました。また、新たに要望を取得した際も効率よく集約できるよう連携体制を整えました。
この時、要望を収集できていないステークホルダーがいないかどうかもこまめにチェックし、ユーザー向けに「みんなの声」、クライアント向けに「LIFULL HOME’S サービス・機能改善コミュニティ」というサイトを立ち上げ、顧客が改善要望をより気軽に出せる窓口も用意しました。
また、営業向けにはGoogleフォームを活用した目安箱を設置し、社内からクライアントの生の声をすぐに集約できる仕組みも作りました。
また、集約をなるべく自動化したい、という長期的な観点からスプレッドシート管理を廃止し、「Flyle」という顧客要望管理ツールを導入しました。これにより、SlackやCSVインポートでの投稿も可能になり、集約の幅を広げると同時に工数削減にも繋がりました。
2.可視化:顧客の声を可視化し、関係部署間で共通認識を持つ
次に、集約された大量の顧客要望の可視化を行いました。
既に数千個以上の要望を集約できていたため、何の分類もされずにただずらっと要望が並んでいるだけでは、ものづくり側もどれが重要なのか分かりません。
そこで、要望をプロダクトごとにフォルダ分けし、各部門の担当者が自分に関係のある要望がすぐに見つけられるように改善しました。
さらに、要望とJIRAを連携し対応中の改善施策の進捗ステータスを見れるようになる予定です。LIFULLは施策をJIRAで管理しているため、「JIRAの進捗=要望改善の進捗」としてLIFULL全体の改善サイクルの進捗も一目で分かるようになります。これにより、関係部署間で1つの要望に対して同じ共通認識を持ちながら改善を進められるようになります。
3.対応:顧客の声から改善施策を立案する
次に、顧客要望からのプロダクト開発を進めるために、各部門のものづくりと連携を強化しました。
重要度が高いとみなされた要望は毎月各部門の担当者と共有し、施策化の調整を行いました。また、社内の評価だけでなくクライアント向けの応援投票イベントなども開催し、本当に顧客が欲しているプロダクト開発を見極めてリリースを進めることもありました。これらの取り組みにより1年間で要望も考慮された改善施策が100数件リリースされました。
また、FlyleにAI機能を導入し、要望の重要度や優先順位付けなどを自動分析できるようになる予定です。これによって人手による工数が削減でき、今後は各部門に重要度の高い要望が自動でメンションされるような仕組みになるよう準備しています!
4.FB:顧客への要望対応をフィードバックするフローを構築する
しかし、ただ改善するだけで顧客への要望に応えたと言い切るのはまだ早いです。要望を上げてくださった顧客は、LIFULL HOME’S に対する期待や不満を少なからず抱いているはずです。
そのため、改善活動を顧客に積極的にフィードバックし、知ってもらう必要があります。
そこで、要望収集サイトに要望への一次回答を掲載しました。さらに、クライアント向けサイトには改善中の施策一覧や、最新の改善情報の掲載、毎月配布されるプロモーションニュースでの情報掲載なども行いました。「LIFULL HOME’S は皆さんの声に対してこんな改善をしているんですよ!」というアピールを繰り返し、この取り組みに対しては顧客からも良い反応をもらえました。
また、改善サイクルを循環させるためには社内共有も重要です。リリースされた施策情報はSlackや社内向けのメールで発信しました。これにより、ものづくり側には各部門での改善結果の検知、営業側にはクライアントへのアピールポイントの提供が可能になりました。
未来へのステップ:次の挑戦
道中で泥臭い作業を経ながらも、なんとか約3年間で効率的な改善サイクルの仕組みを作り上げることができました。
今後はさらなる生産性向上のために、顧客要望の分類作業や施策管理などの更なる自動化を目指し、改善サイクルの高速回転化にも取り組みます。
顧客要望からの施策化数・リリース数をものづくりの目標に設定したり、各部門に改善サイクルの担当者を配置し、進捗をこまめに観測することも検討中です。
これからもご期待ください!
LIFULL HOME’S はこれからも顧客の「声」に寄り添い成長し続けます。
皆様の真摯なご意見やご要望をお待ちしております!
ユーザーのみなさまの声を参考に、サイト改善に取り組んでいます。
クライアントのみなさまのサービスや機能に関するご要望・改善の取り組み状況をご紹介しています。
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