第3回。感涙。映画「スラムドッグ・ミリオネア」に見る壮大な愛のドラマ。
日本では2009年4月公開。
アカデミー賞で作品賞始め8冠獲得。
当時大変話題になっていたことは覚えていますが、観るのは今回が初めてでした。
ストーリーの詳細を知らず
「貧しい青年がクイズ番組で勝ち上がってお金持ちになるサクセスストーリーでしょ?」
くらいの気持ちで鑑賞開始。
そして観終えて・・・
胸が一杯。
心地よい涙がしばらく止まりませんでした。
サクセスストーリーという枠では収まり切れない、様々なテーマを持つ映画。
インドという国が持つ歴史、社会問題
生き抜く子供達のヒューマンドキュメント
そして、愛。
以下、簡単なあらすじと
私が思う映画の見どころなどご紹介してみようと思います。
今回もネタバレ含みますので
もしまだ観たことなくて、ノーデータで鑑賞したいと思っていらっしゃる方は
ここまでか、目次より最後のまとめにジャンプして下さいね。
あらすじ
インドの超人気番組「クイズ・ミリオネア」。
ある日、回答者としてジャマールという若い男性が出演します。
スラム街で育った彼は小学校にも通えていない無学の青年。
それなのに超難問に次々と正解し、全問正解まであと1問、というところで
ジャマールはイカサマの容疑をかけられ、警察で厳しい尋問を受けることになります。
録画された番組を検証しながら尋問を受けるジャマール。
そして1問ずつ振り返る度に明かされる
急成長していくインドの社会情勢を背景とした
貧困、宗教暴動
スラム街で逞しく生きた幼い兄弟と少女の壮絶な人生と愛。
ジャマールは
何故「クイズミリオネア」に出演したのか
そして何故、正解し続けることが出来たのか
そして最後の一問の行方は・・・?
というのが大まかなあらすじです。
では続いて
私が思うこの映画の見どころについて語ってみたいと思います。
ここに注目!!
1.壮絶ながらも胸を熱くする、スラムチルドレンの描写。
この映画自体はフィクションですが、この映画の舞台となったスラム街の人々の生活模様は、恐らくノンフィクションに近いのではないかと思います。
主人公のジャマールと兄のサリームは幼くして母親を宗教暴動により殺害され孤児となるのですが、共に行動する少女ラティカを始め、映画には同じ境遇の子供達が沢山出てきます。
大人でさえ過酷であろう状況で懸命に生きていく子供達。
ゴミの山で暮らし、犯罪と施しを繰り返し
その日を生きぬく、ということ以外に選択肢のない人生。
それは映画と分かっていながらも思わず目を背けたくなるような壮絶さで
でも
目を背けたくなる以上に、彼らから目が離せないのです。
やせ細ってボロボロな身なりでも
生きる本能を失わないしなやかな思考と体に
まるで荒野に生きる野生動物のような凄みを感じました。
ちなみにこの映画のタイトルの「スラムドッグ」の「ドッグ」部分はスラム街の人々を貶める表現だ、と当時問題視されたこともあったようですが
私は製作者側の気持ち、理解出来ます。
貶める気持ちなどさらさらない
むしろリスペクトではないのか、と。
2.きっと人それぞれ、何をテーマと感じて観るか。
鑑賞後に色々な口コミを読むと、この映画、つまらないという意見も多いようです。
多数ある意見として「ご都合主義」というようなことが書かれていました。
あんなに回答者の人生と深く関わりのある問題が連続して出てくるなんて現実的ではない、最後の問題があれでは簡単すぎる、など。
確かにそうです。
この映画が無学の青年が巨万の富を得る、というサクセスストーリーとして作られただけだったら、私も「そんなバカな」と鼻で笑ったと思います。
でも、クイズに勝ち進むという展開はこの映画の主軸ではない
あれは、この映画で本当に伝えたいテーマをけん引していくためのベルトコンベヤーのようなものだと私は感じました。
では、本当に伝えたいテーマとは何なのか。
