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137冊目:ゴミうんち

気になっていた本を図書館で借りた。タイトルは強烈だけど中身はとても真面目、「循環する文明のための未来思考」ということで資源循環に纏わる話。

生物の循環

自然界には、ゴミもうんちも存在しない。すべては有用な資源として循環している。特に「鉄分」はすべての生物にとって必要なものであり、生き物の行動、地球の自然現象によって循環される。

豊かになった森の落ち葉や倒木、動物の糞が分解されてできた腐葉士が「鉄分」を海に届けているとわかった。

本書p.030より

サケとクマ

例えば北海道といえば、サケを口に咥えたクマのイメージがある。そこにも奥深い循環のプロセスが潜んでいる。サケは川で生まれ、海を回遊しながら動物プランクトンのオキアミを食べる。そのカロテノイド色素で白身魚の身がオレンジピンクに染まる。産卵のために生まれた川に還って死ぬことで、サケの一生を通して海のミネラルが森に届けられる。さらに、サケを食べたヒグマや猛禽類が森で糞をすることで、森全体が海からの恵みで豊かになる。サケや態が海と森をつなぐ栄養循環の回路になっている。

樹木

太古の地球では樹木はゴミだった。海から陸へ生物が進化を遂げた頃、植物もまた地上の重力に耐えきれず地面に這いつくばっていた(地衣類)。やがて光合成のため上へと目指し出し、その強度を保つため、植物の”鉄筋"にあたるセルロースと"コンクリートルにあたるリグニンが開発された。しかし、当時の地球にはその分解能力はなかった。その時の分解できずに残った残骸が今の化石燃料「石炭」である。数億年前にリグニンまで分解できる菌が進化し、今では森の落ち葉も倒木も生物の栄養となっている。

人類の営み

そもそもゴミうんちが悪という概念は人間が定住したところから始まる。移動していた時には問題にならなかった人と家畜の糞が一ヶ所に集中することで感染症が流行る。鳥インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症はどれも動物由来であり、動物の体内では共生できたウイルスや細菌が人間を大量に死に追いやった。

窒素汚染

動物の9割超が人間とその家畜で占められる」(体重積算)というほど、この星はいまや”ヒトと牛の惑星”になってしまった。

本書p.118より

人や家畜に起因する問題に窒素汚染がある。窒素汚染には3つの要因がある。
1.化学肥料(アンモニアNH3)
人口肥料を多用する農業は土壌劣化や海などの富栄養化を促進する。これは化学肥料が作物に吸収される前に雨で流され、川や海に過剰な窒素を供給することで赤潮の発生などの環境問題になっている。
2家畜の糞尿(に含まれる窒素分)
特に乳製品や肉の消費量の多い欧州で問題
3 人間の糞尿汚染
特にトイレや下水道などインフラ整備が不十分な途上国で、未処理の糞尿が川や水路を汚染。

人口増加

地球の人口増加のスピードが想像以上に速い。毎年約7500万人ずつ増えている。単純に考えても1日あたり21万人弱増えている。これは食料問題の改善や医療の発達によるとしても、その分の人数を補う衣食住を毎日補うことを考えるととてつもない数字だと分かる。

7500万人を1年365日で割ると「1日あたり21万人弱」ー明日は今日より21万食、多く用意せねばならない。

本書p.124より

日本の循環

江戸時代には人の糞が「金肥」と呼ばれ、商品として売り買いされた(PoopLoop)。そんな日本で今も世界の先を行く新たな技術や取り組みが多く生まれている。木造建築や、ゴミから作られた食器、土に帰る服などなど。知らない日本が本書にはたくさんあって、嬉しかった。

"ゴミ”やうんち"という概念が存在すること、それが「忌避」と「忘却」の対象として隠れて処分される(水で流し、埋められ、燃やされて終わり)ということ自体に、社会のOS(オペレーティングシステム)としての根本的な欠陥=「デザインの失敗」が隠れているのではないか?

本書イントロより



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