【活版】ミラノのLWSに行ってきましたー2
LWSの初日、会場のLeoncavalloに着いた時、一人の参加者をみつけて驚いた。「あれはセルゲイじゃないか!」
セルゲイはモスクワにPartisan Pressというレタープレススタジオを構えているロシア人のレタープレスワーカーだ。
今はロシアからヨーロッパにはそんなに簡単には入国できないはず。だからここでセレゲイに会えるとは思ってなかった。
「うあー久しぶり。元気そうだね!会えるとおもってなかったよ。ロシアからよくこれたね!」
「うん、みんなに会えてうれしいよ。実は、今はロシアには住んでないんだ。」
きくと、モスクワから家族と一緒に、スロバニアに移住したんだという。
スロバニアでレタープレススタジオをやっているマルコが、彼のスタジオの隣のスペースを紹介してくれたから、思い切って引っ越して新しいレタープレススタジオをオープンしたという。
「モスクワはこれからどうなるか分からないから・・・親切にもマルコがとても素敵な場所を紹介してくれたんだ。だから、思い切ってね。」
その日の夕方、セルゲイのプレゼンテーションがあった。

もともと、ショップカードや名刺を専門に印刷していた彼は、数年前偶然ロシア語の活字を手に入れた。ロシア語の活版活字なんて、ロシア国内でもほとんど手に入らない珍しいものだ。 そんな貴重な活字を手に入れたことがきっかけとなって、自分でデザインしたロシア語ポスターをPartisan Pressというブランドで作りはじめた。
なにしろ1種類の活字しかない。
彼がいいと思う言葉やフレーズを赤いインクで白い紙に印刷した。
そしてそれを、街のあちこちに貼ってまわった。
「だって、飾るところもなかったし、こんなことやっているよっと多くの人に知ってほしかったんだ。」
やがてそれが評判になり、希望者にポスターを販売することになる。
「印刷事業もうまくいっていたし、新しくPartisan Pressではじめたポスターも思いがけず評判がよくて順調だったんだ。」
そして、2022年、戦争が始まる。
「なにか自分にできることをしなくちゃっと思って、ポスターを作った。そしてそれを街に貼るだけじゃなくて、たくさん印刷して欲しい人には差し上げます。とSNSにアップしたんだ。」
「NO WAR」「これは始まりに過ぎない」「目をさまそう」
「そうしたら、SNSをみた女子学生がスタジオまでポスターをもらいにきてくれて、それを手に広場とった写真をアップした。 次の日、彼女たちは警察に捕まった。 すぐ釈放されたけど、びっくりしたよ。」

しばらくして、警察が僕のスタジオにもきて、僕自身も連行されてしまった。なにも悪いことはしてないから大丈夫だと思っていたら、びっくりしたことに、なんと有罪の判決がでて。 家には戻れたけれど、このままモスクワにはいられないっと思い始めたんだ。そんなとき、LWSで出会ったスロベニアのマルコが声をかけてくれて。ラッキーなことに、今はスロベニアでレタープレススタジオをスタートできた。」
以前と変わらず明るくて、話好きで、情熱いっぱいのセルゲイだったけど、これまで一度も住んだこともない、言葉も通じない異国で、奥さんとまだ小さなお嬢さんを連れて、1からスタートを切るなんてどんなに大変な決意がいっただろう。
今度チャンスがあったら、スロベニアのセルゲイのスタジオに遊びにいこう。
「スロベニアは本当に美しい国だよ。」とセルゲイも言っていたし。
