GPIFってなに?
人生100年時代と言われ、老後不安の高まりから受け取れる年金額は気にしている方が多い一方で毎月、お給料から年金保険料は自動的に引かれているけれども、その資金がどの様に年金として使われているのか実はよく知らない人は意外と多いかもしれません。
今回は公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の説明とその役割、GPIFの運用状況や運用成果についてお話します。
◆GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは?
みなさんはGPIFをご存知でしょうか?
GPIFの正式名称は「年金積立金管理運用独立行政法人」。
英語ではGovernment(政府)Pension(年金)Investment(投資)Fund(ファンド・基金)」とあり、その頭文字を取って「GPIF」と称されます。
GPIFはその名称の通り、年金積立金の管理・運用を行う独立行政法人です。
え!?年金って、運用してたの???と思った方の方が多いのではないでしょうか。
◆年金積立金は未来の世代のためのお金
日本の年金制度は、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者に年金を給付しています。
今の現役世代が将来受け取る年金は、その子どもや孫たちの世代が納める保険料でまかなわれる世代間扶養の仕組みになっています。
現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかったものが、将来世代のために積み立てられています。
GPIFはこの年金積立金を、国内外の資本市場で運用して増やしています。
年金積立金の運用収益や元本は概ね100年の年金の財政計画のなかで、将来世代の年金給付を補うために使われます。
年金財源全体のうち、積立金からまかなわれるのは約1割です。
GPIFの2023年6月末の運用資産額は219兆円。他の国の公的年金などを扱う大きな基金と比べると断トツの規模となっており、そのためGPIFは「世界最大の公的運用機関」「世界最大級の機関投資家」などと呼ばれていることから通称「クジラ」とも呼ばれています。
[公的年金等基金の運用資産額の比較]
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)……………219兆円(2023年6月末)
CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金) …… 60兆円(2022年6月末)
CPPIB(カナダ年金制度投資委員会)……………………57兆円(2022年12月
末)
GPF-G(ノルウェー政府年金基金-グローバル)…… 204兆円(2023年6月末)
◆GPIFは金融業界の【クジラ】
金融業界の「クジラ」とは、特定の資産を大量に保有している人物や団体のことを指します。
実際の海でもクジラが泳ぎ、暴れると、大きな波が立って荒れることがありますよね?
金融業界でも、たくさんの資産を保有している「クジラ」が大きく動けば市場の流れを大きく変えることもあります。
日本の金融市場には5頭の代表的な「クジラ」がいるといわれています。
それは、日本銀行、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、共済年金(国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私学共済年金)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の5つです。
この中でも、特に日銀以外の4頭のクジラたちは、豊富な資金量を活用して国内外の債券市場、株式市場、外国為替市場などを泳ぎます。
◆GPIFが相場に与える影響
GPIFは190兆円を超える資産を運用しているため、その運用方針や運用割合に変更が生じると、それだけで対象市場の相場状況に大きな影響を与える可能性があります。
GPIFの基本方針としては、各対象市場の相場状況に影響を与えずに運用方針の変更などを行うことを原則としています。
しかしながら、あまりに巨額の資産を運用しているため、GPIFの意図に反して、結果的にGPIFの運用方針などの変更が対象市場に影響を与えることもあるわけです。
◆GPIFの運用方針
安定的に収益を得ていくために、「長期分散投資」を基本として年金積立金の運用を行っています。
GPIF が運用している年金積立金はおおむね50年程度は取り崩す必要が生じない資金です。
このため、一時的な市場の変動に過度にとらわれる必要はなく、さまざまな資産を長期にわたって持ち続ける「長期運用」によって、安定的な収益を得ることを目指しています。
言い換えれば、「長期投資」と「分散投資」がGPIFの運用方針の根本だということです。
◆GPIFの基本ポートフォリオ(資産構成割合)
公的年金運用では、各資産の期待収益率やリスクなどを考慮したうえで、積立金の基本となる基本ポートフォリオ(資産構成割合)を定めています。
現在のGPIFの基本ポートフォリオ(2020年4月1日から)は、以下のようになっています。
上記のように、国内債券・国内株式・海外債券・海外株式の4資産それぞれに均等に25%ずつ、さらに、債券と株式に分けたときに50%ずつとなるように運用されています。
GPIFが現在のような市場運用を始めたのは2001年度から。
2001年度に市場での運用を始めてからの収益率はプラス3.97%、累積の収益額は127.4兆3,658億円となり、過去最大となりました。
◆GPIFを投資に生かす
冒頭でもお話したように、資産運用ニーズの高まりからiDeCo、積立NISAなどの長期投資を始める人が近年増えています。
投資の基本である、「長期・分散・積立」この3つのルールについては以前にお話しましたが、このルールを守って運用しているGPIFの運用成果は成功例の一つです。
まだ投資に抵抗がある方、始めてみたけど配分をどうしたりいかわからない・・と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
そんなときに、GPIFのポートフォリオを参考にして自身の分散比率を決めることで、長期視点で安定的なポートフォリオを構築することができます。
ただGPIFのポートフォリオを真似るだけで、資産運用の“プロ”が考えたポートフォリオでの長期投資が可能になるのです。
また、何年にもわたる長期投資を行うには、定期的に資産構成の見直し(リバランス)をすることが必要です。
当然GPIFもリバランスを行っていますので、GPIFのポートフォリオを定期的に確認し、リバランスを同様の資産構成とすることで、個人投資家には難しいリバランスも簡単に行うことができます。
あくまで投資運用は自己責任です。が、これからの時代はお金を働かせることが非常に大切になります。
正しい知識を身に着けて賢く資産形成していきましょう。
日本の「クジラ」GPIFをみなさんの資産形成の参考にしてみるといいかもしれませんね!
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