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ヒッピーの2つのタイプとは??


はじめに

2024年の年始からスタートしたビート文学、カウンターカルチャー探究の旅路。

雑誌スペクテイターで過去にヒッピーが特集されていた号といった観察者目線の情報をみてみたり、当事者が当時書かれた本を取り寄せてみたりしていっています。

今回はその中でも、雑誌「スペクテイター〈48号〉パソコンとヒッピー」に書かれていた内容から紹介したいと思います。

ヒッピー2つのタイプ?

まず、そもそものヒッピーの定義について、雑誌の中では『アメリカ俗語辞典』ユージン・E・ランディ原編、堀内克明訳編 一九七五年 研究社の定義が引用されていました。

・主に中産階級出身の白人青年で、年齢は12歳から25歳

・あるものは社会からドロップアウトし、働かず、ドラッグを服用し、ロング・ヘアで、風変わりな服装をし、共同生活を営む。

・彼らの多くは静謐、隠遁、瞑想を強調する東洋の神秘主義的哲学に興味を抱き、攻撃や競争を避けようとする。

・東洋の宗教の啓示に至る近道はドラッグと考えるものもいる。

この定義が紹介された上で、二つのタイプについて紹介されていました。いずれも「スペクテイター〈48号〉パソコンとヒッピー」からの引用です。

アメリカにおける2つのタイプ

(1)テクノロジー否定 = 「BACK TO THE LAND」型

科学の発展を、いつわりとしてしりぞけて、自然に回帰することによってのみしか未来はやってこないとするタイプ。社会運動家 アーネスト・カレンバックの『エコトピア・レポート』(東京創元社/ほんの木)に描かれたような未来像を夢見る。そのエコトピアでは、自動車は消滅し、工業は環境上の生産調整がなされ、男女の関係は平等、日常生活はコミュニティ・グループでおこなわれる。

(2)テクノロジー肯定 = 「技術決定論」型

(1)の反対で、テクノロジーの進歩が不可避的に社会を変えると信じるアナキストで、ジッピー(※)のタイプ。彼らはアーティスト/エンジニアでもあり、マルチメディア・ショーにおける実験映像や、レーザー光線、リキッド・プロジェクションの演出分野でも活躍した。(彼らの一部が、のちにシリコンバレーのハイテク産業やハリウッドの映画産業に関わるようになった。)

※ここでいうジッピーとは能勢伊勢雄さんという方が使い始めた模様。

上記の分け方でいうと(1)に当てはまるのがカウンターカルチャーという波の始まりに位置するビート詩人のうち、日本人にも直接大きく影響を与えたゲーリー・スナイダー(1930年生まれ)が当てはまると思いますが、彼は暮らしという点で今でいうDIYのためのテクノロジーは多々活用されていたと思うので、個人的にはもっと違う分け方があるよなぁと思います。

雑誌の中では北山耕平さん(1949年生まれ)という作家から、ヒッピーの前に商業メディアで使われていたワードであるビート・ジェネレーション「山に向かうタイプ」と「都市にとどまるタイプ」という2つの類型を編集部の方が教わったと書かれていました。

「山に向かうタイプ」は、テクノロジー否定=「BACK TO THE LAND」型と通ずるなと思いましたが、後者はウィリアム・S・バロウズ(1914年生まれ・故人)アレン・ギンズバーグ(1926年生まれ・故人)といった方が当てはまり、ドラッグ・前衛アート・快楽などにこだわって生きるタイプと紹介されており、ここだけで捉えるとると(1)(2)のいずれにも当てはまるように思えないので、これらを含んだ極を見出し、4象限に整理できたら面白いなぁとも思いましたね。

日本における2つのタイプ

同じ文脈で日本における2つのタイプも紹介されていました。

一つは"部族"(※"部族"については小誌45号「特集 日本のヒッピー・ムーブメント」参照)のように、山間や地方の村などに行って、農作業をしながら共同生活をするタイプですね。

→こちらは、ざっくり分類するならば”部族”立ち上げメンバーのうち、長沢哲夫さん(1941年生まれ)山尾三省(1938年生まれ・故人)山田塊也(1937年生まれ・故人)といった方々が当てはまりそうです。

もう一つは、能勢さんの用語を使わせてもらうと”ジッピー”といって、「現代のサイバー・カルチャーにつながる元祖デジタル・ヒッピー」積極的にテクノロジーを認めて実験映像や電子音楽、個人制作アニメーションを作ったりするアート系、もしくはアカデミックな学者や開発者タイプ

一九六〇年代後半の時代、ジッピー・タイプの人間は大変少なかったように想像されますが、日本初のデジタル・アニメーションを作っていた工学者の月尾嘉男氏(現・東京大学名誉教授)、コンピュータ・グラフィックスの嚆矢である幸村真佐男氏などは、わが国では稀な後者タイプと思われますし、能勢さんの一連の活動もジッピーとして認識しています。

※能勢さんという方は、インタビューされていた能勢伊勢雄さん(1947年生まれ)のことを指します。

※ジッピーという言葉について以下の話がありました。

Zen-inspired pagan professionals(禅に触発された職業異教集団)の略称ですね。おそらく九〇年代前半にアメリカから伝わった言葉で、”ZEN(禅)”と”HIPPIE”をくっつけたものです。

まあ、実際にいつも禅の行だけをやりおるわけではないから、「東洋の瞑想を通じてサイケデリックスと現代のテクノロジーが出会って生まれたニュー・ヒッピー」の意味ですね。

こちらの雑誌では紹介されていませんでしたが、ここでいう元祖デジタル・ヒッピー的でいうと、1965年にかけて映画制作のためニューヨークに渡りカウンターカルチャーの風を直接体験していたおおえまさのりさん(1942年)が当てはまりそうに素人目では思えます。

このあたりはジッピーについてインタビュー記事ではもっと色々話が展開しているので、そこを読み込んだり、例として紹介されている月尾嘉男さん(1942年生まれ)、幸村真佐男さん(1943年生まれ)、松本俊夫さん(1932年生まれ・故人)、佐藤重臣さん(1932年生まれ・故人)といった方々の経歴などを調べてみることで解像度を高めたいと思いました。

さいごに

このあたりの相似と相違について理解を深めていくことで、キーワードとして浮かびながらもまだ掴みかねているデジタルエコシステミック(造語)という言葉についても何か理解が深まりそうな予感もしてきて楽しみなのでした。


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