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写真を骨から考える
今日は構図についての話です。
すべてを線に還元する
まずはこちらの写真をご覧ください。
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湧水の出る自然豊かな森の中で、モデルの宮下ゆりかさんを撮影させて頂いたときの写真です。
モデルを撮影するとき、その方の表情や醸し出すニュアンスなど人間的・有機的な部分を捉えるのと同時に、モデルの作り出す動きを一本の「線/ライン」に還元する、という無機的な捉え方をすることも大事だと思います。
具体的にどういうことか、次の写真をご覧ください。
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この写真の場合、モデルは直立不動ではなく、体がややカーブを描いています。
そして勘の良い方ならすでにお気づきかもしれませんが、ここでモデルだけでなく背景の要素も線に還元します。
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背景の木の幹も緩やかにカーブをしていて、モデルの作り出すラインとどことなく同期しています。
つまりモデルも背景も一度ラインに還元すると、奥行きやボケ感、生物/モノ、色などの様々な要素が無化され、写真が複数の線によって構成されたグラフィックとして捉えることができます。
そしてこの線の織りなすバランスや配置の面白さが、結果的にその写真自体の面白さを根底で支えていると思います。
線同士の様々な関係
続いてこちらの写真をご覧ください。
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同じ日に撮影した写真です。
この写真の要素を線に還元してみます。
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大きく太い2本の線と、それに挟まれた小さく細い線が並んでいます。ここにも線と線の関係を見出すことができます。
線同士は平行でないと、その関係性が見えないわけではありません。
次の写真をご覧ください。
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線に還元します。
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くねっと体を曲げたモデルの背後に、角度は違えど同じようにくねっと曲がったラインを描く数本の木。そしてモデルの手前には、緩やかなカーブを描いて流れる小川。
それぞれは平行ではないにせよ、モデルと背景にはなんとなく繋がりや関係性が見えてきます。
美術の解剖学講義
このように、写真の「骨」の部分から構図を考えることに興味を持たれた方は、美術家の森村泰昌さんの『美術の解剖学講義』を一読することをぜひお勧めします。
森村さんはこの本の中で、アンリ・カルティエ・ブレッソンが撮影した写真の構図を徹底的に「骨」まで分解して記述しています。
そしてさらに面白いのは、ブレッソンの写真と画家のピエト・モンドリアンの絵(『コンポジション』)は、構図の「骨組み」のバランスや美しさという点でつながっているのではないかと捉えているところで、最初に読んだときにはまさに目から鱗でした。
最後に
「ポートレート写真」というとやはり、その人の表情や光などに重点を置く場合も多いと思います。ですがそれと同時に、全てを線に還元してそれらの関係性を捉えるということも、写真を撮る/見る上での面白さの一つだと思います。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。