鳥の寿命 2024年9月号(芒川良100首+短歌6首)
𓅔
🦆芒川良🦆
凛
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微睡へ
矢継ぎ早に視界をハックするほどに抽象画はどこまでも冷ややか
*
血管に沿って頭が痛むのは共感の種だった 必然
眩しくて目を背けたいあなたは喉を次々に音へと置き換えて
何歳まで夢の話をしていたい? 機能性に優れたエンパシー
裂傷の描写はいつもそのあたり・波打つ生体の消失点
直感というのは嘘で香水で右手首にするのが癖だから
耳打ちで花の言語をおしえてよ 「愛してる」は水から派生する?
わるくない 折衷案はどうしても一矢報いた気持ちになって
矛盾まみれのわたしのことを筆致においてわたしは統べる
性的な含みを持った言い方で痛みはただひとりの所有物
唇にまだらな色彩を暈してつまらない話は当てになる
送電塔から送電塔へ渡るように微睡へことごとく欺いて
*
花畑に自我を保っていられたら溺れていたとしてもいいかもね
点滴の姿勢でくりかえす無声映画のワンテイク どうしたい
暗所での記憶は妙に鮮明に迷惑はできるだけ被れ
火事のまるで甘美な様をいまに見よ、温度も伝わないまどろみで
それはそれとしてナイフの本来の用途は打撃 告げ口をせよ
紙袋は胸の辺りで裂けていて、だとしたらどうする 銀や金
夢のなかで行う手筈が想像の限界ならどちらが非現実?
苦しみのありえない視界のなかで教唆するあらゆる妥当性
手話であなたを騙したら水のなか再びそれも深くへ 沈む
類推を侮ったばかりに眠るそばには沢山の活火山
*
意思の水面はひかりつつ痺れた腕のわたしは孤独には戻れない
Breathe in a puddle 鏡をみていてもどちらが表かは知らないな
目が醒めてはじめにみる時計の針は少しずらしてあり目が醒める
濡れているグラスを文字に起こすとき身体はどうであれかまわない
意識して 意識した途端に胸が苦しくなる呼吸を繰り返す
手のひらでどれだけ配慮すればいい 優しさの致死量はごく僅か
しずかであればあるほど不安になる遠い血流に備わる肉体美
夢のわたしがわたしを模倣するように時としてめまいは熱も経て
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inazuma no.
稲妻の-ウォーターサーバーの返却に遅いとかないでしょう-下手な絵
星座は誰にでも姿をみせて寂しいんだろうね 音が後
花影へあなたが憧れたという当然に血も当然もえて
かみなりの警報が出て僕はそれを物語的手法で望む
色によわい僕にとっての黒い火がそれとしてただしく落とす影
性的に満たされたなら理や詩語や金縛りに飢えるに違いない
あなたのなかを光ったとして頭痛は雷に似るだろうか どうか
解熱を促す薬の放るありきたりな光のほうをありがたく見る
稲光をとりこんだ俳句を読んでひかるのは一度でいいのです
月と面/愛はおろかな嗜好への退廃とその都度いたる意趣
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綜合
一五歳の女の子がヒットソングをかいたこと 等間隔の傷
せつなくなってきてる/綜合病院の字をどこで見たのか覚えてる
蕩けると漢字で書けば唐突にエロい冬 チーズのエロい冬
乙女の祈り 視界の端の列車のどうも窮屈に伺うメロディは
幻想的な運指でショパンそのものを模倣する・あなたは誰を見る
何も知らないって把握してほしい 裏切りは事前にわかるもの
*
降雪をまねて静かなくちづけに鹿を想像するなら雄を
うつ伏せで眠るあなたの苦しさにそのまま僕に似ていてほしい
つまらない動画を見てる つまらない つまらないと思えるから見てる
いみを*すぐ*うたって*そばに*蜜蜂の*くるしい*いない*ゆきを*さがした
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Sekai.
内省の内省をしてそのあいだ僕のなかのあなたは暇だった
水彩の外へ記憶は混じりあい蜜蜂を何度も詩に書いて
あなたが笑う不格好な仕草にいつも拒まれていたのだ sekai-teki.
