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【大学生の学びとキャリアを接続する・後編】「学び宣言」プロジェクト~動画づくりの授業実践から、卒業生座談会まで~ with 立命館大学スポーツ健康科学部

私たちLiCが、未来を生きる子どもたちのために、社会に「楽しい大人」を増やしていくことを目指して取り組んでいる大学でのキャリア教育プロジェクト。
前編はプロジェクトにかける思いや、経緯、概要を紹介させていただきました。

後編の今回は、それぞれの取り組みの詳細な内容をご紹介していきます。

▼授業実践:未来の社会課題から、自分のキャリアと学びを考える動画制作活動

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2019年度の授業実践より【アセスメント基準の明確化】【テーマ設定の明確化】により、いかにして自分事化を推し進めるかを課題として授業設計を行なっていきました。また、コロナウィルス感染防止対策の影響を受け、対面での実施が困難となり、【学びの記録化】において、前年の「ドキュメンテーション」とは違った形での記録化を検討する必要がありました。これらの詳細は下記『実施上の工夫』にて記載します。

|授業概要

・授業枠
『スポーツ健康科学特殊講義』(後期15回)のうち、5回分で実施。

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・授業環境
全5回とも、Zoomによるオンライン形式。
受講生は1回生~4回生50名+附属高校3年生1名の計51名。
 <学部生内訳>
 1回生…36名,2回生…7名,3回生…3名,4回生…4名
実施者は大学より授業担当教員が1名、

・課題設定およびグランドルール
「解決したい未来の社会課題」「それにどのように関わるか」「そのための大学での自分の学び」を踏まえた『学び宣言』の動画制作。制作のは1人1作品、3~5分程度の動画。使用するアプリケーションやソフトは各自のデバイスに合わせ自由に選択してもらいました。

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|実施上の工夫

授業実施にあたって様々な取り組みや工夫を行いましたが、ここでは「将来のキャリアと自分の学びをいかに接続し、より自分事としていくためには?」といった課題感から実施した4つの工夫をまとめました。

①ルーブリックの設定と事前共有
前年の課題点であった『自分事化』を推し進めるため、【アセスメント基準づくり】【明確なテーマ設定】に向けて、以下のルーブリックを設定しました。

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基準作りの視点として『セルフオーサーシップ』(河井2020)と、『未来社会の課題解決に対する責任と具体性』が高まることで、自分事化を推し進めることができると想定し、1)~4)の項目を設定し、Lv.2以上の評価を学習目標の達成ラインとしました。また、1)~4)の到達を越え、他の学生への波及力や影響力を及ぼす作品を想定し、Lv.4の基準を設けました。
自分事化が高まることを見越した項目設定が功を奏し、到達レベルを問わず、多くの学生から「これまで主体的に考えてこなかった将来のキャリアや自分の学びについて、この活動を通じて考えることで未来への見通しが立った」といった声が寄せられました。

②学びの記録化
オンライン環境での実施のため、前年に実施した『ドキュメンテーション』が困難であることを踏まえ、別の形での学びの記録化に取り組みました。
学内のe-ラーニングシステムを利用し、毎回の授業後に学んだことや気づきを言語化し、授業掲示板に投稿。さらに全5回の動画制作活動終了後に『経験学習に基づくリフレクションミニレポート』と、数名の学生に対する個別インタビューを行ない、学びを意識的に認知することに取り組みました。

③未来の社会課題を切り口に、「将来の夢」で終わらないキャリア教育
「将来はこの職業になりたい」というキャリア教育から深掘りを目指し、未来の社会課題を切り口にテーマを設定しました。その課題に対して、自分自身が「どう関わりたいのか」「どのように関わることができるのか」「どのような体験がそう考えさせるのか」といった問いかけを繰り返し行なうことで、「社会課題」「将来のキャリア」「自分の学び」を接続することを目指しました。具体性や深掘りについて、まだまだ改善の余地は見られましたが、多くの作品において、自分自身の個性や強みを社会課題やキャリアにどのように生かすことができるかという視点が見られ、一定の効果があったことと考察しています。

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④「教える」ではなく、「共に創る」
LiCが大切にしている学び方のあり方として「共に創る」を今回も意識的に取り入れています。授業を全体講義を約7割、グループワークを約3割の割合で構成しました。割合だけで見ると全体講義の割合が大きく見えますが、伝達を目的としたインプットは各回授業の目的とアジェンダ提示に留め、多くの時間を学生からの全体の場でのアウトプット共有とフィードバックに使いました。慣れない動画制作活動であることも踏まえ、スモールステップ&アウトプット(未完成状態での共有+フィードバック)を中心に行ないました。この工夫によって、周りの学生の進度やブラッシュアップの視点が共有され、各自の作品に生かすことができたとのコメントが多くあがりました。
また、動画編集の実作業についても「教えない」というスタンスをとっています。使うソフト等の環境や実現したいことによって大きく異なるため、基本操作は本やインターネットで独学とし、具体的な相談についてアイデアを提供する形式をとることで、多様なレベルのニーズに対応しています。


