よくわかる健康診断検査項目の種類別一覧! 実施時期と対象も解説します
企業が健やかな成長をするにあたり、従業員の健康は土台部分です。
その第一歩ともいえる健康診断。職種や年齢によって異なる項目もありますので、どこまでが義務範囲なのかを把握しておきましょう。
法定健診は企業の義務
労働者の安全・健康を守るため、企業は雇入れ時の健康診断と、年に1度の定期健康診断とを実施するように労働安全衛生法にて義務付けされています。
一般健康診断の種類と法定項目
健康診断には5つの種類があり、それぞれ対象となる従業員が異なります。一般の会社員が思いつく「健康診断」は一般健康診断の内の「定期健康診断」が該当するでしょう。
【一般健康診断の種類】
雇入れ時の健康診断…常時使用する従業員が対象
定期健康診断…常時使用する従業員で特定業務従事者以外が対象
特定業務従事者の健康診断…労働衛生対策上、有害とされる業務に従事する従業員が対象
海外派遣労働者の健康診断…海外に半年以上滞在する従業員が対象
給食従業員の検便…給食業務の従業員が対象
雇入れ時の健康診断項目一覧
雇入れ時の健康診断とは、企業が従業員を雇用する際に実施する健康診断です。
<検査項目一覧>
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状や他覚症状の有無
③ 身長・体重・腹囲・視力・聴力
④ 胸部エックス線
⑤ 血圧
⑥ 貧血
⑦ 肝機能
⑧ 血中脂質
⑨ 血糖
⑩ 尿
⑪ 心電図
この全ての項目において省略することなく受けることが必要です。
対象
雇入れ時の健康診断は、正社員採用の従業員だけが対象ではありません。該当としては
雇用期間の定めのない人
雇用期間の定めがあり、契約期間が1年以上の人、あるいは契約更新により1年以上引き続き使用される人
1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上の者
となっていますので、アルバイトやパートも含むことを押さえておきましょう。
雇入れ時の健康診断で企業が気をつけること
雇入れ時の健康診断の目的は、定期健康診断と同じく労働者の健康状態を把握することです。健康診断で何らかの措置が必要と診断が下った場合、医師または保健師による指導に努めることを企業は求められます。
業務内容の適性により、採用時に健康診断を実施する場合もありますが、厚生労働省は「合理的必要性のない採用選考時の健康診断は就職差別につながるおそれがある」と明記しています。(参考;厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「公正な採用選考を目指して | 採用選考時に配慮すべき事項」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html)
雇入れ時の健康診断は、採用選考のためでなく、従業員の健康状態を把握し健全に労働を進めてもらうための指針であることを改めて認識しておきましょう。
定期健康診断項目一覧
常時使用する従業員に対して、1年に1度必ず定期健康診断を行うことが義務付けられています。
正社員だけではなく所定労働時間を満たすパート・アルバイト従業員も対象です。
定期健康診断の項目は、先述の雇入れ時の健康診断で行われる項目と基本的に同じですが胸部X線検査において、喀痰検査が追加となります。
また、雇入れ時の健康診断と違い、医師の判断により一部、項目の省略が可能です。
<検査項目一覧>
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状や他覚症状の有無
③ 身長・体重・腹囲・視力・聴力
④ 胸部エックス線および喀痰検査
⑤ 血圧
⑥ 貧血
⑦ 肝機能
⑧ 血中脂質
⑨ 血糖
⑩ 尿
⑪ 心電図
健康診断項目の省略は医師の判断が決め手
健康診断の項目は、医師の判断により省略が可能です。しばしば「年齢により省略が可能」と認識されることがありますが「医師が総合的に判断した場合のみ省力が可能」というのが正しい認識です。
厚生労働省が発行している安全衛生関係のリーフレットでは、健康診断の項目省略について「年齢等により機械的に決定されるものではない」と明記がされています。
(厚生労働省:「健康診断を実施しましょう」https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/130422-01.pdf)
40歳以上で項目が異なる理由
医師が項目の省略に問題がないと判断した場合、35歳時を除いて40歳までは腹囲、胸部X線検査、貧血、肝機能、血中脂質、血糖検査、心電図の省略が可能です。(身長は20以上であれば測定省略が可能)。
40歳以上になると、全ての項目において検査が必要となりますが、その理由はやはり病気の発症リスクが加齢とともに増加するためです。
厚生労働省によると、40代と生活習慣病について以下のような表記があります。
引用:
「 40歳以上において、高血圧、糖尿病、脂質異常症の指摘・疑いがある者の割合は、年齢とともに増加傾向。そのうち、治療・服薬ありの割合も、概ね年齢とともに増加傾向にあり、特に40代では治療・服薬なしの割合が多い。」
厚生労働省「年代別・世代別の課題(その2)」H31.4.24
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000528279.pdf.
