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滋賀県米原市に移住した石崎達郎さんのLOCAL MATCH STORY 〜自分にとって心豊かな自給を考える暮らしへ〜

2022年4月より米原市の空家に関する事業を担う「米原市空家再生みらいつくり隊」に就任した石崎達郎(いしざき・たつろう)さん。

新卒入社した大手電気機器メーカーでは開発職に従事するなか、自身の理想とする働き方を模索していたと話します。その後、2度の転職を経験。これまでの会社員生活を通して、組織や社会に感じてきたある違和感をきっかけに移住へと動き出します。

石崎さんが移住を決意した理由や、愛知県から滋賀県米原市への移住を実現するまでのエピソードを伺いました。

利益追求型の社会から距離をとり、自給自足の暮らしを目指したい

—まずは移住を決めた経緯を教えてください。

石崎:2年ほど前に家族が病気になったことやコロナ禍で社会情勢が大きく変化するなかで、「人生において本当にやりたいことは何か」「どうなったら最高の人生か」を考え始めたことがきっかけです。前職は油圧機器メーカーで営業職として働いていたのですが、正直、会社や自分の利益のためだけに働いているような時間がもったいないと思うようになっていて……。それならなるべく社会に頼らず、自分で畑を耕して自給していく生き方を目指したいなと思うようになりました。

—消費社会や利益追求型の社会から距離をとって、お金に頼らなくてもよい生き方を実践するということですね。自給自足を目指すにあたって、何かアクションはとられていたのでしょうか?

石崎:そうですね。畑づくりや農で起業する講座などを受けて、まずは農についての学びを深めていました。当時住んでいた愛知県長久手市でNPO法人にも入っていたので、そこで畑の一部を使わせてもらい、具体的に動き出していました。

自給自足の暮らしを目指し、お米づくりを実践的に学ぶ石崎さん。

—お住まいの愛知県で新規就農を始めるというお考えはなかったのですか?

石崎:あまりなかったですね。長久手市は愛知県の中でも人気のエリアで、土地の価格も高くなってきていました。それなら今の場所にこだわらず移住先を見つけて農業にチャレンジしてみようと思いました。

Facebook経由で情報収集の日々。移住先の条件は「水がきれいな土地」

—ちなみに「米原市空家再生みらいつくり隊」の募集はどのようにお知りになったのですか?

石崎:LOCAL MATCHのFacebookグループに入っていたので、そこで今回の募集を知りました。移住をキーワードにしたグループに色々と入っていて、LOCAL MATCHもそのなかの一つとして活用していました。

—米原市はどういった点で候補先として惹かれていたのでしょうか?

石崎:自給自足がしたかったので、農業ができる場所というのはまず大前提でした。そのなかでも「水がきれい」というのは大きな条件でしたね。米原市は名水百選にも選ばれた湧水を有する土地でもあるので、まさに水がきれいな土地として非常に魅力的でした。あとは、妻が大阪で仕事をしていることもあり、名古屋から行くよりも近くなるという点で立地条件にも見合っていました。

—今回、米原市とLIFULLが協働で企画した現地体験ツアーにも参加されていたそうですね。米原市を訪れてみて、町の印象はいかがでしたか?

石崎:すごく印象がよくて、「ここに住みたいな」という気持ちになりましたね。なので、実はそのまま「米原市空家再生みらいつくり隊」に応募することにしたんです。

—それは素早い決断ですね! ほかの候補地を見に行くご予定はなかったのですか?

石崎:米原市を訪れる前に、候補地として訪れた土地もありましたが、ご縁を感じた「米原がいいな」と。もちろん、ほかに気になる地域もなくはなかったのですが、色々見るよりも米原市で進めてしまおうと思いました。

この人たちと仕事がしてみたい。体験ツアーで感じた「人の魅力」

視界を遮るものがないほど、広大な田畑が広がる自然豊かな米原市。

—米原市を訪れた際に、「ここに住みたい」と思うほど、惹かれたポイントを教えてください。

石崎:結論から言えば、「人」が良かったんです。ツアーを通して出会った方々がすごく良い方ばかりで。なかでも市役所の方々が楽しそうに働いていて、こういう人たちと仕事をすると楽しいだろうなと思いました。

—具体的に市役所の方たちのどんな姿が印象的でしたか?

