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老子道徳経 第31章「あなたの内面に平和を」

●シン:やあナオ。今日はどんな話をしようか。

◯ナオ:
シン、今日は老子道徳経の第31章について教えてほしいんだ。引き続いて争い、戦争がテーマだね。

●シン:
争いについて考えることは、平和について考えることにも繋がるからね。第31章は、まさにその争い、特に武力について深く掘り下げている章なのだよ。まずは原文と日本語訳を見てみようか。

原文(老子道徳経 第31章)
夫佳兵者,不祥之器,物或惡之,故有道者不處。君子居則貴左,用兵則貴右。兵者不祥之器,非君子之器,不得已而用之,恬淡為上。勝而不美,而美之者是樂殺人。夫樂殺人者,則不可以得志於天下矣。吉事尚左,凶事尚右。偏將軍居左,上將軍居右,言以喪禮處之。殺人眾多,則以哀悲泣之,戰勝以喪禮處之。

日本語訳
すぐれた武器というものは、不吉な道具である。
人々はそれを嫌う。
だから、道のある人はそれを用いない。
君子は平時には左を上位とし、軍事の際には右を上位とする。
武器は不吉な道具であり、君子の用いるべきものではない。
やむを得ず用いる場合は、静かで淡々とした態度を最上とする。
戦いに勝っても、それを美しいと思ってはならない。
それを美しいと思う者は、人を殺すことを楽しむ者である。
人を殺すことを楽しむ者は、天下を治めることはできない。
めでたい事は左を上位とし、不吉な事は右を上位とする。
副将軍は左に位置し、大将軍は右に位置するのは、喪の礼によって事を行うことを示している。
多くの人を殺した場合は、悲しみと哀悼の念をもってこれに臨み、戦いに勝った場合も喪の礼によってこれに臨むべきである。

◯ナオ:
前回、「勝っても喜んではいけない」という言葉が印象的だったと言ったよね。今日は、この章全体を通して、老子が最も言いたいメッセージは何なのかなぁ?

●シン:
老子がこの章で最も言いたいメッセージは、まさに「争いを避け、平和を尊ぶこと」なのだよ。武器は不吉な道具であり、人々を傷つけ、不幸をもたらすもの。だから、できる限り使わない方が良い。やむを得ず使う場合でも、感情的にならず、冷静に、必要最小限の力で対処すべきだという。そして、勝ったとしても、それを喜んではいけない。なぜなら、そこには必ず犠牲があり、悲しみがあるからだ。老子が生きた時代には、多くの争いが起こっていたからだね。

◯ナオ:
争いを避けるためには、具体的にどうすれば良いんだろう?

●シン:
老子は、争いを避けるためには、日頃から周りの人と良好な関係を築くことが大切だよ。相手を尊重し、理解しようと努めること。自分の意見を押し付けるのではなく、相手の意見にも耳を傾けること。そうすることで、無用な争いを避けることができるのだよ。

◯ナオ:
それは、人間関係全般にも言えることだね。

●シン:
その通りだね。老子の教えは、国家間の争いだけでなく、日常生活におけるあらゆる人間関係にも応用できるよ。例えば、家族や友人との間でも、意見の食い違いから喧嘩になることがあるかもしれない。そんな時、老子の教えを思い出してみてほしい。感情的にならず、冷静に話し合うこと。相手の立場になって考えること。そうすることで、関係が悪化するのを防ぎ、より良い関係を築くことができるのだよ。

◯ナオ:
なるほど。争いを避けるためには、自分自身の心の持ち方もかなり重要になるって事だよね。

●シン:
うん、老子は、内面の平和が、外側の平和に繋がると考えている。自分の心をコントロールし、感情に振り回されないようにすること。謙虚さを持ち、驕らないこと。そうすることで、周りの人とも穏やかな関係を築くことができるのだよ。

◯ナオ:
今日の話で、老子の教えが、単に過去の戦争について語っているだけでなく、現代の私たちにとっても非常に重要なメッセージを伝えていることがよく分かったよ。

●シン:
それはよかった。老子の言葉は、時代を超えて、私たちに深い気づきを与えてくれるのだよ。では、最後に、この第31章のメッセージを簡潔にまとめてみよう。

*   争いはできる限り避けるべき。
*   やむを得ず争う場合でも、冷静に対処し、勝利を誇らない。
*   日頃から周りの人と良好な関係を築き、内面の平和を保つ。

この三つが、この章の核となるメッセージだと言えるだろうね。

◯ナオ:
これは、現代では、あらゆる人間関係や、トラブルにも応用できそうだよ。やむを得ない場合以外、みだらに攻撃することは避ける。言葉の暴力もね。言い方や接し方も。
ただし、どうしても自分に対しての暴力や暴言に及ぶなどした場合はどうするのか。仕方なく暴力以外の法的な手立てや、一時的に逃げるなどして対処すること。どうしようもない事も時にはあるからね。悲しいけれど・・・。
よくわかったよシン。ありがとう。

●シン:
それはよかった。どう?ここらでお茶にしようか。このテーマは常に重いものだよ・・・

おわりに


老子が戦争について語っている章ですが、平和ボケした日本人にとってもこの章については考えさせられるものがあります。争いというのは多かれ少なかれ、身に降りかかる事はありますが、そのような時、どのような心構えでいられるかが試されます。また、世界中で未だに人間同士が戦い続けているのは、いったい何の為なのだろうか?解決策はないのだろうか?それに対して老子は一つの答えを既に出しています。

最後までお読みいただき ありがとう!

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