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【詩】5月の終わり、嵐山にて


高い空を見上げて
誰かが言った「自分を信じろ」を信じて
僕の目はキラキラしていた
でも背伸びをしすぎたみたいで
届かないとわかると
いじけて俯いてしゃがみ込んでしまう



気づくと暗い部屋のベッドの片隅にいた
やるべきこととやりたいことで首を絞められる
言と葉が絡まってすべてがぐちゃぐちゃになる
僕は何を感じていて
僕は何を言いたいのか
わからない
わからないのになんだか悲しい
とにかく最悪の気分だ
馬鹿が クソが こうなると わかってただろ
何度味わえばわかるんだ 頭が悪いな
どうすればよかったんだ? 
何が悪かったんだ?
おれはどこで間違えた? 
今ならまだ間に合う
ちょっと待ってくれ
まだ動けない
よくわからないけど、何かが怖いんだ


あー、全てどうでもいい
やるべきこととか将来とか大事なものとか
全部どうでもいい
全部ゴミだ
ゴミならゴミらしいことをして過ごせばいい
全部ぐちゃぐちゃになってしまえばいい

意味もなくバスに乗ってどこか遠くへ
雲間から光が差し込んで綺麗なそこら辺へ
太陽が出てるのに雨が降っている
景色がキラキラしてて天国みたいだ
この世界から人間と音が消えたらしい
犬だけは残っていて欲しいな

それは5月の終わり、嵐山だった
誰もいない竹林には葉擦れだけが響いてた
空が葉で隠されてこんなにも小さい
広くて高い空を目指していたはずなのに
それを見て安心してる僕がいた

竹林を通り抜けた先、少し登った先にそれはあった


嵐峡
静かな川を緑の小山が挟み、小さな船が浮かんでいる
この先には何があるのだろう
川は続いているのだろうか
空に繋がっているのだろうか
だとしたら、こんな灰色の曇り空に?
なぜ船はこんなにも悠々と進むのか
怖くないのか
僕は怖い
怖いからここまで逃げてきた

ただひたすらその先を見つめ続けた
鏡を見ているみたいだ
こんなにも美しく、そして残酷に僕を写し出している
答えが欲しかった
でも僕は僕を見つけた
それだけで十分だった
僕は少し笑った
まだ立てないけど
前だけは見ようと思った
きっといつか立ち上がって、上を見ながら進み始める
首が疲れて俯いて、またしゃがみ込む
その繰り返し
それでも、振り返れば
確かに歩んできた、京都の街が広がっていた

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