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2024年、5月6月の観ておきたい作品ズ

コンテンツを選ぶ時の基準について考える。

映画にしろ音楽にしろ服にしろ、新しいものとの出会いは常に自己を再確認することに繋がっていると思う。
私たちの生活は、それぞれに形があって大きさの範囲がある。そしてコンテンツにも同様にそれがある。「需要と供給」、「ニーズとシーズ」なんかで表現されるものの、もっと本質的な感覚の話に近い。
これらがベン図の中で重なった時、服でいえばしっくりくる感じがして、映画でいえば私の映画だ、という感覚に包まれるものとすれば、ここで重要なことは、自分自身の生活が持つ輪郭は実はそこまで正確には掴めない、ということにあると思う。
日々コンテンツを享受する中で、そのコンテンツが持つ輪郭に、自身の生活の端が触れることで、そこにも輪郭の一部があったことに気づくことが、まさに自己の再認識なんだろう。的な。

ここまで小難しいことを言ってきたが、そもそもの話題に戻ると私たちは享受するコンテンツを選ぶ時、コンテンツが持つこの輪郭について意識してみる必要がある気がしている。
多くの商業作品がマスに向けられ、多くの利益のため輪郭を丸く大きく押し広げられ展開している世の中では、否応なしにマーケティングの力が私たちを狙ってくる。
それ自体は悪いことばかりではないが、どこにいても触れられるくらいに大きすぎるコンテンツの輪郭に慣れると、果たして自分の生活の形は丸いのか四角いのか、どのくらいのサイズなのかが全くわからなくなってしまう。狙い撃ちされ続けることも結局行き着く先は同じだろう。
(常にキラキラした日々や人々の中にいるイメージなのに、実際に会うとどこか奥行きがなく特別感のない人というのはこうして出来上がるのかもしれないと邪推したりもする。)

そういう意味では、選びたいコンテンツというのは、なるべくサイズが点に近く、所在に意外性があり、形も歪そうな・尖っていそうなものがよさそうということになる。

自分の生活ベースでコンテンツを選んでいくという、いわば当たり前の行動が意識的に求められるとも言える。

古着屋店員をしていて、服の組み合わせ次第でベストな人と意外に合わない人がいたり、ベーシックなアイテムが時に何故かオリジナルな空気を出すのは、まさに一人一人の生活のバリエーションと、点に近く独自の形を持つ古着というコンテンツの組み合わせの妙なのかもしれない。
私がノーラン作品に全く心動かないのもきっとそうだ。そうに違いない。そうであってほしい。一切のセンスが枯れている訳ではなくあってほしい。

とにもかくにも引き続き店員と話せる服屋に行き、チャートを見ずに音楽を選び、自然に触れたりするところから生活を大切にしたいし、映画についてはここで見つけたもので何か気づきがあれば嬉しい。
それは自分に対しても、わざわざ気にし続けてくれる皆様にとっても。
それっぽくある必要って、実はどこにも全くない。


✔︎3月、4月のBest3

1,DUNE PART2 / ドゥニ・ヴィルヌーブ
2,異人たち / アンドリュー・ヘイ
3,悪は存在しない / 濱口竜介

すごく迷ったのは「パストライブス 再会」(セリーヌ・ソング)。劇場に3度観に行くほどには刺さってしまった。「異人たち」にしろ昨年度の「aftersun」(シャーロット・ウェルズ)同様、特定の体験を持つ人々に取ってBibleとなってしまう力を秘めている作品だと思う。

その他でいくと、「プリシラ」は素敵でした。「オッペンハイマー」についてはノーランの良き視聴者には今回もなれず。ただ、威力は十分に食らった。


✔︎「絶対に観にいく」2作品

月に一回、映画館に行く生活がしたい人向け

・マッドマックス フュリオサ 5/31 公開

もうすでに各所で話題になっており、映画好きな人ならほとんどが認識しているだろうが、5月はこの1本への期待値が頭一つ抜けている。
前作「マッドマックス 怒りのデスロード」の登場人物「フュリオサ」についての物語であるため、前作未視聴の場合はまずはそれを観てからが良い。
アクション・映像・展開・設定どれを取っても一級品であった前作に引き続き、今作にも同様の期待が高まる。

主演を演じるのは、最盛期を向けているアニャテイラージョイ。DUNEにも出てきており、今年はひっそり彼女の年になってもおかしくない。
本作の魅力はなんといってもその迫力にあるのでIMAXでの視聴を推奨したいが、根強いファンダムがそこかしこにいることから、空いているところでラフに観たい人は通常スクリーンもいいかもしれない。

