ブランディングのメモ帳-2
「モノが商品になり、商品がブランドになる過程」
「差別化」「品質」「ターゲットユーザー」「商圏」「拡散」「認知」「安定」。
もちろんこれら以外にもブランディングの要素はある。でもこれらを成立させるための過程を考えて行かないとブランドを成立できないのも事実。そして、「自然発生型のブランド」と「人の意思で立ち上げたブランド」という違いから考えると、ブランドが成立してゆく過程も違ってくるのではないか?ということに気づく。
大きな違いは「自然発生型のブランド」を持っている事業者はそもそもブランドを起こすための「資本」を持っていないということ。つまり意図的に資本を投下しながらスタートするのではない。「村のチーズ店」の話を思い出してほしい。
「村のチーズ店」ストーリー1(自然発生型のブランドの場合)
そのお店は元々お店でもなく、経営さえしていなかった。村人の家には普段の生活の中に先祖代々伝わる「美味しいチーズ」だけが存在していた。そこには何の意図も存在していなかったし、生活に事足りる量のチーズだけを細々と作っていた。彼らは「売りたい」と思ったことはない。そこにあるのは美味しいという評判(「差別化」と「品質」)だけだった。その二つが偶然に「商品価値」を生み出した。そしてたまたま訪れた人々が購買することによってそのチーズは「商品」となった。商品価値を生み出した理由はもう一つある。それは周辺に住んでいた人々が口にすることで生まれた口コミによる「拡散」だった。これがその商品の「商品価値」を徐々に押し上げた。周辺の人々の口に入ることで「商圏」も育ち始めた。「商圏」は自然に拡大し少しずつ人がその美味しさを「認知」し、その中から特定の人たちが商品のファンとなって「ターゲットユーザー」になっていった。そのことで長い時間をかけてチーズは「安定」した売上を得られるようになった。
これがもしも「人の意思で立ち上げたブランド」の場合は、物語はどう変化するのだろう。
「村のチーズ店」ストーリー2(人の意思で立ち上げたブランドの場合)
ある村人は他の人が作っているチーズよりも美味しいチーズを作りたいと思った。研究を重ねてどのチーズよりも美味しいチーズを完成させた。できればこのチーズをたくさんの人に食べてもらって「売上を上げたい」そうすれば暮らしも楽になるだろう。村人はチーズを「商品」として玄関先でチーズ屋を始めた。でも待てど暮らせど誰も買いに来てくれない。おかしいな?他のチーズより美味しいはず。「品質」には自信があった。門外不出の製法で他の人が真似できない「差別化」も出来ていた。ある日、親戚がチーズを買いに来てくれた。「どう?売れてる?」「それがさっぱりなんだ」「こんなに美味しいのにね」そうすると親戚が言った。「そうだ、どうせならみんなに集まってもらって食べてもらったら?」そうしてそのお店で「試食会」をすることになった。宣伝用のチラシも用意し村中に配った。試食会にはたくさんの村人が来てくれ、試食会は大好評だった。試食会に来た村人は「チラシを持って帰って友達にも配ってあげる」と言ってくれた。それは悪いからチーズをおまけしてあげると店主は言った。そうすると「私も」「俺も」とたくさんの村人が協力してくれた。皆は口の肥えた「ターゲットユーザー」を中心にチラシを配り、隣村へと噂は広がり大きな商圏を作った。やがてチーズ店は大きな店になっていつもお客様の絶えない「安定」した経営が出来るようになった。
さて、どちらのチーズ店も成功しましたが、違っているのは「チーズ店」(ブランド)が立ち上がるまでの店主の意気込み。元々あった「美味しいチーズ」が自然に売れるようになるのと、頑張って作った「美味しいチーズ」を皆に広めて売りたいと思うのでは「ブランド」が立ち上がるまでの戦略が違ってきます。それは受け身であるか能動的であるかの違いとも言えます。
そして能動的に販売を始めた村人は「試食会」(イベント)の設営や準備と「宣伝用チラシ」(広報宣伝)にお金をかけました。これはスタート地点で「資本」を持っているか?持っていないか?によって差がつくことを示しています。
しかし、今や世界中に店舗を構える海外の有名なブランドも最初とても小さな店舗からはじめたところも多く存在します。ブランドの成長を決めるのは「資本」だけではなく「知恵」も必要だと言えます。
次回はその「知恵」についてお話ししたいと思います。