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髙田祥聖の、かたむ句!⑥【金曜日記事】

ねえ、夢で、醤油借りたの俺ですか?/柳本々々

まずはお礼から。
7/23の俳句同人リブラによるラジオ「リブラジ」をお聞きくださったみなさま、またQ10企画にご参加くださったみなさま、ありがとうございました‼︎ リブラメンバー一同、心よりお礼申し上げます。
リブラジってなあに?というかたは、Xのリブラ公式アカウント(@tenbin819)から録音をお聴きいただけます。未聴のかたはぜひ‼︎


わたしって何だろ水が洩れている/加藤久子

リブラジの企画「Q10」は、

Q1.好きな季語
Q2.好きな俳人
Q3.俳句関係で好きな本
Q4.俳句で使用頻度の高い語彙
Q5.よく俳句をつくる場所
Q6.自句のイメージをひとことで
Q7.句会で大事にしてること
Q8.最近嬉しかったこと
Q9.将来の目標
Q10.自選一句

からなる10の質問に答えていくアンケート企画。

リブラのメンバーを始め、その句友、初めましてのかた、俳人としてすでにご活躍のかたなど、百名以上から回答をいただいた。心よりお礼申し上げる。
未見のかたはぜひとも、Xで「#リブラジ」と検索していただきたい。百人百様の回答は壮観の一言に尽きる。

ということで、今回のかたむ句!はQ10についてのお話である。


雪の音あつめてひとり対ひとり/野沢省悟

Q10と向き合うことは、わたしにとっても自分自身を見つめ直すいい機会になった。

好きな季語は、……というよりも 季語という存在そのものが好きだ。先人たちが紡いできた本意に、私の糸を結ばせていただくようでわくわくする。

これもひとつの答えだとは思ったが、ズバリの季語で回答したほうが盛り上がるだろうと思い、四季それぞれからひとつずつ挙げることにした。
悩んだと言えば悩んだし、わりと訊かれる質問でもあったので悩んでいないと言えば悩んでいない。

いちばん好きな季語は氷。氷関連の季語は季節を問わず好きなものが多い。流氷。薄氷。氷河。氷菓。削り氷。それから、アイスティーなんかも。

季節でいうと、冬の季語で好きなものが多い。
寒し。冴ゆ。悴み。白息。風邪。マフラー。焚火。寒禽。裸木。枯る。

それらの季語を詠んだ自句で佳句があるかというと、……ある。と思う。
好きだから観察することが苦でない、というよりも、波長が合いやすいのか、それとも季語がわたしに合わせてくれているのか。

季語は、一緒に過ごした時間に正直であると思う。一緒に過ごしていなかったとしても、思いを馳せたぶんだけその思いに応えてくれる。まあ、そうじゃないやつもいるけれど。



ああそうかそうかと水になっていく/竹内ゆみこ

「不思議の国のアリス」を下敷きに、現代人の抱える悩みや葛藤を主人公アリスが解決していくブロードウェイミュージカル「アリスインワンダーランド」に次のような場面がある。

「あなたはだあれ?」
「あたしはアリス。アリス・コーンウィンクル」
「それは名前でしょう? あなたはだあれ?」

アリスインワンダーランド

いかにも、不思議の国のアリスにありそうな問答である。

自己紹介を求められたとき、わたしたちはまず名乗ってから、次に相手が必要としている情報や所属しているコミュニティなどを開示していく。
上記の質問が誰の台詞だったか、すっかり忘れてしまった。質問の主が求めているのは、名前という記号ではなく、存在そのものについて。敢えて言うならば、「魂の名前」を問われている。

自分が何者かを答えるとき、なにが好きか、あるいは、なにが嫌いかについて言及することは有効である。なにが嫌いかという質問およびその回答はなかなか強く響くため、なにが好きかについて語ることのほうが多いかもしれない。

好きな俳人については、悩んだ。

わたしはミスチルの新譜が出たら速攻で聴くし、「HERO」のMVではいまだに泣いてしまうが、ミスチルが好きなアーティストかと訊かれるとちょっと困ってしまう。わかりにくい例えだったら、申し訳ない。

「時計屋の時計春の夜どれがほんと」はめちゃくちゃ刺さるのだが、久保田万太郎が好きかというと、……好きだな。うん、かなり好きだ。
「二つ眼で生きて白魚透けにけり」はめちゃくちゃ刺さるのだが、山上樹実雄が好きかというと、……好きだな。うん、しみじみ好きだ。

通勤途中にある糸瓜棚を見れば「子規さん、やっぱり好きだ……」と思うし、鷗を拝読すれば「麒麟さんの句 いいな……、いやリブラにはたくみくんがいる……」と思う。

赤尾兜子。阿部完市。阿部青鞋。池田澄子。生駒大佑。岡田一実。小川楓子。ぐ。佐藤智子。佐々木紺。島津亮。攝津幸彦。田島健一。村上鞆彦。山岸由佳。
……切りがない。少なくとも、下書きのメモが埋まるくらいには。たくさんの俳人の名前を書いて、鉛筆で手がまっくろになるくらいには。
これは博愛というよりも、片想いに近い感情のように思う。

夏井いつき。堀田季何。
どちらもわたしの師であるが、「好きな俳人」として答えるとなると、なんとなく踏みとどまってしまう。わたし個人のnoteのほうで『鶴』や『人類の午後』の鑑賞を書いているのだが、なんとなくまだ書ききれていない気がして、ずっと下書きのままである。
好きという言葉じゃ、足りない。

考え抜いたすえ、河東碧梧桐と海藤抱壺を挙げた。たしかにどちらも好きな俳人ではあるが、リブラのメンバーとしてどう答えるべきかが念頭にあったことは正直否めない。非常に頭でっかちな答えである。

