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(#40)理学療法士による最適な座位および立位姿勢に関する認識


是非こんな方に読んでほしい

この記事は、姿勢矯正に興味のある理学療法士、運動指導者、そして腰痛や姿勢に悩む患者やそのケアに携わる医療従事者にとって有用です。特に、理学療法における姿勢教育の重要性や最適な姿勢に関する認識を理解したい方に向けた内容です。


論文内の肯定的な意見

  • 理学療法士の93.9%が、臨床での最適な座位・立位姿勢の教育を「非常に重要」または「かなり重要」と評価しました。

  • 立位姿勢として、前方頭位を避けた直立姿勢が98.2%の参加者に選ばれました。


論文内の否定的な意見

  • 理学療法士間で最適な姿勢に関する完全な合意が得られていません。

  • 強い証拠に基づく特定の姿勢が健康上の成果に直接関連するとは限らないという点が指摘されています。


論文の要約

Background

脊柱の痛みを抱える患者に対して、姿勢の評価や助言は理学療法士の一般的な業務です。しかし、最適な姿勢に関する説明は定性的なものが多く、具体的な数値に基づくデータは限られています。これにより、臨床現場での姿勢教育や矯正に対する理解にばらつきが生じる可能性があります。

【過去の報告】
- 最適な姿勢は腰椎の適度な前弯、軽度の胸椎後弯、バランスの取れた頭の位置を含むとされています(Kendall FP, 1952)。
- 長時間の前方頭位や胸椎伸展は脊柱症状の発生に関連することが示唆されていますが、明確な因果関係は証明されていません(Smith A et al., 2017)。
- 健康な人においても多様な脊柱アライメントがあり、必ずしも「理想的な」姿勢が症状の予防や改善に直結するわけではないことが示されています(Roussouly P et al., 2005)。


Method

本研究は、544名のギリシャの理学療法士を対象に、オンライン調査を実施しました。参加者は7種類の座位姿勢と5種類の立位姿勢から最適なものを選び、その選択理由を自由記述で説明しました。また、姿勢教育の重要性についても評価しました。

Results

本研究では、544名の理学療法士がオンライン調査に回答し、座位および立位姿勢の最適な選択について意見を提供しました。

● 座位姿勢に関する結果

  • 97.5%の理学療法士が、脊柱に中程度の前弯を保つ姿勢が最適であると回答しました。

  • 座位姿勢に関しては、以下の3つの姿勢が多くの理学療法士によって選ばれました。

  • 中程度の前弯を伴う座位:70.8%

  • 適度に背もたれを使用し、骨盤を前方に回転させた姿勢:19.6%

  • 完全に直立した背もたれのない姿勢:6.8%

  • 理学療法士がこれらの姿勢を選んだ主な理由として、「脊柱の自然なカーブの維持」と「筋肉の活性化」が挙げられました。

● 立位姿勢に関する結果

  • 立位姿勢では、理学療法士の98.2%が、前方頭位を避けた直立した姿勢が最も良いと回答しました。

  • 特に、頭が体幹の上に垂直に配置され、胸椎の過度な前弯を避けた姿勢が選ばれました。選択された立位姿勢の内訳は以下の通りです。
    ・胸部の過伸展を避け、自然な前弯を維持した姿勢:60.2%
    ・軽度の骨盤後傾を伴う姿勢:28.0%
    ・骨盤前傾と下肢の筋力バランスを強調した姿勢:9.9%

● 姿勢教育に関する評価

  • 93.9%の理学療法士は、最適な姿勢教育が臨床で「非常に重要」または「かなり重要」であると考えており、特に腰痛患者への姿勢教育が治療の鍵となるとされています。

  • 一般的に、理学療法士は「自然な脊柱のカーブ」や「筋肉の活性化」を根拠に、姿勢選択を正当化していました。


Conculusion

本研究の結果から、理学療法士の大多数が、中程度の前弯を伴う自然な座位および立位姿勢を最適と考えていることが明らかになりました。特に、腰椎の前弯を維持し、頭部が体幹の上にバランス良く位置することが理想的な姿勢として認識されていました。これらの姿勢は、脊柱の健康を維持し、筋肉のバランスを保つために重要とされています。
一方で、理学療法士間での意見の一致は必ずしも完璧ではなく、最適な姿勢に関する完全な合意は得られていませんでした。さらに、最適な姿勢が痛みや症状の改善に直接影響を与えるかどうかについては、強力なエビデンスが不足しており、実際の臨床効果についてはさらなる研究が必要で、臨床現場での使用には注意が必要です。

この研究は、姿勢教育の重要性を強調し、腰痛予防や治療における姿勢管理の重要な指針を提供していますが、特に、理学療法士や患者の間で長年定着している姿勢に関する固定観念が、治療やケアの方向性に影響を与える可能性があるため、柔軟な姿勢管理や柔軟なアプローチを取り入れる必要があります。具体的には、患者一人ひとりのニーズに応じて姿勢を適応させることで、より効果的な治療が行える可能性があります。


限界点

  • この調査はギリシャの理学療法士を対象としており、他の国や文化での姿勢認識とは異なる可能性がある。

  • 静的な座位・立位姿勢のみを評価しており、動的な姿勢や日常的な動作中の姿勢については言及していない。

  • 理想的な姿勢が患者の痛みや症状の改善にどの程度の影響を与えるかについて、直接的な証拠は不十分である。


読者が得られるポイント

  • 理学療法士の間での最適な姿勢に関する認識が明確になる。

  • 姿勢教育が重要視されていることを理解し、治療現場での活用方法を学べる。

  • 固定観念にとらわれず、個々の患者に最適な姿勢指導を行う重要性を再認識できる。


ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Korakakis V, O'Sullivan K, O'Sullivan PB, Evagelinou V, Sotiralis Y, Sideris A, Sakellariou K, Karanasios S, Giakas G. Physiotherapist perceptions of optimal sitting and standing posture. Musculoskeletal Science and Practice. 2018.
DOI:10.1016/j.msksp.2018.11.004

引用論文

Kendall FP. Muscles: testing and function with posture and pain. Lippincott Williams & Wilkins, 1952.

Smith A, Beales D, O'Sullivan P, Bear N, Straker L. Low Back Pain With Impact at 17 Years of Age Is Predicted by Early Adolescent Risk Factors. J Orthop Sports Phys Ther. 2017;47:752-762.

Roussouly P, Gollogly S, Berthonnaud E, Dimnet J. Classification of the normal variation in the sagittal alignment of the human lumbar spine and pelvis in the standing position. Spine. 2005;30:346-353.



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