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老子道徳経第30章 『暴力は決して長続きしない。謙虚に生きるんだ。』


はじめに


老子道徳経と老子について
老子は紀元前6世紀頃の思想家で『老子道徳経』は『道(タオ)』と自然に従った生き方を説いています。簡潔な言葉で書かれた道徳経は、多様な解釈が可能で奥深く、自然と調和した豊かな人生の指針を得られます。このNOTEでは、メンターのシンと私ナオとの対話を通じて道徳経の理解を深め、新たな気づきを提供することを目指しています。

老子道徳経 第30章 シンとの対話

◯ナオ:
シン、今日は老子道徳経の第30章について教えてほしいんだ。前回までの話もとても興味深かったよ。特に、自然の流れに身を任せるという話は、最近仕事で少し無理をしていた自分にとって、すごく心に響いたんだ。

●シン:
それはよかった。無理をすることは、心身のバランスを崩してしまうことがあるからね。老子の教えは、無理をせず、自然体で生きることを教えてくれる。第30章も、その教えと深く関わっているんだ。まずは原文と日本語訳を見てみよう。

原文(老子道徳経 第30章)

以道佐人主者,不以兵強天下。其事好還。師之所處,荊棘生焉。大軍之後,必有凶年。善有果而已,不敢以取強。果而勿矜,果而勿伐,果而勿驕,果而不得已,果而勿強。物壯則老,是謂不道,不道早已。

日本語訳

道によって人君を補佐する者は、武力によって天下を制圧しようとはしない。そのような行為は必ず報復を受ける。軍隊の駐屯地には、いばらが茂る。大軍が通過した後には、必ず凶作の年が来る。武力を行使するのは、やむを得ない場合だけにとどめ、それによって天下を制圧しようとしてはならない。目的を達しても、誇ってはならない。目的を達しても、手柄を誇ってはならない。目的を達しても、驕ってはならない。やむを得ずに行った場合は、それ以上武力を行使してはならない。勢いの盛んなものは必ず衰える。これを道にそむくという。道にそむくことは早く滅びる。

◯ナオ:
前回、シンが「力ずく」というのは物理的な力だけでなく、精神的な力も含んでいるという話をしてくれたよね。それを聞いて、自分が普段、周りの人に自分の意見を押し付けてしまっていることに気づいたんだ。良かれと思ってやっているんだけど、相手にとってはプレッシャーになっていたかもしれないなと思って…。

●シン:
ナオがそう気づけたのは、素晴らしいことだね。自分の行動を振り返ることは、成長につながる大切な一歩だよ。老子の教えは、自分自身を見つめ直すきっかけを与えてくれる。この章では、特に「果而勿矜、果而勿伐、果而勿驕」という言葉が重要になってくる。「目的を達しても、誇ってはならない。目的を達しても、手柄を誇ってはならない。目的を達しても、驕ってはならない」という意味だ。

◯ナオ:
「誇らない、驕らない」というのは、謙虚さの大切さを教えているんだね。

●シン:
そう、謙虚さは、人間関係を円滑にするだけでなく、自分自身の成長を促す力にもなる。例えば、何かを成し遂げた時に、それを誇ってしまうと、そこで成長が止まってしまうかもしれない。でも、謙虚でいれば、常に学び続けることができるんだ。

◯ナオ:
なるほど。あらためて私も、これからはもっと謙虚な気持ちで、周りの人と接するように心がけようと思う。

●シン:
それは素晴らしい。では、もう少し分かりやすく意訳してみようか。

意訳
道に従って人々を導く者は、力ずくで世の中を支配しようとはしない。力ずくで何かをしようとすれば、必ず反動が来る。争いの後には、荒廃が残る。大きな戦の後には、人々は苦しむ。何かを成し遂げても、それを誇ったり、自慢したりしてはいけない。やむを得ず何かを成し遂げたとしても、それ以上無理をしてはいけない。勢いが盛んなものは必ず衰える。これは自然の摂理だ。自然の摂理に逆らうと、早く滅びてしまう。

◯ナオ:
意訳を読んでいると、自然の摂理に従うことの大切さが、より深く理解できる気がするよ。

●シン:
そうだね。老子の教えは、自然界の観察から得られた知恵に基づいている。自然界は、常に変化し、循環している。その流れに逆らうことなく、調和することが、長く続く秘訣なんだ。では、ここから深めていこう。具体的な問いを立ててみよう。

問い1:「不敢以取強」とはどういう意味だろう?

●シン:
「不敢以取強」は、「それによって天下を制圧しようとしてはならない」という意味だ。これは、武力だけでなく、あらゆる「強いる」行為を戒めている。例えば、経済力や権力を使って、他者を支配しようとするのも、「取強」と言えるかもしれない。

◯ナオ:
力を使って何かを奪い取ろうとするのは、結局良くない結果をもたらすという意味だろうね。

●シン:
その通り。力で得たものは、いつか力によって失われるかもしれない。本当に大切なものは、力ではなく、信頼や尊敬によって築かれるものなんだ。

問い2:「物壯則老」とはどういう意味だろう?

●シン:
「物壯則老」は、「勢いの盛んなものは必ず衰える」という意味だ。これは、自然界の普遍的な法則を表している。例えば、若々しい木も、いつかは老いて枯れていく。これは避けられないことだよね。

◯ナオ:
人間も自然の一部だから、同じように衰えていくのは当然のことだね。

●シン:
そうだね。だから、若い頃の勢いに執着するのではなく、年齢を重ねるごとに変化していく自分を受け入れることが大切なんだ。

問い3:この章は、ナオの今の状況にどのように役立つだろう?

●シン:
ナオは、周りの人に自分の意見を押し付けてしまっていることに気づいたと言っていたね。この章の教えは、ナオにとって、とても役立つかもしれない。自分の意見を伝えることは大切だけど、相手の意見も尊重し、無理強いしないことが大切なんだ。
ナオ、どうだい?老子の言葉は、深く考えれば考えるほど、色々な意味が見えてくるだろう?この第30章が伝えたいことを簡単にまとめると、次のようになるかもしれないね。

力ずくで何かをしようとせず、自然の流れに身を任せること。
何かを成し遂げても、誇ったり、驕ったりしないこと。
謙虚さを持ち、周りの人と調和すること。

◯ナオ:
今日は、自分の行動を振り返る良い機会になったよ。シン、本当にありがとう。

●シン:
それはよかった。どう?ここらでお茶にしない?お茶を入れるね。こうしてナオと話していると、私も色々なことを考えさせられるよ。それでは、またね!

おわりに

謙虚さとは?なぜ大事なのか?また、あらためて考えるきっかけになった章でした。老子はやはり長期的な視点、長い長い視点のもちぬしだから、ぱっと考えただけでは分からない事もおおいのです。奢ったり誇ったりしている、増長しているひとは、長続きしていない気はします。どこかで帳尻が合わさってくるように、自然な流れに浄化されてしまうのかもしれませんね・・・・

お読みいただき ありがとう!

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