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「説得力がない」に悩むあなたへ【解像度を上げる/馬田隆明】

 仕事をする中で、こんな経験をしたことはないでしょうか。
 議論の見通しが悪いときや、言説の内容が曖昧なとき、論点がはっきりとしないとき、物事を十分に理解できていないと感じた時・・・。カメラのピントがあっていなかったり、視力の悪い人が眼鏡なしであたりを見ようとして、世界がぼやけて見えたりするような感覚、とも表現できるでしょうか。
 しばしばこうした思考の状態のことを「解像度が低い」と言います。逆に、明晰な思考ができている状態のことを「解像度が高い」と表現します。

「はじめに」より

【解像度を上げる/馬田隆明】



4視点と行動法

共通言語を探る

話がわかりやすい人と接した時、そのわかりやすさはどこからくるのだろうと考えることがある。

自分の専門分野外の人や、「明らかにその前段階から共通認識がないよね?」という相手に、専門用語をずらずらと並べ立てて「わからないあなたが悪い」とでも言いたげなマウント屋さんもいる世の中で、相手のレベルや属性に応じて話せる人はそれだけでポイントが高い。
誰だってコミュニケーションは円滑にしていたい。
それならば、相手が理解しているかどうかを探りながら、会話を進めていくのが理想的ではある。が、その、手探りのヒントを持ち得ない場合、相手との共通言語を見つけるまでが、苦労してしまう場面でもある。

そんな時、この本の内容をいくつかでも押さえていれば、悲しい一方通行同士になってしまうような状況を避けられるのではないだろうか?

視座を激しく行き来する

本書の中で一番腑に落ちたのが、会話上手な人、理解度の早い人、状況把握が適切な人に共通している(と私は思う)〝視座を激しく行き来している〟そんな場面だ。

たとえば、まず視座を物凄く低くして泥臭く現場に通い、ユーザーの視座に立って共感し、課題を発見した次の瞬間、その課題が多くの顧客にも共通しているかどうか、大きな市場になりうるかというマクロな視座でチェックして、ビジネスとして大きくなりそうかも考えます。さらに競合の視座から考えて、自社の製品の強みや弱みを検討したら、いくつかのビジネスモデルや経営理論といったレンズを入れ替えながら戦略を立てます。

(中略)

優れた起業家はこのようにマクロの市場の視座とミクロの課題の視座、ユーザーと競合の視座、未来と現実の視座、ビジネスと物理と社会のレンズなど、視座の切り替えを高速で行いながら、自分の仮説の正しさを検証し、もし正しくなさそうであれば別の仮説をつくりあげているのです。

「課題の解像度を上げる」より


「深さ」「広さ」「構造」「時間」という四つの観点から、視座を巧みに変化させながら顧客ニーズに答えられる経営者は、社会をあっと驚かすサービスをものすごい速さで生み出し、提供し、支持を得ている印象だ。

逆に、自分に都合の良い視座からしか物事を判断できない企業は、時代に合わなかったり、顧客が離れたりして、次第に廃れていく。こうしてこの文章を書いている自分ですら、いつその〝廃れる側〟にならないとも限らないのだから、この本で得られたことを自分の仕事に生かしていきたいと思った。


「自分でも理解できていない」を回避

四つの観点から、今自分が伝えようとしていることをミクロ・マクロの両面から分解し、それを相手にどう料理して提供するか?が鍵を握ると思う。
そのためには、「自分ですら理解できていない」を回避しなければならない。

説明上手は例え上手

私がよくインタビューをさせていただく経営者の中に、「例え話」がものすごく上手い人がいる。質問者(私)が理解できていなそうだ、と判断すると、私の視点に立った説明ができるのだ。その方の専門分野について、ある程度下調べをしたり情報収集をしたりして、わかっているつもりで出向いても、専門分野に深く入り込めば入り込むほど、初耳・初見な出来事ももちろん登場する。そんな時、誰にでも理解できそうな事象を持ち出し、「じゃあ、○○に例えて言うと・・・」と言いながら、同じ目線で話を進めてくださるのだ。

例えば、経済に全く疎いけれど得意レシピは山ほど持っている主婦がいたとして、敏腕経営者と話をしたとしよう。敏腕経営者が、自分の経営者仲間に話すような言葉を使ったとて、彼女にはチンプンカンプンになってしまいそうなそんな時。

「じゃあ、この方法を、よく切れる包丁と切れない包丁で料理する場合で考えてみますね」

という一言があったなら。
彼女は、その経営者との距離が一気に縮まり、その後の話も聞いてみようという気持ちになれるのではないだろうか?「わかる/わからない」だけではなく、同じ視点に立った表現かどうかで、興味の深さも変わるはずだ。


旅がここでも・・・!

検索力、大事!!

最後に、私自身が掲げる「旅するように仕事がしたい」というモットーに関わる話題にも惹かれたので、少しだけ触れておこう。

どこにいても世界各地の情報が手に入れられる今の時代。ただ、それを手にすることができるのは、〝検索ワード〟を次々と繰り出せる人の場合、という条件がつく。

「おいしい果物」

という検索の仕方しか知らない人と、

「甘くて瑞々しく、種が少なく皮ごと食べられる果物。」

「標高の高い地域でしか収穫できない希少な品種。」

などの、多彩な検索ワードを知っている人とでは、たどり着ける情報の精度にも大きな差が出ると思う。

そこで有効なのが、〝旅をすること〟だというのだ。

全く知らない世界のことを知るには、今の自分が知らないキーワードが必要なのです。一度検索ワードを手に入れられれば、検索できる範囲はぐっと広がり、芋づる式にキーワードを見つけることができます。
 このキーワードを得るのに最適な手段が、旅をすることです。旅をすると、異なる環境に身を置き、見知らぬ人と話し、見知らぬものと出合うことになります。旅の途中、気になったものは、その場ですぐ検索してみても良いかもしれませんし、体験に集中するためにはその場で検索はせず、メモしておいて、あとで検索してみるのも良いでしょう。遠くへ行けば行くほど、新しいキーワードを手に入れることができます。

「課題の解像度を上げる」より



アイデアは移動距離に比例する

というお気に入りの言葉については、

上記の本の中でも触れた。

ただ、必ずしも遠くへ、飛行機で飛んでいくだけが「旅」ではないとも思っている。何も遠くまで行かずとも、少し意識を変えるだけで、その訓練はできそうだ。

・いつもとは違うルートで通勤してみる
・いつもとは違うスーパーに行ってみる
・使ったことのない調味料を試してみる
・初めてのブランドの服を手にしてみる

など、自分に冒険させることは可能。自分に新たな体験=旅をさせることで、物事の理解度を上げ、話す内容に説得力のある人を目指すことはできるのだ。



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