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嵐の日/人間/けだもの
観測史上最強の強さかもしれない台風である。
雨が降り続いていてずっと暗い。いざという時のために手回り品だけリュックに詰め込んで、ひとまず部屋でじっとしている。ある意味読書がはかどる。
台風も地震も、ともかく自然のものごとはスケールがでかい。かなわない。「東京のマンションに暮らしている」ということしか普段意識していないが、見方を変えてみれば「ユーラシア大陸東岸・温帯湿潤気候の平地に棲みついている」ということだ。狩猟採集の代わりにスマホのペイペイで日々の糧を得ているにしても、きっちり自分たちは自然の中で生存している。
そんなエモワイルドな気分に答えてくれるPrimeReadingを二冊。今ならAmazonプライム会員なら無料で読めちゃうお得な本である。
世界中の「なんかへんな生き物」をゆるいイラストで紹介している図鑑。
たとえば”天敵がいない環境に慣れすぎて、外来種のいたちや犬にあっというまに狩りつくされてしまったニュージーランドの悲しき鳥、カカポ”が乗っている。丸々と太った弱そうなフォルムにくわえて「パニックになるとフリーズする」という習性がどうしようもなさすぎて愛おしさを誘う。
ほかにも、寿命が来ると幼体として産まれなおすことで、地上の生き物で唯一、不老不死を実現しているベニクラゲや、優雅すぎるカワセミの求愛行動とかが紹介されている。ちなみにベニクラゲはあくまで寿命で死なないだけで、カメなどに食われるとあっさり死ぬ。
この図鑑の良い楽しみ方は、気になる動物を見つけたらその場でyoutubeでその動物の動画を見ることだ。カカポのどうしようもなさが動画だと際立つ。ナマケモノは実は泳ぎが得意と言われたら、そんなの見てみたくなるじゃないか。
キンドルでさくっと図鑑をDLして、気になったらyoutubeを楽しく見る。なんだか未来の小学校教育を受けているような気にならなくもない。。。
『文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る』by松原 隆彦
中学校・高校でならったな~というような物理の話が読めて、懐かしい気持ちになれる本。当時、物理実験をやらされることもあったが「正確に重量を測る」「時間ごとに温度を記録する」などの細かい作業がとにかく苦手で、全然好きになれなかったことを思い出す。
「リンゴは赤い」と感じるとき、赤以外の色の光をリンゴが吸収していて、赤い光をリンゴの表面が反射しているがゆえに結果的に赤く見えている、というような話とか、言われるまですっかり忘れていた。
銀河の大きさのようにスケールの大きすぎる話もあれば、原子をさらに分割していった素粒子のように小さすぎる話もある。
そして量子の話になってくると、急に「物体は確実に存在しているんじゃなくて、存在している確率が高いに過ぎない」というような神学論のような話になりだす。
なんで動物図鑑とこの本を並べたかというと、量子研究を究めていった結果の学説として「この宇宙は人間という”観測者”を存在させるために100億年以上かけて設計されている」という理論を紹介しているからだ。
オカルトの主張ではなく、量子学の権威が大真面目に主張しているれっきとしてた学説らしい。
嵐に見舞われ右往左往する人間は、地上の動物たちと同じ、生態系の仲間なのか。それとも人間はこの宇宙の「目的」であり、嵐さえ大いなる意志に従っているのか。
外に出られないと人間は暇なことを考える。