【高校での動画制作授業実践】【動画づくりを通じた学び方を学ぶ授業】”日本文化アンバサダー”動画制作プロジェクト|立命館宇治高校
「学び方を学ぶ」をテーマに、動画づくりをする全4回のオンライン授業を実施しました。京都にある立命館宇治高校のIMコース1年生の総勢約70名との動画制作プロジェクトを振り返ります。
▼授業概要
①実施までのストーリー
|留学先での日本紹介動画をつくりたい
立命館宇治高校と私たちとのつながりは、昨年から始まった文部科学省「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」での拠点校と連携企業からスタートしました。昨年度は「全国高校生SRサミット FOCUS」のメンターとして参加し、またWWL研究報告会の撮影および動画制作などを実施しました。
そして今年度、一年間の留学が必須のIMコース1年生約70名に向けて、留学先で日本文化を伝えるための動画づくりを行ないたいとお話をいただきました。「動画づくりを通じた学び方を学ぶ」授業は、2019年より立命館大学スポーツ健康科学部で同様取り組みを行っていました。今回は「日本文化を留学先で伝えること」をテーマに、同授業をアレンジし、実践することが決まりました。
②授業コンセプト
|内省を深め、主体的に学ぶ姿勢をつくる
授業の実施にあたり、生徒に何を学んで欲しいのか、担当の先生方と対話を行ないました。現在の生徒の様子/昨年度までの課題/当該授業のテーマ/生徒に身に付けて欲しい力などから、4つのコンセプトに絞りました。
特に③は、コロナ禍において、生徒同士の交流が例年に比べて少ないこと二対して、授業の中で互いの価値観やバックグラウンドを語れる場づくりを意識し、授業設計および実施をしてきました。
③授業の環境
|Zoomを利用したオンライン授業
実際の授業環境を下記にまとめます。
・実施方法:Zoomによるオンライン授業
・授業時間:8時間(全4回/1回2時間)
・参加人数:生徒約70名・教員2~3名・LiC2~3名
・使用ツール:Zoom、You Tube、Googleスプレッドシート、
Googleスライド、Googleフォーム
そのほか動画制作ソフト・アプリは生徒各自が選択
④授業の構成
|「作り方」は教えない動画制作活動
授業では一般的にイメージされる「動画の作り方」には一切触れず、課題提示とテーマ設定、思考の幅の拡大、フィードバックを中心に実施しました。
各回授業のテーマ
第1回(6/3)「ガイダンス:動画づくりの意義と日本文化」
第2回(7/25)「動画の構想:プロと一緒に自由な発想を楽しむ」
第3回(8/29)「相互鑑賞会:作った動画を見せ合い、伝え合う」
第4回(9/12)「全体鑑賞会:優秀作品発表とリフレクション」
実際の成果物
優秀作品として選ばれた3作品をぜひご覧ください。
ひと作品目は京印章をテーマにした作品。実際に使っている現場へ行き、インタビュー、体験を通じて、日本のものづくりや文字が印章的に表現されていました。improved についても、その課題と、実際に触れたことで感じた作り手の感性が表現されています。
奈良公園に行った際の感動を、その魅力を伝えたい、その言葉の通り、言葉では表しきれない日本の美しさが込められています。言葉も文字も使わず、授業の課題としてどう判断すべきか、想定を超えてくる作品に実施者として嬉しい悲鳴でした。ゲスト講師の映像制作のプロも舌を巻く作品。
食をテーマにした作品が多くある中で、せっかくなら楽しんで見てもらいたい、その気持ちが強く伝わるこの作品。初期の段階で多くの生徒が頭を抱えた「作りたい作品のイメージある人!」の問いかけに当初から構想を語り、作りながらもっと面白く、とアプローチしていた高校生らしい作品。留学先でお菓子パーティーをぜひじつげんしてもらいたい!
参加生徒の声
最終回では、「①自分の強みと改善点」「②未知の課題に取り組んだ気持ち」「③今後にどのように活かすか」「④日本文化について」の4つの観点で活動全体を振り返りました。
「自分の長所は、信頼できるデータを使い説明できたところ。データを使うことでより相手に理解してもらえたし、正確な情報を伝えられた。改善するべきところは、自分が理解できることも、他の人にはうまく通じないことがあるということ。」
「動画の作り方を細かく教えていただいたわけでもなく作ってみようと課題が出されたのでほんとに自分が動画を作れるのか?取材をうまく出来るのか?と不安ともう少し説明をいただいてから動画作りをしたかったなと思い、動画作りに対して不安しかありませんでした。でも実際やり遂げると、達成感もあったし逆に何も聞かされず、自分で試行錯誤したことによって学ぶことが大きかったんだと思いました。一人でやり遂げたことでレベルアップできたきがしました。」
「行き当たりばったりで行動しているとできないこともきちんと計画をたてれば可能になると思し、周りからの信頼度も上がると思う。
粘り強く取り組むことで自分の能力を今までよりレベルアップ出来ると思う。」
「日本について紹介するにはまず、日本について自分が知るよいうことが大切だと思いました。留学に行って、いろんな人から日本についてどのような所なのか聞かれたとき、たくさんの日本の素晴らしいことについて知ってもらいたいです。そして日本のいい所、改善点をしり、世界のいい所、改善点を知ることでお互いの問題点を改善し、長所をしり、伸ばし、よりよい世界にすることができると思います。」
プロジェクトを通じた発見と意義
当プロジェクトを実施し、その振り返り、学びとして、大きく2つの発見や意義がありました。
①課題に対して自ら情報を集め、頭と手を動かす体験の重要性
前述の通り、今回の授業シリーズでは「動画の撮り方」や「編集の仕方」といったスキルを伝えていません。何のために、何をするのか、大きな枠組みを提示した上で、個々に目的(この動画を通じて、誰に何を伝え、その後どうなりたいのか)と、そのために必要なことを考えて取り組んでもらいました。
振り返りの中でも「最初はどうやったら動画が作れるのか不安だった」といった声が多くあがっていました。一方で「調べて作り始めてみたら、思いのほか進めることができた。自分でやり切ったことで達成感を得られた」という振り返りも多くありました。
未知のことでも、自ら情報を集めて頭と手を動かすことで乗り越えられた、という経験・自信が、今後の学び、特にこれまでの常識と異なる海外での生活に役立つことを祈っています。
②主体的な学びを引き出すためのサバイブする環境づくり
こうした振り返りを通じて、学習者の主体性を引き出すためには、目的や課題を示し、その動機付けを行ない、自分に必要なことを考え、自ら学ぶ環境をつくることが大切であると改めて考えさせられました。もちろん、知識や基礎技術の伝達が不要ということではありませんが、ある意味で「教えられる」という守られた環境から解き放たれることが、自ら必要なことを考え、獲得するという行動につながります。放任するのではなく、うまくいかない場合などには、どうしたらよいか一緒に考え、支援を保証することが学習者が安心して学べるのだと考えます。
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最後に
「動画づくり」という活動を通じて、さまざまな学びの機会をつくることができました。
・テーマに対する調べ学習/内省
・未知のスキルに対する不安と獲得、利用を通じた達成感
・計画性
・相互鑑賞を通じた学び合い(グループワーク)
・経験学習モデルの体験
ほかにも、個人単位の気づきや発見は数多くあります。
こうした授業を実施することができたのは、参加してくれたIMコース1年2組、3組の約70名の生徒のみなさん、ご担当いただいた川本先生、青野先生、三上先生、そしてゲスト講師としてご参加いただいた清水御冬さんのお力があってこそのことです。本当にありがとうございました。
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担当者:植竹(うえたけ)
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