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「愛してる」を知りたいヴァイオレットと「愛される」を知りたい私

「『愛してる』を知りたいのです」

そんなセリフが印象的なアニメ、京都アニメーション制作の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』だ。主人公のヴァイオレットは孤児で、幼い頃から「武器」として訓練され、使われてきた。自分を引き取ってくれたギルベルト・ブーゲンビリア少佐が最終決戦で重傷を負い、別れ際に放った「愛してる」の意味を知るべく、手紙を代筆する「自動手記人形」となって人々の心を学んでいくというストーリーだ。世界観の美しさ、ストーリーの綿密さ、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女の心の繊細さ、見ごたえ抜群のアニメである。劇場版の公開も控えており、待ち遠しいばかりだ。

「武器」として扱われることしか知らなかった、文字通り「人形」のようだったヴァイオレットが、慕っていたギルベルト少佐以外の人間を知り、関わっていく中で感情を学び、成長していくのが健気で微笑ましい。武器として人を殺してきた、今は義手となってしまったその手で人をつなぐ手紙を書いていていいのか、生きていていいのか葛藤する姿は私も心が苦しかった。苦しみながらも自分のしてきたことと向き合い、乗り越えていくヴァイオレットの強さに心を打たれた。

私はこのアニメを通してヴァイオレットといっしょに「愛してる」の意味を学んだ。「愛してる」ということばは優しく、温かく、時に人に生きる希望を与える。しかしそのことばを伝えるのは容易でなく、とても勇気のいるものだ。

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「『愛してる』を知りたいのです」
そうヴァイオレットが言うたびに
「私は『愛される』を知りたい」
そう心の中でつぶやいた。

「愛してる」と告げられる、「愛される」とはどんな感覚だろうか。自分の存在を認められているような、心のすき間が満たれていくような、そんな感覚だろうか。

人は「愛される」ことでその存在を認められるような気がする。家族でも恋人でも、誰かに愛されている人はキラキラしているような気がする。自分はこうあっていいんだと認め、ブレない軸を形成している。愛されることは自己肯定感を高める。

就職活動をしていたときにふと目にしたネットの記事に、恋人のいる人は内定率が高いというものがあった。当時はなにアホなこと言ってるんだと思っていたが、今となっては理にかなっていると思い始めた。自分を明確に愛してくれている存在が身近にあるからこそ、自分に自信をもてる。

人はひとりでは生きていけない、ということばもよく聞く。人は支え合って生きていくものだという意味だと今までは思っていたが、もうひとつの意味もあると思う。その人がそこに存在していることを認識する他者が必要なのだ。そしてその他者の存在もまた認識によって生まれる。お互いの存在を認識することで初めて、そこに”ある”ことができる。

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武器という《モノ》でしかなかったヴァイオレットが、少佐やCH郵便社の人をはじめ多くの人に「愛される」ことで《人》として存在し、生きられるようになった。愛とは、人を人たらしめるために必要不可欠なものなのだ。

愛とはなにか、見失ってしまったときにはまたアニメを見返す。私は何度だって、ヴァイオレット・エヴァーガーデン、あなたに会いたくなる。


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