複雑系に対峙するエンタープライズセールスの共通項
#営業アドベント2021 18日目の #note になります。
昨年は、「営業に必要な映画化の技術」と題したnoteを書きまして、たくさんの方に見ていただき、少し、営業の面白さを伝えられたかなと思っています。
さて、今回は、何を書こうか…。
今年は、私にとって、様々な営業の方に出会えた一年でした。
素晴らしい方がたくさんいることを感じるとともに、エンタープライズセールスの希少性についても強く感じました。実際、どこの会社も困ってますよね…。
21年の営業経験の中でお会いしてきた方々を振り返り、その共通項や、発生条件みたいなものを見いだせたらと思って、つらつら書いていきますね。
エンタープライズセールスを主語に書きますが、営業共通にインサイトがあるものになったらいいなと思います。
エンタープライズセールスは、何が難しいのか。
エンタープライズセールスとカッコつけて書いていますが、一旦ここではざっくり大手企業向けの営業をする人にしましょう。SMBとの違い…などについては、各Webサイトを御覧ください。
私なりに、大手企業の営業の難しさを作り出している環境要因を箇条書きに書くとこんな感じになります。
ようは、めちゃくちゃ複雑系なわけです。
SMBのお客様を相手にしていた段階から、エンタープライズにうつった場合に、途端に成果が出にくくなる企業/個人がいる理由は、上記のような背景にあります。
SMBは、どちらかと言うと、物事を考える/検討するにあたっての人数が少なく、一定複雑性が低い場合が多い。
そこまで作り込んできたオペレーションが通用しなくなり、オペレーション上も、個人パフォーマンス上もアップデートが必要になるわけです。
なので、こんなアクションが日常必要になります。
とても大変です。面倒です。
(だからこそ、お客様に向き合える脳味噌のリソース、考える時間を確保するためにも、組織だって仕組み化、効率化、生産性向上の支援環境を作ることが大事…これはまた別の話で。)
何より、重要なポイントはなにか。
大手企業を相手取った場合、前段のような面倒な環境が待っているわけですが、何が一番難しいかと言えば、
自社の論理、自身がこれまで持ち合わせた常識が通用しない。
という事です。表面で見えてくるものは、同じ人間。何も変わらないです。しかしながら、奥に流れるものが違うので、丁寧に深層を確認していく事が重要です。
なので、
この思考。健全に疑う事が大事なわけです。
複数の人、組織の思惑が関わる中で、何が事実なのか、何が本質的な事柄なのかを捉えていく。
では、『健全に疑い、深層を捉えに行くために、誰に何をどう問うのか』…と言う行為。これをどうすれば、できるのでしょうか。
極めて難しい。
こういった対象をなんと呼ぶかというと『複雑系』と呼びます。
複雑系とは、こんな風に書かれています。
難しい言葉ですが、まさに、大手企業との商談を表している表現だなと思います。経験ある方は、共感いただけると思います。
エンタープライズセールスは、複雑系の対象に対して、どう対応できるか…が肝ということですね。
ここに、私がお会いしてきたエンタープライズセールスの方々が持ち合わせている力の共通項が見えてきます。
過去に養った複雑系に対処する力
複雑系の大手企業に対しては、丁寧な継続的なコミュニケーションが重要です。
私が思うエンタープライズセールスのイメージは、こちらです。
このような世界観は、誰しもがパッと養えるものでしょうか。そんなことないですよね。非常に難しい事象だと思います。
ただ、成果を出しているエンタープライズセールスの方は、上記のような世界観を持ち合わせています。しかも、どの方に聞いても、なんらかその世界観を手に入れられる素養を養えた背景があるようです。
ここで、何名かの方の過去の経験をシェアします。
※これは採用観点でも、使えると思います。
Aさんの場合
学生時代から、ボランティアを行い、身体の不自由なこどもやその親、その施設を運営する組織など、日々の自身の環境とは全く違った人たちの人生や、苦労を知ることに。自身の環境だけが一般的ではないことを知るとともに、そういう方々とのやりとりを通じて、感性/人生観の違う方との人間関係の作り方などを学んでいった。
Bさんの場合
