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美しき地下音楽史のスナップショットII ー 38年目を迎えるライブイベント「消毒GIG」

超高層ビルが林立する東京の地下のイマをレポートします。私たちにどう生きるかを問う、凄まじいエネルギーに満ちたライブイベントがあります。

新宿アンチノック、カウンターカルチャーの聖地とも言えるライブハウスをホームグラウンドとして活動しているバンド、GAUZE(ガーゼ)。1981年結成の日本最古のハードコアパンク・バンドの一つです。そのGAUZEが結成以来続けている「消毒GIG」という自主企画の第172回目が今日、2/17にあり、チケットを握りしめて行ってきました。

ハードコアパンクとは:
本来のパンク・ロックのロックン・ロール色を排し、より暴力性やアグレッションを抽出し派生したジャンルであり、単にハードコアと呼ばれることも多い(「Wikipedia」より)。
元々はイギリスとアメリカ発祥ですが、オリジナリティと高いクオリティを誇る日本のハードコアパンクバンドは国外で人気があり、ライブ会場でも多くの海外の方を見かけます。
私の以下のnoteでも少し紹介をしております。本記事はCOMEMO PICKに選んでいただきました。

メディアで扱われることもなく、情報量も少ないため知る人が少ない音楽で、消毒GIGに代表されるハードコアパンクのライブは、1980年代のライブハウスの張り詰めた雰囲気を、今なお色濃く残しています。消毒GIGのライブチケットはpiaでもe+でも手に入りません。予め告知されたチケットの発売日に、ライブハウスに並んで手に入れます。今日のチケットも先月、寒空の下長い時間並んで手に入れました。それでもあっという間にソールドアウトする、消毒GIGそしてGAUZEの不動の人気はファンとしてもとても誇らしく、ある意味前時代的で面倒なチケットの入手方法が、ライブの価値そのものを高めているような気がします。ライブチケットは驚くべきことにずっと1200円のままで、その何倍も見返りがあるライブを体験することができます。

本日の消毒GIGは1983年結成のAggressive DogsとGAUZEのツーマンです。両者ともに多くのバンドの解散や活動休止を横目で見ながら、息長くキャリアを積んできたバンドです。年季はなおのこと、その迫力が違います。自分の胸に手を当ててみて、人生のステージがどんなに変わろうとも、ずっと続けてきたこと、人に誇れることは何でしょうか。GAUZEの音楽にはいつも鼓舞されます。聴くと背筋が伸びるような緊張感があります。

まずは北九州のAggresive Dogsがステージに立ちます。年齢に触れるのは野暮ったいですが、50を超えるボーカルUZI-ONE氏が縦横無尽にステージ上を暴れ回り、激しいシャウトで会場を煽ります。彼は自身の音楽人生に大きな影響を与えたお兄さんを白血病で失っています。バンドを続けるかどうか悩み、様々な葛藤の末に今日がある彼らの音楽、そしてライブからは表現者としての深みと矜持を感じます。東京というアウェイでありながらも、全く躊躇の無い圧倒のステージでした。

そしてGAUZE。始まるや否やフロアの後方や、ステージから人が次々と飛んできます。まるで水がいきなり熱湯になるかのように、超満員の会場が一気に熱気に包まれる様は圧巻です。ステージ上のメンバーはまるでシャワーを浴びたかのような汗と熱気の中、間髪入れずに怒涛の勢いでライブを進行していきます。30数曲一切休憩無く、です。これほどの気迫と、ここまで命を掛けたステージングを他に知りません。私も年甲斐も無く拳を挙げ、彼らの歌詞を叫んでいました。人を駆り立てる凄まじいエネルギーに溢れたライブなのです。

ライブで演奏された楽曲の歌詞の一部

時代遅れで 要領悪くて 上等だ(愛しき不器用者 / by GAUZE)

もうすぐ閉まるぞ どうするつもりだ 超えなきゃならねえ てめえの踏み切り やっぱり今日も 渡らねえのか 一生逃げるか てめえの踏み切り(開かずの踏切 / by GAUZE)

ぬるま湯は気持ちいいだろ そろそろ出るか でも 立ち上がれば寒いかもしれぬ ふやけても今のままでいい 何をやってるんだ おまえは(39℃ / by GAUZE)

敵を作れ どんどん作れ 敵を作って 負けない自分を作れ 小さな所で 偽らず 諦めず 怒りを 涙を溜めて 生きろ (Pressing on / by Gauze)

GAUZEのように30年以上もほぼ不動のメンバーで活動を続けているバンドを、メジャー・インディーズ関係なく、いくつ挙げることができるでしょうか? バンドに限った話ではありません。流行に左右されること無く、今日まで一途に第一線で表現活動を続けている人を何人知っていますでしょうか? 常に変化することが求められるこの時代にあって、己の信念とを突き通し続ける美学とその難しさ。彼らに「お前はどう生きるのか?」と問われているような気がしています。

平成が幕を閉じる2019年。私は知られざる東京の地下で、この瞬間、GAUZEを目の当たりにできる幸せを噛み締めています。


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