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愛!合い!逢い!保育のつながりと分かち合いのコミュニティーづくりを実践する|まちのてらこや保育園

「悩んでいる保育士が多い。一生懸命保育を勉強しても現場への展開の仕方がわからなかったり、一緒にやってくれる仲間が見つからなかったり…そうした現場をよくしたいと願う保育士の力になりたい!」そう力強く話すのは、東京日本橋人形町にある「まちのてらこや保育園」の園長近藤みさきさん。園内を見渡すと子どもたちが作った作品や、思い思いの遊びに没頭する子どもたち、そして子どもたちの気持ちに寄り添いながら保育する保育者の姿が見られた。その思いの原点や、取り組みについてお話を伺ってきた。

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「『その当たり前、子どものためになっている?』保育に悪い影響を与えてしまう『つまらないしがらみ』は『自分の行動』で変えていく。」

今年(2020年)4月の開園(2020年より認可保育所。以前4年間は認可外保育所)に合わせて園長に就任するまで、26年間公立保育園で保育士をしていた近藤さん。
「『疑問が沸きあがっても公立にいたら変えられない』』という気持ちはありました。保育現場独特の人間関係が、保育に影響が出てしまうのも苦痛で。あるとき、全員で分担する行事の衣装や道具の製作を全部自分でやると請け負ったことがありました。それまで『平等』の名の下に、得意な人も苦手な人もいる中で作業をし、人が作ったものに陰口をいう姿を見て、それならば自分が得意で苦ではないなら引き受けてしまおうと考えたんです。そうすると製作の時間を作るために、周りがほかの部分でサポートしてくれるようになりました。そのときに『こっちのほうが平等』と気づいたことが大きな発見でした。」
当たり前になっている慣習が人間関係を悪化させる要因になっていたが、近藤さん自身の行動によって関係性そのものに変化を与えた。相手の気持ちを想像し、自分の想いを言葉にし、交わしていくことが、近藤さんの現場を変えていく力の原点のようだ。
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また、育児中、お子さんが習っていたピアノにご自身も通い始めたときのこと。「週に30分間、お母さんでも保育士でもない『個人でいられる時間』が心地よかったんです。そこからどうやってその時間をつくるか、時間の使い方を意識し、効率よく時間を使う工夫を始めました。仕事量が多いといわれる保育士でも、工夫次第で時間を作ることができます。」という。その言葉の通り、近藤さんは保育士として働きながら、保育雑誌などで保育作家としての活動もしている。こうした実体験、実践の中から生まれた時間の作り方や保育現場の変化の作り方が、保育現場を元気にし、保育士の力になりたいという気持ちの根底にあるようだった。

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「一人ひとりが『意味』を考えることで、工夫できるようになる。今、現場には対話による学びを通じた『理論と実践の結びつけ』が必要」

取材でお邪魔した事務室には、先客がいた。園長の隣の席がお気に入りの女の子。そこで製作をするのが彼女のお気に入りの時間だそう。「子どもたちの気持ちに寄り添い、できる限り叶えていくことを大切にしています。事務室や医務スペースなど、ちょっとした個室で落ち着きたいという子もいるので、空間作りのひとつとしてここも活用しています。」
この話の最中も、その子は近藤さんの横で製作に興じている。一般的な保育所ではダメ!と言われそうな場面だが、それがごく普通の日常になっている光景にいい意味で驚いた。現場の共通認識をどのように作ったのだろうか。

「私が園長として参画する前に、てらこやは既に認可外として4年分の運営実績がありました。認可に移行するタイミングで、職員と一緒に保育を一つ一つを見返しました。みんながここで幸せに暮らせるにはどうしたらいいかを学び合い、対話しながら歩んでいます。それは、今でも続いています。」