石崎:「米原市を本気で良くしたい」という思いが伝わってきて、本当にこの土地が好きなんだなと思いました。ツアーでも色んな場所を案内してくださったのですが、「米原は本当に楽しいところなんだ」とみんなが心から思っている様子も素敵でしたね。「ぜひこの人に会ってほしい・会わせたい」と常に動いていて、すごく熱量を感じたんです。正直、役所で働く方々のイメージがガラリと変わりました(笑)。

—ツアーでは移住後の活動拠点ともなる「まいばら空き家対策研究会」の方とお会いしたそうですが。

石崎:はい。現地でも非常によくしていただいて、一緒に仕事がしたいなと思いました。研究会の方々に関しては、恋する空き家プロジェクトや過去のインタビュー動画などで空き家に対する思いをうかがっていて、単なる不動産仲介ではなく、「人と人をつなぐ仲人」としての立場や姿勢が素敵だなと思いました。会社や自分の利益ではないところに、重きを置いておられるのがいいなと。

—移住は地域の人との相性も重要ですよね。その点、今回のツアーに参加したことで移住に対する具体的なイメージが広がったのではないでしょうか。

石崎:そうですね。ツアーに参加するまでは、移住して自分はどのように暮らしていくかという部分をわりと狭い世界で捉えていました。たとえば自給自足で暮らしていくためには小さなコミュニティで物々交換して——という。それが、今回ツアーで市役所の方などさまざまな方とお会いしたことで、「まちづくり」といったような少し大きな規模で仕事をしていくのも面白いなと思いました。地域を盛り上げるというのは社会貢献の意味もあるし、自分の利益のためではなく「地域のために働く」という面でやりがいもある。そういった広い範囲で地域と関わる暮らしみたいなものを今回イメージできました。

田舎のカルチャーに驚きつつ…応援してくれる人々の温もりに奮起する日々

朝焼けが差し込む伊吹山の風景。
きれいな水・空気・大地に恵まれた自然豊かな暮らしがここにあります。

—前職の都合もあって、5月に移住されたばかりだと伺っています。実際にお引越しをされていかがですか?

石崎:こっちに来てまだ1〜2週間ですが、すでに3、4回も地域の方からもらいものをしていて、田舎はすごいなとびっくりしているところです(笑)。

—まさに物々交換が成立するような(笑)

石崎:そうですね。しかも、もう畑まで借りていて。

—すごいスピード感ですね。

石崎:そうなんです。移住後に自治会長面談で、今後どういうことがしていきたいかということを話し合っていたとき、僕は「自給自足を目指して、畑とかしたいんです」と伝えたら、次の日には候補地を持ってきてくれていて……。3日後ぐらいには「ここ使っていいから本契約しようか」みたいな話になっていました(笑)。自治会長はじめ地域の方々が僕らのことを応援してくれていてすごく協力的なので、それも良い意味でのプレッシャーになっています。

—周りの方々に支えられてすごくよいスタートが切れていますね。まだまだ始まったばかりですが、今後の展望を教えてください。

石崎:理想とするのは地産地消の自給自足ですね。完全な自給自足というよりは、コミュニティを維持するための自給自足。水道・電気電気は将来的に自給自足したいのですが—などのライフラインはまだ自分たちの手では整備できないですし、税金も払わなければならないので、やはり現金収入はある程度必要になります。なので、作った農作物を売ったり、空き家で作ったモデルハウスを売ったり貸したりするほか、今後僕のように自給自足を目指して移住してくる方々に向けて、自分の経験や暮らしの知恵をシェアするイベントなども検討しています。同時に「学びの場」「体験移住の場」として空き家を上手く活用できたらと考えています。

移住前にしておくべきことは? ポイントは「地域の人々」の存在

自らの人生や家族の存在をあらためて見つめ直すなかでたどり着いた、「移住」という選択。

—では最後に、今後移住に向けて動き出そうとしている方々にメッセージをお願いします。

石崎:まずは移住したいと思う地域に行ってみることが大切かなと思います。その後の暮らしをイメージするためにも、地域の人に会って話してみることが必要かなと。じゃないと、なかなか自分にあった地域が決められないと思います。あとは、移住してやりたいことを自問自答して、ある程度ちゃんと見つけておくことも大切ですね。もちろん移住後にやりたいことが変わってもいいと思うんですけど、最初の目的として自給自足がしたいのか、自然豊かな田舎でただ暮らしたいのかを自分の中ではっきりさせておくと、どの地域が自分に合っているのかが見つかりやすいと思います。

—「なぜ移住したいのか」「何がしたいのか」がわかれば、移住先も見つけやすいのかもしれませんね。石崎さん、本日はありがとうございました!

(終わり) インタビュー時期:2022年5月☆ ☆ ☆

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