「対談集 あなたが子どもだったころ」(中公文庫) は、臨床心理学、ユング心理学の第一人者の河合隼雄さんが、各界の著名人16人との対談をまとめた本です。河合隼雄さんを含め多くの人がすでに亡くなっていますが、対談の内容は驚くほど赤裸々で生き生きとしています。
冒頭の言葉は、高名な哲学者で大衆文化にも通じ政治運動家としても活躍した鶴見俊輔さんが語ったものです。この河合隼雄さんと鶴見俊輔との対談については、この本のあとがきで、作家の小川洋子さんが見事な解説をしています。引用します。
鶴見俊輔さんのお母さんは、外務大臣、東京市長などを務め関東大震災後の首都復興に尽力した後藤新平翁の娘です。鶴見俊輔さんのお姉さんは、上智大学名誉教授(比較社会学、国際関係論)でエッセイストととしても知られる鶴見和子さんです。
河合隼雄さんの聞き出す力によって、著名人たちは改めて「自分の物語」を見い出していきます。河合隼雄さんは「自分の物語」の大切さを言い続けましたが、その意味を見事に示した対談集です。
この対談集からは、これからも随時「心にしみた言葉」を紹介していきます。