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取材に伺ったのは9月の中旬。コロナウィルスによる休園期間もあった中で、短期間での変化が大きい秘密は、まさにその休園期間にあった。
「約1ヶ月半の休園期間があり、在宅ワークに切り替え全員が朝から晩まで研修をしていました。子どもたちの活動記録、環境づくり、遊びについてなど、全員が調べものをしたり、その意味について対話して見解を深めたりしながら、休園明けの運営方針を固めていきました。その甲斐あって、一人ひとりが『子どもの気持ちに寄り添う』保育の意味を知り、考えているからこそ、日々いろいろな工夫・提案があったり、困っていることを気軽に相談してくれたりしています」。
保育現場を眺めながら、気になったことを訊ねると、近藤さんはもちろん、周りの保育者も説明を返してくれる。保育室にあるものひとつひとつが子どもの姿から発想していることがよくわかる。

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そのひとつが棚の上にひかれる電車のレール。何もない棚の上で電車を走らせている子どもの姿から棚の上に線路やトンネルを作って遊び場にした。

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おもちゃ棚にスズランテープが付けられたスペース。これも子どもが棚に入りたがる姿から、入ってよい場所をつくり、さらにそこをより個室感が出るように演出している。2,3歳はこのスズランテープを楽しんでいる一方、1歳クラスは『見えないこと』が怖いようで、テープ設置後にスペースに入らなくなったのでテープだけ撤去したという。

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棚に貼られたテープと牛乳パックの底。これはおもちゃを元の位置に戻したくないという子どもの反応から「車庫にしたら? 」と発想している。

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日本の保育園ではあまり見かけないソファも、遊ぶでもなく、くつろぎたい気持ちを汲み取って設置している。

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購入した椅子が子どもの身長に合わなかったことから、高さ調整の為、サイズぴったりの箱(紙芝居)を活用して、椅子の絶妙な曲線も再現する職人芸。

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こうした工夫の数々は、教科書的な知識だけでは生まれない。子どもたちの姿をもとに、それぞれの保育者が環境や活動の意味を理解し、応用することで出来上がっていく。そこで働いている保育者が、その工夫ひとつひとつを楽しそうに語っている姿がその何よりの証拠である。

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「保育者同士の横のつながりを作り、保育士も園長も感じている孤独を楽しいエネルギーに変えていきたい」

園長として、ひとつの園の保育現場を大きく変化させている近藤さんに、今後の見通しを聞いてみた。
「『まちのみんなが先生で、まち全体が保育園』は当園の大切な想いの一つですが、コロナウィルス感染拡大防止のため、行政から地域交流をなるべく控えるよう要請が出ています。子どもたちと地域を結ぶ活動も限定的にならざるを得ず、もどかしい状況ですが、最近は料亭を経営する保護者の方にご協力をいただいて、子どもたちの目の前で大きな魚をさばいてもらいました。子どもたちの豊かな経験のため、諦めずに工夫を続けていきたいと思います。

また、保育業界全体として、保育士同士のつながりがないことに大きな課題を感じています。。現場の保育士も、園長も、働いている園以外のつながりがないため、相談したり、一緒に考えたりできる仲間が少ない。だからこそ、他園の保育士など、横のつながりが必要です。園長としての業務とは別に個人として『夕焼け会』という保育のオンラインコミュニティを作りました。毎回テーマを決めて、理想を語るだけではなく、どうしたらその理想を現場に落とすことができるかを一緒に考えています。」

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終始、力強くこれまでのこと、現状のこと、未来のことを話してくれた近藤さん。とにかく保育現場や子どもに対する「愛」を感じた。強い想いを持ちながら、押し付けるわけではなく、一緒に働く仲間と『何が子どもにとって楽しい状態か』を考え続けている。現場に溢れていた様々な工夫と保育者のみなさんの語りがその喜びを物語っていた。そしてよりよい保育現場づくりのメッセージは園内に留まらず、同じ業界で働く保育者にも向けられている。『学びのコミュニティー』や『知識や経験の共有』ということについても改めて考えさせられる取材だった。


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訪問先:まちのてらこや保育園
所在地:東京都中央区日本橋富沢町4-1 ミズホビル1F・2F
Webサイト:https://www.terako-ya.jp/

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