スラム街の子供達のドキュメンタリー、と観ることも出来ます。
クイズの展開は「そんなバカな」というリアリティのなさですが
スラム街のシーンは先程ご紹介した通り
最下層の暮らしの残酷さやヒリヒリするような熱気がリアルで、グッと胸を掴まれます。
思うこと、考えさせられること満載です。
が・・・
最後まで観て
私はこの映画「愛」がテーマなんだな、と感じました。
この映画を好意的に捉えている私でも「最後の1問」はちょっとなぁ・・・と言いたくなりますが
「愛」がテーマであれば、最後のオチをつけるためにはあの問題になるのは仕方ないのかな、とも思います。
(いや、でももう少しひねれなかったか?とやっぱり思うけど)
3.時間も距離も引き裂けない、「愛」は不滅か。
で、そのテーマ「愛」ですが
この映画では主人公のジャマール、兄のサリーム、幼馴染の少女ラティカの3人の間にいくつかのカタチで姿を現します。
まず、兄弟愛。
素直で真面目なジャマールと荒っぽく狡猾な面のある兄のサリーム。
しょっちゅうケンカもしますしサリームの粗っぽさゆえ仲違いすることもありますが
本当のピンチの時にジャマールを救ってくれるのもサリームなんですよね。
最後の最後も結局、サリームの弟への愛がジャマールとラティカを引き合わせます。
そして恋愛。
孤児同士として共に生活するようになったジャマール、サリーム兄弟とラティカ。
幼い頃は兄妹のように、少し大きくなると幼馴染として
または共に生きる仲間として
3人は様々な愛情という絆で結ばれていましたが
成長するにつれ、ジャマールとラティカの間には淡い恋心が芽生えていきます。
3人での逃亡に失敗し離れ離れになって消息が掴めなくなっても
再会してまた引き離されても変わることのない2人の想い。
「愛がある」
ギャングのボスに囲われて人生を諦めているラティカに危険を冒して近付き
一緒に逃げよう、と説得するジャマールが言うのですが
この時初めてきちんと、一人の女性としてラティカを愛しているのだということ、本人に伝えるんですよね。
シンプルなシーンでしたが、あの過酷な人生の中でもこんなに純粋に人を愛せるものかと、私は胸が熱くなりました。
でも結局、この決死の逃避行も失敗するんですけど。
そしてそれがクイズ・ミリオネアに繋がっていきます。
そう、ジャマールがクイズに出演した理由
それも「愛」なのです。
4.ラストはやっぱりこうじゃなきゃ!
映画の舞台はインドのムンバイ
登場人物は全てインド人
だからインドの映画かと最初思っていましたが、これはイギリス映画なんですね。
どうりでダンスシーンがないわけだ・・・
と思ったら
エンドロールで堪能出来ました!
駅のホームでの壮大なダンスシーン
さっきまで人生に苦しんでいたジャマール&ラティカを中心に
みんな笑顔、笑顔
子供時代を演じた子役のコ達が可愛く踊っているシーンでは
ホッとして思わず顔がほころびました。
ハッピーエンドにお決まりのダンスシーン
爽快感&感動いっぱいのエンディングで、最後まで本当に楽しませてくれます。
まとめ。
「本当のインドが見たいんですよね!」
これはとあるアメリカ人夫婦の観光客に向かって子供時代のジャマールが投げかけた言葉です。
私達もこの映画で「本当のインド」を知ることが出来るのでしょうか。
現実はこんなものではないよ、という意見
現実はこうではないよ、という意見
実際のインドを知る方から聞いてみたい気がします。
そして私達は
どの様な状況でも
どれ程月日が流れても
あのように「愛」を失わずに生きていけるものでしょうか。
それも、貫いた人から聞いてみたいものです。
ところでムンバイを舞台にした映画と言えば、数年前に観た「スタンリーのお弁当箱」も未だ印象深く残っています。
「スラムドッグ・ミリオネア」がお好きな方でしたら楽しめるかも。
ご興味あれば観てみて下さいね。