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自分の世界の大きさを、彩りを、自分で定めない

自宅に戻らず、旅先から旅先へと旅を続けること、民泊施設に滞在すること。

旅に関することで「絶対にしない」と思っていたのがこのふたつだった。旅をするなら「絶対に」ホテルに泊まりたいと思っていた。見知らぬだれかと生活領域を共にすることは、受け入れがたいことだった。

どうやら今年は、そういう”頑ななもの”を変容させていく年らしい。

変容というか、「あれ、こんなもん!?」「意外といけるじゃん」という感じ。なんだかめちゃくちゃ重そうな石だな、と思っていたら軽石だった、みたいな。まるで拍子抜けだ。

おそらく「絶対にムリ!!!」の「絶対」は、絶対に、「絶対」じゃないんだと思う。

今までの生き方を前提にして、勝手にシャッターを下ろして、自分で自分の世界の大きさや彩りを定めてしまっていたかつての私よ。

2023年の夏、私はアドレスホッパーライフを満喫しているわよ。

定住せず、土地を転々と移動しながら生活するスタイルを意味する「アドレスホッパー」。この言葉の存在さえ、私はつい最近まで知らなかったのだけれど。

初めて牛すじ入りの味噌おでんを食した名古屋。うまー。

今年の5月に開催された「文学フリマ」で、はるさんという方に出会った。鮮やかなブルーの背景に、可愛らしい女の子のイラストが描かれたZINEに足を止めた。この時、その書籍について説明してくれたのがはるさんであり、『おかげさまで旅暮らし』の著者でもあった。

本書には、先述の「ADDress」という住まいのサブスクサービスを1年以上利用し続けた日々が綴られている。

でも、目の前のはるさんは、声のトーンや見た目も柔らかく、長い期間旅を続けるようなタフさとどうにも結びつかない。自分のベッドで寝られない期間が続くなんて考えられなかったその時の私は、彼女が話してくれた「ADDress」のことや、旅と生活が重なり合う日々のことを、余計知りたくなった。

自分の中のゆずれないはずの価値観を一変させてくれるのは、自分以外の予想もしていない誰かなのかもしれない。そして旅暮らしは、ひょっとするとそんな出会いに満ちているのではないか、とも思えた。

だとしたら、始めるしかなかった。かつての頑なな考えを潔く手放せたこともびっくりだけれど、新しい生活は、やっぱりゆたかだ。見るものも感じかたも。

気まぐれに、旅のエッセイもnoteに残しておこう。行ってみたかった島根にも、もうすぐ行ける。

エッセイストとして活動することが夢です。自分の作品を自費出版する際の費用に使わせていただきます。