見える、見えない、見えてきた、見えなくなった、見たい、見たくない
「中国と日本と韓国の関係は安定しているし、東アジアはすごく平和だよね」
エジプト人の友人を話していたとき、彼女はこのような旨のことを言った。東アジアというのは、他の地域から見れば関係の安定した、かなり平和な地域に映るらしい。
エジプトの情勢だって安定しているのでは?と思いつつ、実際に世界地図を見てみる。アフリカ大陸に位置し、北には地中海を挟んでヨーロッパがあることは知っていたが、よく見るとパレスチナに一部接している。アフリカ、中東、ヨーロッパの情勢に大きく影響される位置にあるのだ。そんな国から来た彼女からすれば、確かに東アジアは穏やかかもしれないな……と思った。遠く離れた故郷がどれだけ心配なことだろうかと、CCTV4チャンネルの国際ニュースを観ながら私も思いを馳せるのである。
日中韓の3カ国間での民間レベルの文化交流は盛んだし、海外旅行やビジネスでの人の行き来も多い。しかしながら率直に言って、私は日中韓の関係は政治や外交の面で言えばそれほど穏やかではないと思っている。東アジアの歴史上デリケートな話題もあるし、軍事演習や核実験等のヒヤッとするようなワードをニュースで見かけることも少なくはない。日本という国によくない感情を抱いている人もいる。
トランプ政権の返り咲きにより台湾情勢の雲行きも気になるところだ。CCTV4チャンネルの番組では、アメリカと台湾の関係とそれに付随する韓国や日本の動きについても連日報じられている。楽しく過ごしながらも、時折祈るような気持ちで眠る日もある。
私がエジプト情勢に疎かったように、エジプト人の彼女も東アジアの表面しか見えない。正直なところ、エジプトをアフリカと中東のどちらに分類すべきかわからないし、彼女にとっても東アジア諸国といえば日中韓の3カ国でしかないのかもしれない。
外からの視点と、その中にいる人では見える景色が違う。見える世界が違うこと、今まで見えなかったものに目を向けること、外に出なければ見えないもの、外に出てしまったら見えなくなってしまうもの。見えるもの、見えないもの、見えもの、見えなかったもの、見えてきたもの、見えなくなってしまったもの、見たいもの、見たくないもの。この目がふたつじゃ足りないくらいいろんなものが映り、この脳がひとつじゃ足りないくらい考えるものが多い。
海外留学となると語学力や国際交流ばかり重視されがちだけれど、世界はそれほど単純ではないということを改めて思い知るのである。