時間という「命」を無駄にする奴にチャンスは来ないと怒られた話
20代の頃。宮川一朗太に似ている夫と結婚する前のこと。
(宮川一朗太氏は息の長い俳優です。若い方はご存じないかもしれないので、ぜひ検索を)
その一朗太似の夫に恋人時代、度々怒られたことがありました。
それは、待ち合わせの時間に毎回2、3分遅れていくということです。
10分とか、明らかな遅刻じゃありません。
たったの2、3分です。
なのに、一朗太は「あ、また時間に遅れて~」とプリプリ。
それに対して、
「思いのほか、乗り換えがうまくいかなかったのよ」
とか、
「待ち合わせ場所がわかりづらくて、すんなりたどり着けなかったのよ」
などと言い訳すると、
「いやいや、そういうリスクも想定して30分とか早めに家を出ればいいんだよ」
と、ピシャリ。
そりゃそうだと、ぐうの音も出ません。
確かに一朗太は、待ち合わせの10分前には必ず現地に着いていて、
渋谷ハチ公前だろうが、新宿アルタ前だろうが(待ち合わせ場所が昭和)、スクっと立ちつくして文庫本なんかを読んでるわけです。
2人で温泉旅行に行った時も、チェックアウトの1時間前には身なりが整っていて、公爵のごとく窓辺の椅子にゆったりと腰かけ、優雅に本を読んでいます。
一方の私は、朝食を終えて朝風呂入ってからのひと眠り。「このまどろみがたまらないんだよね~」と言いつつ布団に潜って、ぐでぐでして、チェックアウト30分前になってようやく眉毛でも描き始めかといった感じ……。
「え~!? 時間、たっぷりあったでしょうに。なんでいつもギリギリなのよ」
と、どやされながら、あわてて荷物に下着だとか、洗面台に並んでるアメニティだとか詰め込んで、パンパンのカバンを持って出かけるのは毎度のこと。
「はぁ~ん、なるほどね。キミという生き物の生態系がよくわかったよ」と、苦笑いされるのであります。
で、ある時またやっちまいました。
待ち合わせに3分遅れてしまったのです。
まぁ、いつものことだし、たったのスリーミニッツぐらいいいだろうと、ヘラヘラ待ち合わせ場所に向かったら、
めちゃめちゃ不機嫌な顔で、
「ほんと勘弁してよ! どうしていつも時間に遅れてくるんだよ! たったの2、3分と馬鹿にしてないか?
時間というのは『命』なんだよ。相手を待たせるということは、相手の命を無駄にしているということなんだよ。そんな奴に、チャンスや幸運が訪れるわけがないだろう?」
と、25歳の一朗太は言い放ったのです。
1つ年下の、大学の後輩である彼に、初めてガツンと怒られて、さすがの私もしょんぼり……(先輩の面目ない)。
なんとなく気まずい雰囲気でしたが、
そのあと行った新宿西口の居酒屋「うおや一丁」でラーメンサラダを頼むと、思いのほかビッグサイズで、私がぷっと笑ってしまったら、
「店員さんに失礼やんか! 笑うなや!」と、
言いながらも、本人もヒックヒックと笑いが止まらない様子。
サラダの概念を超えた、ビッグなラーメンサラダのおかげで救われたわけでして。
それからというもの、私は彼との待ち合わせに二度と遅れることはありませんでした。
やっぱり一朗太のやさしい笑顔を壊したくないからね……。
その後、一朗太は28歳でチャンスと幸運をつかみ、アメリカの希望の大学院に無事合格。
親に数百万、借金して私費で留学したのです。
そこで2年間、みっちり学んで、帰国後は人事のスペシャリストとして着々とキャリアを積み、3年で親への借金を返しました。
Time is Money. ならぬ、Time is Life.
そんな一朗太も、40代半ばになり。
今も尚、時間という「命」を無駄にしない生き方を体現し続け、出勤の2時間前には身支度を終えて、優雅に本を読んでおります。
あたしゃ、ぬくぬく布団の中だけどな。
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