こときれた画帖を伝う墨滴を文学の血液として見る
喉から声を吐けば心臓は震えてそのようにあなたを描いている
コンタクトをつけたまま寝て割れそうな世界に沿って割れていく脳
僕にとってあなたは夜でその夜がひとりでに呼吸をやめるまで
そのきらいが僕にもあって理解した… 炎の色を説明できる?
関心がレイシストの視力にあったあなたが僕の視力を統べて
*
ため息に詩も誘われたときすでにあなたには世界が満ちたりた
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凛
コーヒーにいれたミルクを取り戻すことはできない やれやれ 星だ
力のない自分の指を拒むとき等しく使い果たされる詩篇
語彙の果てへ自ずと芽吹く映画館のこれから消灯される気持ちは
再び 合わせ鏡の奥行きをそのままに遅れる目の仕草
音漏れがどちらから起きているのかをはなした それは前戯のように
憂鬱の多寡はしずかに関係のないことで何度も謗られて
殆ど あまい言葉は目に見えて短い寿命をあまいまま いる
窓の方を何か伝っていい歌は僕では光らない この感じ
微熱にはすべからく夏のイメージ ウケんね 嫌いな人は悪人
夢の車内に夢の匂いは滞り形のない雪はすべて恋
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朗報 夢のなかで作った短歌をメモしていた!
↓この歌、本当に何?
相手方の飛行機はすでにローンチだったんだ 浅はかだったんだ
音をもう聴く必要がない 利権 そういう話なら面倒だ
寝転んだ姿勢で(それは便宜上楽な姿勢をそう記載する)
🦆
2024/9/8.
(BUMP OF CHICKENのライブで、ガラスのブルースが演奏された。わたしもあなたも泣いていた。)
星の前後 それぞれの痛みをよそに言葉はわたしだけに注いだ
ミュージックビデオから出てきたんじゃなく取り込まれた感覚だった ray
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ずっと声が変わらないって思うのは祈りだよ ほら 涼しくなるよ
銀テープが天の川みたいなわずか数秒が何年降り積もる
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夏の虫のクリシェがどうも今だけはほとんど奇跡みたいに降った
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頭上を星が
頭上を星が巡っている痛みの描写 実際におもえば気持ちいい
待ち合わせのきみをみていて待ち合わせのきみはみられていたことになる
不安定で楽な言葉を何度でもきみは期限のみじかい夜に
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不義理
手癖ばかりの匂いの動き すみません寝坊で三十分おくれます
呼吸のかたちに満たされていくのがわかる倫理学どこまでおもしろい
さめるまでの身体はいつも脈のままあなたへ至る幾度の夢精
When the sun goes down/killing my love/目のあたりがどのような異質と出会っても
音まみれの中を一人で歩くとき衝動は蔓延して見えた
それは躑躅 きみの喉を何かがいまに満たしそうで詩情は加速する
怒り心頭ってことば/いあいいんおう/東日本で韻が踏めるな
表情はあえて変えずにどうしても据わるのは喉からな気がして
レイ・ペンバー 読む人が読むから僕の傑作は駄作に成り下がる
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口癖
涼宮ハルヒの(言葉にすれば僕のほうが悪者になるだろう)消失
寝言はたまにあなたの口癖を借りてずるいね 春にうまれていいよ
持て余された熱が硝子に落下する・・・なによこのエッチな南風
詰問と菊紋を聞き間違えてどちらにも憧れてしまうの
喉の内側に痺れが残るよりブルベは銀の指輪が決め手
白い像の煤けてみえるよる檻にあらゆる感情を閉じこめて
距離がなくて眩暈がするでしょう夏の夏の夏の夏の送り仮名
季節について何度も忘れたことがある・あなたを・詩語を・倫理を・星を
嫌いだってずっと言い続けてほしい雪では意味がない因果律
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h t t p s : / / x . c o m 手遅れだ
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🥚
🦜Øz🦜
風の正体
星を食べ鳥たちはみな白い花 誓わなければならなかったの
騒音は白い大蛇と交差して私の上を通り抜けてく
たんぽぽの綿毛風にのってゆく ほらほらちゃんとこっちをむいて
結晶の開花を予感する夜に並べられている呼吸音
モビールが心みたいにうごいてるペガサスは星を追いかけて
目を閉じて星の粒子を手に受けてえいえんにであうことができるよ