「名もなき生涯 」テレンス・マリック監督を見た
〜あらすじ〜
ナチス・ドイツに支配されたオーストリアの山あいの村で、農民のフランツ(アウグスト・ディール)は、妻のファニ(ヴァレリー・パフナー)と娘たちと一緒に暮らしていた。あるとき召集されたフランツは、ヒトラーへの服従を拒絶し収監されてしまう。ファニはフランツを手紙で励ますが、彼女に対する風当たりも強くなる。
約3時間に及ぶ作品。
でも目を離せるシーンはなかった。
やっぱりテレンス・マリック監督は凄い。
妥協のない画。
圧倒的な映像美。
そして映る俳優女優の生々しさ。
ドキュメンタリーのように見えるが
出演者は決して農民ではない。
生命の息吹を感じる。
監督の脳みその中をのぞいてみたい。
自然に囲まれた土地で
フランツの動物のように純粋な信念と
ファニとの一途な愛に対比する
人間の惨さ、全体主義の恐ろしさが
際立つこの作品。
驚いたのは出演者の叡智の高さ。
映画を観た後に
YouTubeで主演の2人が
インタビューされている動画を見た。
その話す内容に驚いた。
この作品に必要な準備がされていた。
ファニを演じたヴァレリー・パフナーが
「監督は本物の瞬間を求めているわ。
何かをしようとしては絶対にいけないの。
その瞬間を生き抜かなきゃいけない。」
「創造性の流れを止めないことがとても重要。
流れに身を任せなるべく操作しないこと」
この言葉には驚いた。
レンの活動するPAMの稽古でも
高慢ちき御隠居が
「もっと瞬間を大切に演じられないものか」
とよくいう。
過去や未来、自分自身の不安から離れ
瞬間に生きることだけとを大切に
作品を創っている。
けれど日本では
こんな演技指導あまりなかった。
だから同じようなことを言う
監督がいることに驚いた。
そして当たり前のように話し
演じるヴァレリー・パフナーを
凄いと思った。
フランツを演じたアウグスト・ディーは
「戦争が人を殺すことを明言している。
そして立ち向かう人がほぼいなかったことが問題だ。そして現代でもこの構造は残っている。昔よりも見えづらくなっているけどね」
と語っていた。
これくらい当たり前の問題が
今の日本社会では薄れている気がする。
当たり前のことを考え
持ち込むことできる俳優。
それだけで凄いしカッコいい。
今の時代は当たり前のことも
蔑ろにされてゆく。
危機感もなく。
明日は我が身。
これから生きる子供達の
希望となれるように
信念を持って
見栄を張って生きようと思う。
とても素敵な映画です。
良ければ皆さんも観てみてね。