治療・服薬なしの割合が多い」のは生活習慣病にまつわる診断を受けていない可能性があります。定期健診で病気の発生リスクを抑制することで、医療費の削減にも繋がっていくのです。
特定業務従事者の健康診断
深夜業等の特定業務(労働安全衛生規則第13条第1項第3号)に従事する労働者が受ける健康診断です。6か月以内ごとに1度と配置換えの際に、定期健康診断と同じ項目の検査を行う必要があります。
ただし、6項目において、医師の判断により年2回のうち1度は省略が可能とされています。
以下検査項目一覧で☆印が付いているものが省略可能な項目ですのでご確認ください。
<検査項目一覧>
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状や他覚症状の有無
③ 身長・体重・腹囲・視力・聴力
④ 胸部エックス線および喀痰検査 ☆
⑤ 血圧
⑥ 貧血 ☆
⑦ 肝機能 ☆
⑧ 血中脂質 ☆
⑨ 血糖 ☆
⑩ 尿
⑪ 心電図 ☆
労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる対象業務の一覧
多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ラジウム放射線、X線その他有害な放射線にさらされる業務
土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
異常気圧下における業務
削岩機、びょう打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
重量物の取扱い等重激な業務
ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
坑内における業務
深夜業を含む業務
水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これに準ずる有害物を取り扱う業務
鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務
病原体によって汚染のおそれが著しい業務
その他厚生労働大臣が定める業務
海外派遣労働者の健康診断
海外に6か月以上派遣される労働者に対し、駐在、出張に関わらず健康診断を派遣前と帰国後とに受けさせる義務があります。
必須受診は16項目中11項目です。
以下検査項目で☆印のある5項目においては医師が必要と判断した場合にのみ実施がされます。
<検査項目一覧>
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状や他覚症状の有無
③ 身長・体重・腹囲・視力・聴力
④ 胸部エックス線および喀痰検査
⑤ 血圧
⑥ 貧血
⑦ 肝機能
⑧ 血中脂質
⑨ 血糖
⑩ 尿
⑪ 心電図
⑫ 腹部画像検査(胃部エックス線検査、腹部超音波検査) ☆
⑬ 血中尿酸値 ☆
⑭ B型肝炎ウイルス抗体検査 ☆
⑮ 血液型(派遣前に限る) ☆
⑯ 糞便塗抹の検査(帰国時に限る) ☆
給食従業員の検便
企業の食堂または炊事場で給食の業務に従事する労働者は、検便による健康診断を受ける必要があります。
検診の時期は、雇用時、配置換えの際です。
特殊健康診断の検査項目
労働安全衛生法第66条第2項、第3項で有害な業務と位置づけされる内容に常時携わる労働者は、特殊健康診断を受診する必要があります。
以下、それぞれの業務に従事する労働者が受ける項目を、業務別に一覧にしましたのでご確認ください。
<特殊健康診断該当業務>
高気圧業務
放射線業務
特定化学物質を製造もしくは取り扱う業務
石綿業務
鉛業務
四アルキル鉛等業務
有機溶剤業務
粉塵取り扱い業務
高気圧業務の検査項目一覧
① 既往歴及び業務歴の調査
② 関節、腰若しくは下肢の痛み、耳鳴り等の自覚・他覚症状の有無の検査
③ 四肢の運動機能の検査
④ 鼓膜及び聴力の検査
⑤ 血圧測定、尿中の糖及び蛋白の有無
⑥ 肺活量
<二次検査項目>
① 作業条件調査
② 肺換気機能検査
③ 心電図
④ 関節部のエックス線検査
放射線業務の検査項目一覧
① 被ばく歴の有無
② 白血球数及び白血球百分率の検査
③ 赤血球の検査及び血色素量またはヘマトクリット値の検査
④ 白内障
⑤ 皮膚の検査
特定化学物質を製造もしくは取り扱う業務の検査項目一覧
特定化学物質を製造もしくは取り扱う業務の検査項目については、取り扱う化学物質により検査項目が変わります。
当社ホームページより詳細な内容をご確認いただけますのでぜひご活用ください。
特殊健康診断<項目・料金表> (lifesupport-service.com)
石綿業務の検査項目
① 業務歴の調査
② 石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の自覚・他覚症状の既往歴の検査