・チャレンジャーズ 6/7 公開

スパイダーマンシリーズや、DUNEの「チャニ」でも知られるゼンデイヤ主演のテニス映画。監督は「君の名前で僕を呼んで」や「ボーンズアンドオール」で知られるルカ・グアダニーノ。同監督は、前作の際にも紹介した通り、今世紀のもっとも重要な映画監督の1人だと感じていたが、あのカニバリズム作品から、今作のテイストを続けて出してくる振れ幅の広さにあらためて驚いてしまう。
先に公開されているサントラが本当に最高で、このテンポ感のグアダニーノってどうなってしまうんだ???とわくわくが止まらなくなってくる。
ゼンデイヤが好きだから、で観るもよし。面白いものが観たいから、で行くもよし。視聴済みの人達の話を聞く範囲でも、今期もっとも期待したいエンタメ作品の一つといって良さそう。
やっぱり3人組のストーリーが1番面白い。


✔︎おそらく観にいく、期待の作品リスト
月2〜4(年間で24〜50本)の新作を映画館で観たい人におすすめ。

・関心領域 5/24 公開 👀

こちらもすでに認識している映画ファンがほとんどかつ、この手の映画を人に勧めるのは気が引けるが、やはり作品の持つ強度の面から推さずにはいられない。
アウシュヴィッツ強制収容所のすぐ隣に家を構え、生活していた所長家族の生活についてを、異常なカメラワークで投影する。
観る人によっては、不安さ・不穏さに耐えられなくなってもおかしくないよなと思う。
アカデミー賞二冠作品でもあり、必見ではあるが体調は整えたい。

・バティモン5 望まれざるもの 5/24公開 👀👀

フランスの暗部に焦点を当てた一作。
フランス映画といえば、どこか煌びやかで可愛らしく、エンパワメント性の高いものな印象が世の中的には強いと思うが、最近でも「トリとロキタ」などでは直接的に、他作品でも間接的にフランス国内に渦巻いている様々な問題が描かれ、それが浮き彫りになっていることを肌感覚で理解し始めている人は多いのではないだろうか。
そんな部分にガッツリと踏み込んでいくことになる本作。これからもユーロ圏の映画を観続けていくのなら必見の一作だろう。

・ブルー きみは大丈夫 6/14 公開 👀👀👀

1人でも、誰かとでも、もしかすれば家族とでも、とにかくたくさんの人に見てほしい一作。話題になるといいなと本当に思う。
イマジナリーフレンド(子どもの頃にだけ見える空想上の友達)のブルーについての物語。もともと楽しみにしていたが、「屋根裏のロジャー」などイマジナリーフレンド系の作品を立て続けに観ていく中で、このテーマのカバー範囲のおもしろさに気づく。
とはいえ、そんな小難しいことは気にせず、まずはひたすらわくわくして、感動して、楽しみたい。

・ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ 6/21 公開 👀👀👀

本当のことを言えば、この作品が最も推奨したかった6月の一本。それでもチャレンジャーズを推したのは、結局そちらは間口が広く、こちらはある程度腰を据えて観てほしいと思ってしまっているからである。
そしてこちらもまた3人を中心とした物語。
おじさん教員、問題児、子どもを亡くした料理長のそれぞれが孤独をはじめ様々なものを抱える中で、クリスマス休暇の学校で共に暮らし、対話を重ねていく。
きっと大切な映画になる気がしているので必ず観たい。ハートウォーミングな作品と聞いているので、誰に対しても特に心配なくお勧めしたい。

全く関係ないが、本作でアカデミー助演女優賞を獲得した「ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ」は、米国バスケリーグNBAのダラスマーベリックスHCジェイソンキッドのフロースロー時のルーティンを自身の演技に取り入れていることを明かしており、同チームのファンである私個人的には胸熱な背景もある。


✔︎他注目作品(タイトルとティザーのみ)

少し多いです。すみません。
個人的な興味は👀のマークで!

・人間の境界  5/3 公開

・胸騒ぎ  5/10 公開 ※ホラー

・またヴィンセントは襲われる 5/10 公開 ※スリラー 👀

・ボブ・マーリー One Love 5/17 公開

・ありふれた教室  5/17 公開 👀

・好きでも嫌いなあまのじゃく 5/24 公開 👀👀

・ドライブアウェイドールズ 6/7 公開

・異国日記 6/7 公開 👀

・HOW TO BLOW UP 6/14 公開

・フィリップ 6/21 公開 👀

・アンゼルム"傷ついた世界"の芸術家 6/21 公開


おしまい。猿の惑星は怖いよ。雨が降ったらば映画館へ〜

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