学生時代は、自分の好きな仲間と自由に過ごしてきた。あるとき、親族が経営する会社を引き継ぐことになった。地域性、職業柄から、それまで対話することのないような日本を代表する組織の方、寺社仏閣系の方、地元の大物などと対話をすることに。それまでの習慣、概念が破壊され、多角的な思考を得ることに。
Cさんの場合
幼い頃から、引っ越しを繰り返していたことで、様々な地域の文化や慣習を背景にした人々と対話する機会を得てきた。なので、毎回新しい環境に慣れる必要があり、相手の反応や、組織のルールなどをすぐ捉え、対処できるようになった。
Dさんの場合
幼少期、自分に自信がなく、人に対して慎重にコミュニケーションを取るところがあった。自分から近づいて、拒絶されたら傷つくので、自分から積極的にいかず、まずは観察したり相手の反応や感情を探ってから歩み寄ってみていた。臆病だからこそ、丁寧な対話や、相手を尊重した対話を会得。臆病だからこそ、更に経営学など得ることで、成果を自分のもとに。
いかがでしょうか。
共通事項がありますよね。
複雑系の環境に、強制的にも主体的にも飛び込み、一定期間以上内在して、そこで、無秩序な世界や、不合理な環境、理不尽なルールなどを体感し、対象の環境を俯瞰する力と、繊細さや柔軟性etcを培った。そしてそれを、ポジティブに消化している。
団体スポーツをしていた人なども活躍しやすいのは上記の要素にあるんだと思います。
まとめると、多様性を許容する力、新しい環境へ適用する力などになるんだと思います。
表面上は、見た目、性格や表現方法が様々ですので、全く違う生き物に見えるのですが、意外と聴き込んでいくと、なんとなく共通項があるんですよね。このインタビューに答えてくれた仲間たちに感謝です。
もう一つのスキル『リーダーシップ』
これに加えて、もう一点、重要な共通項があります。
リーダーシップです。
(最近、定期的にリーダーシップについて振り返る際に拝見するサイトのリンクをつけておきます。)
大手企業の検討プロジェクトは、長期的で、変動要素が多く、お客様もぶれていきがち。これに信念をもって、成果につなげるためにはリーダーシップが必要です。ただ、リーダーシップを適用するにも、そのモチベーションの源泉が必要になりますよね。
私は、主体性とか怒りなどとこれまで表現していたのですが、検索していたら、もっといい言葉に出会えましたので紹介します。
それは『義憤』です。
これは、夏野剛さんの『複雑系思考講座』と言う日立ソリューションズ様のサイトの記事に教えてもらいました。
私のこのnoteの価値は、これをシェアできたことかもしれません。2016年のものですが、今こそこれって感じがします。
是非第1回、第2回両方見てほしいですね。
極めて複雑系の時代。お客様自体も答えがわからない中でもがいている。でもなかなか変化ができない姿を見て、成果を出している人は、共通して、義憤を持っているなと思います。
『この状況ではいけない。必ず、あの世界に行くべきだ!』
この思いなしには、いくら相当なブランド、シェアを持った企業の営業だとしても、成果につながらない、と私は思います。
後からでも手に入れられるのか
今この世の中は、InstagramやLINEなど、自分の関わりやすい人とコミュニケーションを取れる時代。自分が関わりやすい人との対話を選択しがち。これを続けていくのでは、獲れないと思います。
正直、苦難の道ではありますし、簡単ではないですが、以下のような地道な作業をする事が大事だと思います。
足立さんのnoteのこぼれ話①も参考にしてください。
最後に
なんでこんな事、書いたかのかなぁと考えると、今年出会った営業の人たちが素敵な人達ばかりだったからなんでしょうね。
共通して、広い視座を持ち、主体性を持っていて、世の中を憂いている。なのに、ネガティブではなく、気持ちがいい人で、なにか変化を生み出したいと思っている方ばかりだった。
さらには日々の研鑽に余念がない。
そんな人たちがどんな方々なのかを紹介したかっただけなのかもしれません。
もっともっと、画一的なものだけではなく、物事の捉え方とか、個々の思考のあり方とか、そういったものにも注目される世の中になったらいいなぁと思います。
来年もいい年でありますように。 2021/12/18
桐原 理有
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