③ せき、たん、息切れ、胸痛等の自覚・他覚症状の有無の検査
④ 胸部エックス線
<二次検査項目>
① 作業条件の調査
② (胸部エックス線の結果において、異常な陰影がある場合)医師の判断により特殊なエックス線撮影による検査、喀痰の細胞診、又は気管⽀鏡検査
鉛業務の検査項目一覧
① 業務経歴の調査
② 作業条件の調査
③ 鉛による自覚・他覚症状の既往歴の有無の調査並びに既往歴の調査
④ 鉛による自覚・他覚症状と通常認められる症状の有無の検査
⑤ 血液中の鉛の量の検査
⑥ 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査
<医師の判断により必要とされた場合のみ実施の項目>
① 作業条件の調査
② 貧血
③ 赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査
④ 神経内科学的検査
四アルキル鉛等業務の検査項目一覧
① 業務経歴の調査
② 作業条件の調査
③ 四アルキル鉛によるいらいら、不眠、悪夢、食欲不振、嘔吐、不安、記憶障害等の神経障害または精神症状の自覚・他覚症状の既往歴の有無の検査
④ いらいら、不眠、悪夢、食欲不振、嘔吐、不安、記憶障害等の神経障害または精神症状の自覚・他覚症状の有無の検査
⑤ 血液中の鉛の量の検査
⑥ 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査
<医師の判断により必要とされた場合のみ実施の項目>
① 作業条件の調査
② 貧血
③ 赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査
④ 神経内科学的検査
有機溶剤業務の検査項目一覧
有機溶剤業務の検査項目は、取り扱う有機溶剤によって異なります。
当社ホームページより詳細な内容をご確認いただけますのでぜひご活用ください。
特殊健康診断<項目・料金表> (lifesupport-service.com)
粉塵取り扱い業務におけるじん肺健康診断の検査項目一覧
じん肺法において、企業は粉塵取り扱い業務に携わる労働者に対しじん肺健康診断を実施する義務があります。
以下検査項目で☆印のある項目については、エックス線写真において所見を認める場合や、合併症の疑いの有無によって追加実施される検査になります。
さらに、「☆☆」となっている「合併症に関する検査」「 合併症に関する検査(結核以外)」に関しては、「じん肺の所見がある」と診断された場合に実施される検査です。
実施時期は、就業時、定期、離職時、定期外とされています。定期外については独立行政法人 労働者健康安全機構のホームページにて詳しく書かれていますので確認してください。
(独立行政法人 労働者健康安全機構「じん肺:じん肺の健康管理」https://www.research.johas.go.jp/jinpai/13.html#:~:text=(3)%20%E3%81%98%E3%82%93%E8%82%BA%E3%81%AE%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E5%A4%96%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A8%BA%E6%96%AD&text=%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%91%E5%B9%B4%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6%E7%99%82%E9%A4%8A%E3%81%97%E3%81%9F,%E3%81%9F%E3%81%A8%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%80%82)
<検査項目一覧>
① 粉じん作業についての職歴調査
② エックス線写真
③ 胸部に関する臨床検査☆
④ 肺機能検査☆
⑤ 動脈血ガスを分析する検査☆
⑥ 合併症に関する検査☆☆
⑦ 合併症に関する検査(結核以外)☆☆
健康診断の項目は自己判断で省略せずに医師の判断を!
健康管理は個人だけの問題ではありません。従業員の健康があってこその健康経営、業績向上です。健康診断の項目は「省略ありき」ではないことを認識して適切な健康診断を設けるようにしてください。
また、健康診断後の措置も大切です。何かしらの措置が必要な従業員には積極的に再検査を促し、産業医との面談等も執り行いましょう。
弊社ライフサポートサービス株式会社では、企業様の法定検診・特殊検診についてのご依頼・ご相談をお受けいたしております。
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