オクラは花の香り
オクラに花のような香りがある。
気づいたのは、昨日の昼食につくった味噌汁だった。親子丼に合わせる、オクラと豆腐のお味噌汁。
いつもなら、小口切りにするところを、船のように浮かべたくて、縦切りにしてみた。豆腐は小さめの角切り。味噌は、最近買った三田の黒大豆の味噌。大豆の粒が残っている田舎味噌で、ふつうに溶いただけでは、完全に溶けきらないから、汁自体はあっさりしている。
オクラを口に入れて、噛んだ瞬間、ふっと香気が鼻に抜ける。気のせいかと思うくらいの微かなものだけれど、味噌にも、豆腐にもないものだから、確かにオクラ由来のものだ。もう一度噛む。やはりそうだ。ざっくり言えば、青い香りとも言えるのだけど、その中に、なんというか、可憐な香りが混じっている。小さな白いバラの香りのような。恋人に「オクラに香りがあるね」と言うと、最初は困惑していたが、もう一度食べてもらって「白い花の香り」と言うと、確かにそんな気もする、と。
あとで調べてみても、オクラに花の香りがあるなんて、どこにも書いていない。ひとつだけ、日本植物生理学会のQ&Aページにオクラの香りについての回答が乗っていた(全然違う香りを感じた子どもがいたらしい。笑)。その中に、オクラにも揮発性成分が含まれていること、その中にはテルペン化合物という、アロマオイルとして使われることの多い成分も多種含まれているということはわかった。スマイル阪神で買ったオクラが新鮮で、かつ、縦に切って断面が大きくなったことで、その微かな香りを捕まえることができたのかもしれない。
これからオクラを食べるたびに、花の香りを探すだろう。こうやって、またひとつ食べる楽しみが増えていく。