11日目:高校生が限界集落に来て薪を割り、本物の贅沢にも触れる一日
11月14日土曜日。
わいわいと賑やかな声が少しずつ増えてきました。
今日は月一で恒例になっている公民館の土曜教育の日です。
限界集落で行う教育的活動
土曜教育というのは、地元の小学生~高校生に休日である土日にこの大保木に来てもらい、ここでしかできない活動を手伝ったり参加したりしてもらう社会教育活動の一環として行っているものです。
住民である地域の高齢者と交流しながら山の生活、文化や自然を知り守り育てていく、そして若者の豊かな心を育むことを目的としています。
今年で5年目になる土曜教育。
本来であれば4月から行われるはずだったけれど、コロナでそうした行事活動はほぼほぼ中止になりました。
8月から少しずつ再開し始め、今年は4回目の開催です。
今年参加してくれているのは、西条市街にある西条高校と、西条市のお隣にある新居浜市(にいはまし)の新居浜南高校の生徒が数名ずつ。いつも高校の先生の車による送迎つきで、先生も一緒にご参加くださっています。
主に西条市内の高校が対象だけども、新居浜の場合はもともと西条にいた先生が興味を持ってくださったので、そのご縁が今も続いていて来てくださっているようです。
さらに今日は、大保木の中でも街側に位置する兎之山(とのやま)という地域にわずかにいる小学生の3人が来てくれました。
またまた今日は外部視察が入るとのことで、教育における見識をお持ちの方が大勢お越しになりました。もはや参加している子供の数より多いのではないだろうか…
薪割りをして木に触れ、知る
今日の土曜教育のテーマは「薪と炭づくり体験」。
講師は西条自然学校の山本貴仁理事長です。
自然学校の拠点となる事務所は、この大保木にあり、公民館から2分も歩かないところに、体験の実施場所であるキャンプ場「石鎚ふれあいの里」からは5分も歩かないところにあります。
本日、土曜教育に参加される方々がふれあいの里に集合しました。
今日は、ちょうど自然学校にインターンに来ているベトナム人の京大生の方も一緒です。
なかなかの大所帯ですな。
もちろんあらかじめ、参加者全員の記名、そして検温は済ませてあります。
まずは、山本さんによる薪割りで扱う木とその山の自然などの解説。
山本さんはふれあいの里の川沿いに生える木を指さして問います。「みんな、この木なんていうか知ってる?」
「知らん」
小学生が口をそろえてすぐに一言。いやいや、早いな(笑)
なんて説明しがいのある返答。(笑)
私たちはそこでスギの木について学びました。スギは常緑樹で秋になっても紅葉しないのです。するならば、このあたり一面、赤黄色に染まって綺麗なんですが。
山本さんは丸太を傾けて問います。「年輪を基にしてできたお菓子って何か知ってる?」
「バウムクーヘン」
女子高校生が口をそろえてすぐに一言。甘いものには目がないのか、素早い回答だ。
私たちはそこで年輪について学びました。年輪は木の年齢を表しており数えれば木の年齢がわかるとのこと。最初のうちは成長が早いから年輪はぎゅっと詰まっているけれど、次第に成長がゆるやかになり感覚が広くなっていくのだとのこと。
ちなみに、木は表面のすぐ内側の部分だけが生きていて、それより内側が死んでいるのだそう。水だけは通す役割をしているのだとか。
それから薪割のやり方を聞いて、お話のあとはおまちかね。薪割タイム。
小学生は小さい斧でやります。みんなに注目されています。上手に割れるでしょうか。
高校生は大きい斧で挑戦です。お、上手いこときれいに割れとります。
途中、上手く割れない高校生の手助けに入る場面も。
こうして田舎の大人の力も借りながら、街の高校生が頑張っている姿を見るのっていいなあ。
薪割りの次は炭づくりの予定でいましたが、時間もなかったので薪割りのみの体験となりました。
年をとっても尊敬し合うということ
さて、今日のお昼はつくった薪を使って…
羽釜でご飯。いえい! 手前に見える蓋が付いているのが羽釜です。
薪をただ割っただけで終わらないのがよい。こういう流れを今後の土曜教育でも作れたら、学びが深まって素敵だなぁと思います。
こういう、自然の素材、火で炊くご飯って、完成の判断が非常に難しい。
普段の料理でも火加減は大事だが、自然相手の料理において火加減というのは調整が肝心で、ボンボン薪を放り込んではいけないのだという。
少しずつ様子を見ながら薪をくべて、温度の調節をして丁寧に炊き、鍋から出る湯気だとか音だとか蓋の動きだとか、そういったもので出来上がりを見定める。
窯の状態をわきで見ていた大保木の大先輩いわく、羽釜の蓋が浮いてきたら炊けた知らせなんだとか。今回は、なかなか蓋が開かなかったとのことで、本当は開けてはいけないのだけど、ちょこっと覗いたら米がぶつぶつと沸き立っていたので、それで出来上がりを見極めたのだそう。