素直にぱっと思いついた俳人の名前を書けば。
いやいや、わたしの句友は印象的な名前のかたが多くて、どうしてもそのかたたちの名前が頭を過ってしまう。いっそのこと振り切って、好きな俳人は自分自身と書いてもよかったか。

好きな俳人にわたしを挙げてくださっているかたもいて、ほんとうに嬉しかった。こちらにて、お礼を伝えさせていただく。


やさしさが犬の姿をして見上げ/浮千草

「その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」。
ミトおばさんが教えてくれたオレの好きな言葉なんだ。
オレには、二人が怒っている理由はとても大切なことだと思えるんだ。

冨樫義博『HUNTER×HUNTER』一巻 ゴンの台詞


Q10の質問「俳句で使用頻度の高い語彙」では、神 淋し、と答えた。

淋しいは、たぶんいちばん好きな感情である。
乾いていて、湿っていて、ざらざらしていて、さわさわしている。内側へ、より内側へと向かっていく嵐のような静かさ。欠落していることを受け入れているような諦念もあれば、欠落をなんとしてでも埋めようとする暴力性もある。

神については、存在自体が気になる。
わたしの句において言えば、人智を超えた存在を便宜上神と呼んでいることも少なくないのだけれど、遠く海を隔てたところにいるひとたちも、目に見えない存在を畏怖し、その存在に心救われているという共通性に、人間ってなんなのだろうと思う。

戦争についても。

俳句四季新人賞の贈呈式で聞いた、関灯之介さんのパレスチナへの連帯についてのスピーチ(こちらは灯之介さんのnoteでお読みいただけます)。同日の堀田季何せんせいの「いま、この世界の戦争俳句」についての講演。

7/22には仕事の合間を縫って、炎環の西川火尖さんと、MKRDTSBさん、西ウチ子さんの三人展「凧、ハウリング、百葉箱、」にもお邪魔してきた。
こちらの展示は7/26が最終日。最寄り駅はJR八王子駅。ぜひご覧になっていただきたい。ほんとうに、なんと言えばいいのだろうか、貫かれた。

縁あって見る機会、知る機会をいただいたのだから、わたしもわたしなりに戦争について考えていきたい。

俳句関係で好きな本に挙げさせていただいた池田澄子さんのエッセイ『本当は逢いたし』には、こんな一節がある。

八月に入るとテレビで、戦争に関した映像をよく見る。流石にもう見たくない、と思う。よくよく知っているから私はもういい、と思う。そういうことをよく知らない若い人達が見ればいいのよ、と思う。
しかし、死んでいった人たちは、もう知っているから、なんて言えない。彼らは一度も、もしかしたら自分の最後が映っているかもしれない映像も、見ていない。それどころか敗戦のことも知らない。敗戦の前から死んだままだ。
(中略)
日本だけのことではない。人為的に人の命に関わることは、聖戦という言葉を作っても、平和のため国民のためと言っても駄目。
古今東西、人たちが争うのは何故なんだ。忘れた頃にではなく、忘れる暇もなく、そういうことがいつも何処かで起こっていて、私たちはそれを写真や動く映像を見ながら嘆く。

池田澄子『本当は逢いたし』

この本は途中まで読んでも、ついついまた最初から読みたくなってしまうので、一時期どこに行くにも一緒だった。本棚に収まってくださったのは、つい最近のことである。

どうして人間は争うのだろう。
花に、風に、夕日に、漣に、星の光に、心動かされるのは同じなのに、どうして。
誰かに愛され、誰かを愛することができるのに、どうして。

答えがないのだとしても、考え続けたい。
考え続けることをもって、その考えをもって行動することで答えとしたいと思う。


さあ立ってごらん背中は縫い終えた/広瀬ちえみ

前回のブログ以上に個人的な内容になってしまった。
Q10企画について書きたかった、お礼をお伝えしたかったというのはもちろんであるが、いまの自分の立ち位置についても考えておきたかった。
いまどこにいるのかを把握することは、これからどこに行くのか行けるのか行きたいのかを考える道標になると思うから。

書きたいことが、まだまだたくさんある。

時事句について。当事者性について。
本を作りたいと動き出してみてわかったこと。
短歌や川柳についても。実際、川柳と俳句について書きたいなと思っていたところだったので、小見出しのタイトルはそのまま好きな川柳から引かせていただいている。

どうか期待していただきたい。
わたしだけ、ではなくて、リブラに。

この記事を読んでくださったあなたに応えたい。
伝えたいことがたくさんある。
お見せしたいものが、たくさんある。


【御礼と宣伝】

荻窪は鱗さんでのリブラ句会、おかげさまで第八回を迎えます。第八回は8/17(土)19時から。いつもはカレーなのですが、今回はリブラの塚本櫻𩵋によるチャーハン句会となります!! みなさまのご参加、お待ちしております!!

お読みくださり、ありがとうございました‼︎
みんな、ありがとう。だいすきです。




カサコソと言うなまっすぐ夜になれ/佐藤みさ子

今回のブログも、リブラメンバーに目を通してもらってから公開している。

面白かったのが、メンバーがミスチルの話題に食いついたこと。
ミスチルの「HERO」と、週刊少年ジャンプで連載中のONE PIECEのコラボ動画がYouTubeに上がっているのだそうだ。なんでもONE PIECE 109巻発売記念なのだとか。

そこから始まるONE PIECE談義。

リブラ、ほんとうにおもしれーやつらである。

そうだね、おれも見たいな。グランドラインの果て。
一緒に行ってくれる? おれもがんばるから。
……ONE PIECE、読んだことまったくないけど。

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