Vol.15 カセットテープ(前編)
レコードと並んで70年代のぼくたちの音楽ライフを支えてくれたツールです。
レコードは高価で取り扱いにも気を使う「尊い」存在であって、それよりもずっと手軽に扱える便利で身近なものでした。
数百円で購入できて、しかも持ち運びのできるラジカセやウォークマン(これは80年代以降音楽のあり方を変えた革命的存在)で再生が出来る。生活を変えたといっても言い過ぎではないと思います。
そして「録音が出来る」というその特質はいろいろな使い方・楽しみ方を生みました。
工業製品が生活を変えるという70年代ならではの出来事だったように思います。
今回は70年代の青少年がどんな使い方をしていたのか紹介したいと思います。知っている人には当たり前、知らない人には「そんなバカな」というお話です。
①レコードからダビング
レコードは貸し借りが当たり前でした。カセットテープを使うことで自分の音楽ライブラリを充実させることができたわけです。
貸しレコード店なんていうのもありました。返却のときに「検盤」なんて作業もあってちょっとピリピリした雰囲気もあったものです。
自分のレコードも傷をつけたくない、すり減らしたくないということでテープに落として聴いたりしたものです。
②ラジオ放送を録音
「エアーチェック」と呼ばれていました。
そもそもはレコード販売のためのプロモーションとして流されていたはずなのですが、ラジオ放送を録音して音楽を楽しむというスタイルがなぜか成り立っていました。
アーティスト、レコード会社、放送局ともに直接の利益につながらないはずなのですが、でも長期的にみればこれが音楽産業の成長に大きく貢献したのだと思います。いい時代です。
特にFMは当時からステレオ放送でしたし、音楽専門番組もたくさんありました。
FM情報誌("FM fan"、"週間FM"、"FMレコパル"など)という雑誌もあり、番組表など放送の情報に加えてオーディオ機器の解説や音楽・アーティストの最新情報などが掲載されていました。そしてそれぞれについてる「付録」がもう一つのお目当てでした(後編で)。
③野外録音(生録:ナマロク)
ソニーの「カセットデンスケ」といわれるポータブルレコーダーを肩に下げ、片手にマイクをもって野外の音を録音するという趣味があり、これがなかなかポピュラーでした。
鉄道(まだ蒸気機関車があった)や飛行機、あるいは街の音など多種多様な素材を対象にしていたように思います。
ぼくの印象では「録音性能を追求する」という機材マニア的志向が強かったように思います。オタクです。
④オリジナル音源制作
ラジカセの内蔵マイクを使って自分の演奏や歌を録音することもできました。
2台のラジカセを使って多重録音をするツワモノもいました。いまで言うところのDTMです。
お気に入りの曲を集め、曲間に自らがラジオDJになりきって曲紹介をしたりして番組を作るなんていう人もいました。
誰かに聴かせるというよりも自分で楽しんでいたんだと思います。だってかなり恥ずかしいですよ、これは。
でもその後のプロたちもこれはやったはず。
すべてはこういう恥ずかしい作業から生まれてくるんだと思います。
後編はカセットテープにまつわるいろいろを紹介します。
つづく。
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