筆洗 241028
江戸後期の随筆「譚海(たんかい)」にこんな話がある。どこかの山の中に「風穴」と呼ばれる場所がある。広さ七間(約12メートル)というからかなり大きな穴である▼この穴の中に石を投げ入れると不思議な現象が起きる。突然、風が吹き、何日もやまない。大きな石を投げ込むと、風はさらに強くなる▼総選挙の結果に日本国中に吹き荒れる強い風を想像する。自民党の政治に腹をすえかね、よほど大きな石を風穴に投げた人がいるらしい。しかも、大勢の人が列をなして投げ込んだか。自民党は大敗した。「政治とカネ」の不祥事を受け、自民党に対し、はっきりと「ノー」を突きつける大風が吹いた。政権は大きく揺らいでいる▼大風の出どころは「政治とカネ」の問題ばかりではあるまい。経済、社会保障、少子化。長年、日本の抱える難問に成果もよい兆しも見いだせない自民党の政治に有権者はしびれを切らし、大きな変化と新たな道を求めたのかもしれぬ。将来の不安の中で自民党の政策もまた信用を大きく失っているのだろう▼岸田さんが辞め、石破首相で総選挙に打って出ればご祝儀相場も手伝ってそれほどは負けないはず-。衆院解散前の自民党の見通しは甘く、強い大風が分からなかった。それもまた、おごりのせいである▼風を吹かせたあの穴に最初に石を投げ込んだのは誰か。国民を侮り、緩んだ自民党自身に他なるまい。
<表現>
・随筆(ずいひつ)エッセイ/随筆文 수필, 에세이
・譚海(たんかい)담해
・風穴 바람구멍, 풍혈
・広さ 넓이
・〇〇がやむ ㅇㅇ이 그치다
・腹をすえかねる 참을 수가 없어, 분노를 누를 수가 없어
・よほど 상당히, 대단히, 꽤, 어지간히
・政治とカネの不祥事 '정치 비자금 스캔들'
・出どころ 출처, 나오는 곳
・打って出る (입후보) 진출, 자진해서 나가다
・ご祝儀相場
株式市場や卸売市場などで、新年最初の取引・新政権の誕生・新規上場・初物の競りなど、喜ばしいことがあった時に、祝意を表して買い注文が入り、相場が上昇すること。転じて、祝意を込めて実際以上に高く評価すること。
・見通しが甘い 전망이 낙관적이다
・おごり 自慢、プライド、ごちそう、傲慢さ、自負心
・侮る (あなどる) 얍보다, 경시하다, 업신여기다
・緩む 느슨해지다, 긴장이 풀리다
・他ならない ㅇㅇ이다, 틀림없다
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