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都市伝説ではなく実在する地下病院
ストックホルム県の県立病院の一つに南総合病院というものがある。
第二次大戦中の1944年に創立され、当時、北欧では最大規模を誇っていた同病院はSödermalm島の南に位置する(ストックホルムの中心地は主に島から成っている)。
実は、スウェーデン人にでさえあまり知られてはいないのであるが、この病院の地下には、戦争被害がスウェーデンにまで及んだ場合を想定して築かれた、非常時用の地下病院がある。
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私には最初、その病院が、果たしてどのようなものか皆目、見当もつかなかった。ゆえに沖縄の旧海軍司令部壕(海軍壕公園)のような、厳粛で重苦しい空間をしばらく勝手に想像していた。
しかし、ある日、私の想像を全く覆す資料(サイト)を最近見つけた。この地下病院の全容を詳細に解説してある。掲載してある写真の数も多く圧巻である。
http://glomdhistoria.se/project/det-underjordiska-sjukhuset/
Det underjordiska sjukhusetで検索して頂ければ他にも数サイトが見つかるが、あいにく動画のものは非公開になっていた。
このサイトの解説を、以下、日本語で簡略させていただきたい。
南総合病院にある、何の変哲もない火災避難扉の一つを開けると、まったく想像もしていない世界が開かれる。
扉の裏側には地下に続く階段が延びており、この階段は分厚い鉄の扉に保護された地下病院へと導いている。
この地下病院は、地上にある南総合病院を築くために岩盤を爆破した時に同時に開設されたものであり、延べ面積はおよそ4,700平方キロメートルである。
地下病院が開設された当時には核兵器等の脅威は無かったため、現在ほどの頑強さは無かった。
終戦後、地下病院における医療活動は休止となり、この空間は、主に南総合病院の倉庫として利用されてきた。そのため、施設の状態は悪化する一方であり、院内の湿気も凄まじいものになっていた。
戦争時に築かれたこの地下病院は、1994年に、大規模な改築の後、災害時の救急病院として生まれ変わっている。
改築後の地下病院は救急病院として十分な基準を備えて持っている。すなわち、ここでは緊急部門、手術部門、述後看護部門等が充実しているということである。
今日、この病院は、戦争時には160人の患者、平和な時には270人の患者を収容することが出来ると言われている。さらに、この空間は避難所としては3200人を収容することが認可されている。
それでは電力と水はどうなっているのであろう。
このような設備の例に漏れず、地下病院には、電力は自家発電、水は自家給水のシステムが導入されている。
災害時には、病院の外の状況が変化する可能性もあるため、何らかの要因で外側からのエネルギー源が遮断されてしまった場合、予備のエネルギーを生成するエンジンと発生器が起動する。
このような予備エネルギーシステムは軍事施設においては極めて一般的である。
病院において電力が遮断された場合、患者の治療が不可能となり、悲惨な結果を招いてしまう可能性がある。すなわち、換気機能も停止し、過剰圧力が減少し、毒性ガスが立ち込める危険が上昇する。
また、ここは大勢の人間が生活する空間であるため、大量の水は不可欠となる。
かりに外からの水源が絶たれたらどうするのか。
「深い井戸」がその解答である。
現在は、パンデミックによる病床の増加が叫ばれている時期であり、当然のごとく地下病院の存在に世間の視線が向けられた。
それに対して南総合病院は、現段階においては地下病院を稼働させる予定はないと言う。病床の数を増やしても、それに見合うだけの医療従事者も必要となるから、という理由であると理解している。
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仕事が繁忙期でない時に、日本のテレビ番組の海外ロケのコーディネートのお手伝いをさせていただくことがある。その際に、見学希望をいただく社会福祉関係の施設は、主に病院、学校等である。
今後、この地下病院の見学も取り入れられたら非常に興味深いものになるのではないだろうか。果たして、地震大国日本において応用の出来るものがないかと考える。
地下病院という発想自体は素晴らしいものかもしれない。
しかし、この病院を緊急に稼働させなければいけなくなるような事態は勃発して欲しくないものである。
ご訪問有難うございました。
サムネイルの写真はPixabayのRyanMcGuire氏からお借りしました。