(#37)頚部姿勢クラスターと生物心理社会的因子および頚部痛との関連性~オーストラリアの青少年における研究~
是非こんな方に読んでほしい
この論文は、青少年の首の姿勢、首の痛み、及び関連する心理社会的要因に興味を持つ理学療法士や医師、また、姿勢と痛みの関係を研究する学術研究者に特に有用です。また、青少年期の姿勢に影響を与える要因を理解したい保護者や教育者にとっても参考になる内容です。
論文内の肯定的な意見
姿勢のクラスタを特定することで、特定の生物心理社会的プロファイルに関連した首の痛みや頭痛との関連が浮き彫りにされた。
スタディにおいて、あるクラスタは運動頻度の増加と関連し、別のクラスタは軽度から重度のうつ病のリスクが高かった。
論文内の否定的な意見
首の姿勢と痛みや頭痛との直接的な関連は示されなかった。
研究対象が17歳の青年期に限定されており、成人への外挿は慎重であるべき。
2次元写真による姿勢評価は、放射線検査に比べて正確さに劣る可能性がある。
論文の要約
Background
過去の研究では、首姿勢と首の痛みとの関連性について矛盾する結果が報告されています。一部の研究では、首姿勢と痛みの間に関連があるとされていますが、他の研究では関連が見られませんでした。この矛盾は、異なる姿勢測定法や、サンプルサイズ、評価条件などの違いに起因する可能性があります。
【過去の報告】
- Sagittal neck postureが首痛に関連しているという報告(Richards et al., 2016)。
- 前方頭位(FHP)が首痛や頭痛と関連しているとする臨床的信念(Grimmer-Somers et al., 2008)。
Method
本研究は、オーストラリアコホートに基づく横断研究で、17歳の青年1,108人が対象となりました。被験者には2次元写真撮影を用いた首姿勢の評価が実施され、クラスタ分析により4つの姿勢グループが特定されました。さらに、生活習慣や心理社会的要因、首痛および頭痛に関するデータが質問票を通じて収集されました。
姿勢は4つのクラスタに分類されました
直立姿勢
胸椎・頸椎の屈曲が少なく、頭の前方移動が最も少ない。
中間姿勢
胸椎の屈曲は1より大きいが、頸椎の屈曲は少ない。
前屈姿勢/頭前方姿勢
胸椎と頸椎の屈曲が最も大きく、頭が最も前に傾いている。
直立胸椎/頭前方姿勢
胸椎の屈曲は少ないが、頸椎の屈曲が多い。
Results
本研究では、1,108名の17歳の青年の姿勢を評価し、4つのクラスタに分類しました。これらのクラスタと生活習慣、心理社会的要因、首痛および頭痛の関連性が評価されました。各クラスタの特徴とデータは以下の通りです:
クラスタ1(直立姿勢)
胸椎屈曲角度: 平均10.4度
頸椎屈曲角度: 平均41.0度
頸胸角度: 平均149.3度
頭部の前方移動距離: 82.8 mm
このクラスタの参加者は、他のクラスタに比べて最も運動頻度が高かった(P < 0.001)。
クラスタ2(中間姿勢)
胸椎屈曲角度: 平均23.4度
頸椎屈曲角度: 平均44.3度
頸胸角度: 平均159.1度
頭部の前方移動距離: 83.3 mm
運動頻度はクラスタ1よりも低いが、統計的有意差は見られなかった。
クラスタ3(前屈姿勢/頭前方姿勢)
胸椎屈曲角度: 平均30.0度
頸椎屈曲角度: 平均56.6度
頸胸角度: 平均153.4度
頭部の前方移動距離: 100.3 mm
このクラスタの参加者は、軽度から重度のうつ病のリスクが最も高かった(P = 0.047)。
クラスタ4(直立胸椎/頭前方姿勢)
胸椎屈曲角度: 平均14.7度
頸椎屈曲角度: 平均50.2度
頸胸角度: 平均144.5度
頭部の前方移動距離: 96.5 mm
運動頻度が低く、うつ病のリスクは中程度だった。
首痛と頭痛の評価
219名(22%)が持続的な首痛を報告したが、これらのクラスタ間で首痛に統計的に有意な差は見られなかった(P = 0.773)。
140名(14%)が「座っていると首の痛みが悪化する」と報告したが、クラスタ間で差はなかった(P = 0.150)。
96名(9%)が頭痛を報告したが、クラスタと頭痛の関連性も見られなかった(P = 0.450)。
生物心理社会的プロファイルでは、3番目のクラスタ(前屈姿勢/頭前方姿勢)は、うつ病のリスクが高いことが示されましたが、首痛や頭痛との関連は示されませんでした。
Conculusion
この研究では、17歳の青年において4つの異なる首姿勢クラスタが特定されました。前屈姿勢/頭前方姿勢のクラスタは、軽度から重度のうつ病リスクが高いことが示されましたが、首痛や頭痛との関連は見られませんでした。その他のクラスタにおいても首痛や頭痛の関連性は認められませんでした。従来の「首痛が姿勢に起因する」という信念に対して疑問を投げかけ、生物心理社会的な視点から痛みを評価する必要性を支持する結果となりました。
このため、首痛の管理には、単に姿勢を修正するだけでなく、心理的および社会的な要因も考慮した包括的なアプローチが必要であると考えられます。
限界点
研究対象が17歳のみに限定されており、成人への外挿が難しい。
2次元の写真撮影による姿勢評価は、時間的変化や三次元的な姿勢を捉えることができない。
背骨全体の影響を考慮していない。
読者が得られるポイント
青年期の首姿勢は多様であり、生活習慣や心理社会的要因と関連する。
姿勢と痛みの関連性について、従来の考えに疑問を投げかける結果である。
ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。