二つのプロマネ
プロジェクトマネジメント と プロダクトマネジメント
「プロジェクトマネジメント」と「プロダクトマネジメント」は、生み出す成果物に対する責任という意味では同じだと思うのだけれども本質的にはどうなんだろうか?
工業国としての日本は過去、良い品質の製品を作れば売れるジャパンクオリティが席巻した時代があった。「カイゼンで効率化」というオペレーショナルエクセレンスはプロジェクトマネジメントとの相性が良かった。
しかし今は、GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)に代表されるデジタルサービスが存在感を強め、「ユーザ体験」であったり「小さく始め、クイックに改良する」というサービス開発アプローチが良しとされている。これは、そのサービスの存在意義だったり、利用者のエンゲージメントだったりとプロダクトマネジメントの考え方と相性が良いのではないか。
その役割と曖昧さ
日本はまだプロダクトマネジメントの認知は低いと思うのだけれど、その理由は先に挙げたプロジェクトマネジメントが肝となる工業国としての成り立ちが主な原因か。それに「プロダクトマネジメント」という言葉が日本語として明確に定義されていないことも理解を妨げてはいないか?
(「プロダクト」は「製品」か?「マネジメント」は「管理」か?)
「プロダクトマネジメント」は、成果物が「物理的なモノ」(例:ウェアラブルデバイス)か、ソフトウェアサービスなどの「目には見えないモノ」なのかによっても開発の仕方が違うことがが、さらに複雑だ。
プロダクトマネジメントは、製品またはサービスを成功させるためのフレームワークとして「4P分析」(Product、Price、Place、Promotion)があり、プロジェクトマネジメントとしては製品またはサービスの「QCD分析」(Quality、Cost、Delivery)がある。そして、両マネジメントが一番争うポイントはリリーススケジュールだろう。
プロダクトマネジメントは、製品やサービスの「What・Why」に責任を持ち、そのプロダクトが生み出す価値や、世の中に対するインパクトを生み出すことを重視する。
一方、プロジェクトマネジメントは、製品やサービスの「When・How」に責任を持つ。予算やスケジュールの制約が中、着実にプロジェクトを進行させるかに心血をそそぐ。
このように、両マネジメントが目的とするところが違うため、「その製品・サービスをいつ、どのような状態でリリースするのかについての考えを合わせておく必要がありそうだ。
また、成果物が「物理的なモノ」の場合の開発アプローは「ウォーターフォール」になるが、WEBやモバイルアプリなど「目には見えないモノ」であれば「アジャイル」との相性が良い。
その為、マネジメントにおいてより複雑になのは、この両方を併せ持った開発をするような場合だ。
ハードウェア開発はウォーターフォールである
ハードウェア開発は、ソフトウェア開発のように簡単にはスクラップ&ビルドはできない。なぜならば、「物理的なモノ」を取り扱う場合において、その開発、生産プロセスは後戻りできない性質のもので、金型や生産ラインの構築に多額の費用が発生するからだ。
そしてそれが電子媒体であれば、技適や製造物責任法などの様々なレギュレーションやリーガルの申請手続きも発生する。
モバイル開発はアジャイルである
一方で、そういった物理制約の無いソフトウェアの「目には見えないモノ」は、実用最小限の製品(Minimum Viable Functionally)を作ることが良しとされている。デザイン思考を用い、ユーザ中心主義としての改良アプローチも推奨されてもいる。
プロジェクトマネジメントとは段取りの繰り返しである
プロジェクトマネジメントの知識体系としてPMBOKがあり、マネジメントフレームワークとして、5つのプロセスと10の知識エリアが定義されている。分かりやすく言えば、「首尾よく段取りよく着実に仕事を遂行すること」を目的にしたテクニックの集まりだ。
そして、この目的を妨げるものは悪であり、そのプロジェクトが地雷を踏んでダメージを受けないようにする為の回避策が一番重要だったりする。
//5つのプロセス
・立上げプロセス群
・計画プロセス群
・実行プロセス群
・監視・コントロール・プロセス群
・終結プロセス群
//10の知識エリア
・統合マネジメント
・スコープマネジメント
・スケジュールマネジメント
・コストマネジメント
・品質マネジメント
・資源マネジメント
・コミュニケーションマネジメント
・リスクマネジメント
・調達マネジメント
・ステークホルダーマネジメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
最新のシステム開発は、バイモーダルである
昨今のデジタルディスラプションというワードに代表されるデジタル化の波は激しく、企業の情報システム部門の存在意義を問われるようになっている。
以前から使っている業務システムや基幹システムなどを代表とする「開発予算の大きいウォターフォール開発」と、コンシューマ向けサービスの「アジャイル開発」が企業の中で混在するようになってきており、その両方をうまく使いこなすことが今後の課題だ。
「プロダクト」「マーケティング」「システム」が協力することで生まれるもの
「物理的なモノ」と「目には見えないモノ」の両方を生み出す開発アプローチとしての「バイモーダル」は、とてもハードルが高いものだと思うけれど、逆に言いえばそれが実現できるならば、相当の差別化要因にはなる。
実現のためのベストプラクティスはまだ見つからないが、「プロダクト」「マーケティング」「システム」の異なる思想同士の3つが鼎立・協調できると良いと言えそうだ。
リアルとデジタルの融合は、プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントの融合も強制する
製品やサービスを生み出し、成功させるための領域とステップを改めて整理してみると様々な文化思想の衝突が発生することが分かる。
しかしイノベーションを起こすための勘所は、「異分野・異思考・異スキル」の組み合わせが良いようであるから、これらがかみ合った時のインパクトは大きい。
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