ちなみに、この羽釜で炊くことを提案したのは、公民館のすぐ上で畑をしているとある男性。
だけども今日の昼のことを事前に打ち合わせしたときにこんなことを言っていた。
「羽釜の準備はこっちでするけども、火加減は貞子さんやクリ子さんに見てもらったらええ。わしらじゃわからんけん。向こうは手馴れてるからのう。彼女らに見てもらうんが確実じゃと思うわ」
とても印象的だった。
一言で言うと、70代のおじいちゃんでも90代のおばあちゃんには敵わないものがあると思っていて、その方を尊敬していて、相手を立てているというのがすごく感じられたからです。
立場を侵さないというか、どれだけ年をとっていてもその人ができる限りはその人を活かそう、立場を取らずにやってもらおう。その方が上手くいくし、その人にとってもよいだろうという配慮というか思いやりというものが伝わってきたのです。
尊重してお互いにできることをやっていくって、人と関わり合う以上、どこの世界にもあるもので大切なんだなぁということをしみじみと感じさせられる瞬間でした。
本物の贅沢とは
ところで羽釜の向こうのこちら、鍋ですが、その下にあるのは丸太。
実はこれ、キャンプをする人が使うスウェーデントーチなんです。
スウェーデントーチとは、地面に立てた丸太をそのまま豪快に燃やす焚き火だ。チェンソーで複数の切れ目を入れるのがミソで、その切れ目から内部に空気が入り、また熱が閉じ込められるので、酸素、熱、燃料(丸太)という燃焼の三要素がうまく働き、火が消えることなく燃え続けるのだ。 引用:キャンプに行こう!自然を遊ぼう!BE-PAL https://www.bepal.net/know-how/campfire/77061
正式名称は「スウェディッシュトーチ(Swedish torch)」といい、昔からフィンランドで使われていた「かがり火」から生まれたものだと言われています。キャンプ場、ふれあいの里でも販売しています。
たった一本でもこの湧き具合、油とか着火剤とかそういったものは一切使っていないんです。とってもエコ。しかもすぐすごくあたたかい。
こういうとき、自然の力を改めて感じさせられます。
先程炊きあがったご飯は、みんなでおむすびに。
出来たおむすびは、少し固めの米が好きな人は好みのお味に。しかもおこげも程よくついていたので香ばしい。
真っ白でふっくら。羽釜で炊いたご飯なんて初めて食べたけれど、なんだかいつもよりお米らしい味がするような。
途中、大保木の大先輩の方が葉っぱを持ってきて、羽釜を加熱するときに使った薪の残り火で燃やし始めました。
なんだなんだと思って見ていたら、焦げ目のついた葉をやかんの中へ。
そう、これは、お茶です。
ここ、大保木の山で採れたお茶の葉(っていうと聞こえはいいけど、場面的にはそこら辺の葉っぱ)を積んできて、炙ってお茶にしようというわけです。
すごい…!これはここならではで、この状況ならではだ…!普段見られるものではない。
葉を入れたやかんに水を入れ沸騰させたら完成。
飲んだ瞬間、「あ、美味しいですねぇ!」と皆さん口々におっしゃります。
県から視察に来られている方々もお気に召した様子で、何度もおかわりされていました。
大先輩の皆さんともよくお話をされていたようです。
確かに独特の味なんです。そりゃ玉露入りのお茶とかそんな高級茶に匹敵するような代物ではないけれども、自然本来の美味しさだけがぎゅっと詰まった、市販では飲めないお茶。
採れ立て新鮮なお茶の風味が楽しめるんです。
「あ、こういうのが本当の贅沢かもしれない」
とふいに思いました。
外で炊いたお米、沸かしたお湯をお椀に入れて味噌汁、それから大保木の先輩方がつくってくださった美味しいお漬物の数々。デザートに剥きたての柿。そしてお手製のお茶。
参加者そろってみんなで机を囲んで、いただきます。
*
片付けの最中、「あ、お味噌汁余ってる。もらっちゃおう」といって、高校の先生は手付かずでそこらの机の上に置いてあった味噌汁を飲み始めました。(笑)
こちらの先生は、大保木のファンで例年機会があれば必ず来てくれるお方。こういう場所、体験、大保木でできることがすごい好きなんだそう。
もはや、生徒が行かなくても私は行きます、みたいな感じです(笑)
それだと土曜教育の趣旨的からはずれちゃうけど、でも嬉しいのでぜひ来てもらえたら。
あ、そうそう。実は今日はテレビ局の方が取材に来ているそうで。
といっても主に山暮らしの特集とやらをしているのだそうだけど、その流れでこちら土曜教育も取材されることに。
高校生もインタビューを受けておりました。
撮影した映像は17日(火)に南海テレビ、チャンネル4で放送される予定であるとのこと。
…もう過ぎてるし、、、見てない…
以上、今日の大保木でした。
子供がいると場が和むことを再認識した人より。
場に和みは、大切な要素。