▼学会発表:アセスメントに対する取り組みのアウトプットの作成、発信および効果測定

上記の授業での主題のひとつである【アセスメント】に対する取り組みの適性や新規性を問うべく、アウトプットとして京都大学主催の『第27回大学教育研究フォーラム』にて、授業実践の研究報告を行いました。

この発表に際して、参加者からの質問やコメントでは、動画という活動コンテンツを選んだ背景や各取り組みの意図について詳しく知りたいといった声をいただき、キャリア教育の一実践として、多くの大学教育関係者にも関心を寄せていただける実践であったことを改めて確認することができました。また、実践のリフレクションおよびアウトプット物の作成を通じて、プロジェクトの次の展開に対する示唆を多く発見することができ、私たち自身も学びの記録化、振り返りの重要性を再認識する機会となりました。

学び宣言プロジェクト』の授業実践

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|報告を行った成果と今後の展開・課題の概要

<成果>
70%を超える受講生が作品提出に到達し、その全員が学習目標到達基準であるLv.2以上に達していたこと、また到達Lv.を問わず「将来のキャリアや学びに対する見通しが立った」といった趣旨の振り返りやレポートを提出していたことを実践の成果として報告しました。
その達成要因として、上述の「実施上の工夫」を紹介しました。

<今後の展開・課題>
一方で、次年度以降の目指したい方向性として、キャリア教育に潜む「キャリア=職業」といった固定概念から抜け出すための施策や、自分事化が十分に進まなかった学生に対しての支援策について、授業デザインおよびファシリテーションの両面から21年度は取り組んでいきたいと考えていくことを想定してます。

▼卒業生インタビュー&座談会:身近なロールモデルとの交流の場づくりを通じたキャリア教育

授業外のキャリア教育の取り組みとして、卒業生インタビュー&座談会を実施しました。この企画の背景には、授業内での学生の発言などから卒業後のキャリアイメージがスポーツトレーナーや体育教師など、一定の職種に偏っている一方で、学部で学べる事がもっと幅広い職種や場面で生かせるといったギャップから、ロールモデルとして卒業生の話を聞く場を設けることを目指しました。卒業生が社会の様々な場面で生き生きと挑戦している姿や話を聞くことで、自分に合ったキャリアをデザインし、モチベーションを持って生き生きと学生生活も卒業後も活動を続けてほしいと考え、この活動を実施しました。卒業生の中にいる「楽しい大人」とつながり、学生が「楽しい大人」になっていく、そんな循環型のしくみになることを願っています。

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|実施概要

各回は、学部の卒業生1名をゲストに招き、約90分のインタビュー&座談会をZoomによるオンライン形式で開催しました。
学部のコンセプトでもある「挑戦」をキーワードに、「大学時代の挑戦」「現在の挑戦」を切り口にその想いや苦労、いかにして乗り越えたかなど卒業生だからこそ語れる話と学生による質問や相談が繰り広げられています。

(LiC実施回のゲスト卒業生)
第1回:高校教員(野球部監督)
第2回:小学校教員
第3回:保険会社営業職
第4回:起業家(飲食)
第5回:スポーツトレーナー&エステティシャン

|今後の展開

この取り組みはその後学生が自主運営できることを目指して設計を行いました。LiCは冒頭5回の会をファシリテーターとして進行し、その後の進行のモデルを務め、現在は学生が主体となり、引き続き学生と卒業生による新たなコミュニティづくりが行われています。

▼インタビューのWeb原稿化:既存、未来の学生に向けたキャリア教育資源の蓄積と実践的な職業体験

上記の「卒業生インタビュー&座談会」をローカルなコミュニケーションとして完結させず、参加できなかった学生や、将来この学部で学びたいと考えている受験生やその保護者に向けたWebコンテンツ化も行ないました。また、原稿化の活動も学生主体での継続活動になるモデルづくりを行ない、継続的にインタビュー&ライティングといった職能体験が学部内でできる機会を目指しています。


お問い合わせ:授業の共同開発や学校の広報から、環境・空間づくりまで

本プロジェクトは、全体を通じて「楽しい大人」を社会に送り出すことを目指して取り組んできました。その中で共通して大切にしているのは、機会を与えられるだけではなく、自らがその活動や取り組みの原因になれる余白や仕組みです。自分が「何か」の原因になっている感覚・体験こそが、様々なことに対する主体性や楽しさにつながると信じています。

私たちLiCはこうした教育機関のプログラム開発や空間のデザイン、組織のデザインを掛け合わせた「環境デザイン」を行なっています。
動画制作以外の授業開発や空間、組織のご相談もぜひお気軽にお問い合わせください!

ご興味のある方は、お問い合わせ先より、ぜひお問い合わせください。
オンラインでの情報交換などもお受けしています。

Learning in Context(ラーニング イン コンテキスト)
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