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【新刊発売のお知らせ】『歴史を動かした「決戦」の世界史』の読み方!!

世界史講師のいとうびんです。

……さて、のっけから私事で恐縮ですが、

この度!
2024年11月20日

新刊  『歴史を動かした「決戦」の世界史

が発売となりました!!

というわけで、
今回はこの『歴史を動かした「決戦」の世界史』の内容の簡単な紹介と、
さらにもっと楽しむための「読み方」をご紹介します!

ではでは、さっそく見ていきましょう!!




1.今回はどんな本なん??


1-1.コンセプト

今回の『歴史を動かした「決戦」の世界史』(以下"本書")は、
一言で言えば「軍事史の入門書」として位置付けた本になります。

さて、なぜ今回のテーマに軍事史を選んだのかと言いますと、
そもそも私がかつて軍事史を専攻していたということもありますが、
軍事史という分野そのものが持つ、独特の魅力を紹介したいという動機も大きいです。

この点に関して、本書の冒頭から抜粋しますと、

 戦争をはじめ、歴史における軍事を扱う学問は「軍事史」と呼ばれますが、一口に軍事史といっても戦争史、戦略史、戦術史、軍事技術史など、その包括する範疇は多岐にわたります。こと軍事史においては、「軍事」の観点に立つか、「歴史」の観点に立つかによって、同じ事象であっても論点や争点がかなりかけ離れていることも珍しくはありません。実際に、近代以降だけで見ても、軍事史は軍人(ないし軍事研究家)が扱うか、歴史家が扱うかによって、手法や論点、依拠する史資料の扱いに至るまで、まるで違う考察を見ることも珍しくはありません。

『歴史を動かした「決戦」の世界史』「はじめに」より

……これは必ずしも軍事史に限ったことではなく、歴史学では往々にして、多面的な観点からの考察が求められます。

とはいえ、かくいう私が歴史畑の出身ということもあり、
本書は「歴史の視点から軍事史を捉え、かつ軍事史に触れる入門書としての役割を担保する」ということを念頭に置いて書いたものです。

したがって、いわゆる軍事史研究や考察の常道においては、亜流になるでろうアプローチが目立つかもしれませんが、
この点は上記のように「歴史の視点」から捉えた結果だと考えていただけますと幸いです。

本書では世界史における各時代・地域での「決戦」を設定し、
その決戦の勝敗を分けた様々な「決断」から、「軍事史」を読み解いていこうというものです。


1-2.章構成と概要

本書の構成は、

第Ⅰ章 古代の戦場
第Ⅱ章 中世の戦場
第Ⅲ章 近世の戦場
第Ⅳ章 近代の戦場
第Ⅴ章 現代の戦場

という5部構成になっています。
各章ではそれぞれテーマを設けており、以下のようになっています。

・第Ⅰ章 古代の戦場
 
……戦争の黎明と古代の戦闘技術
・第Ⅱ章 中世の戦場
 
……騎馬戦力の台頭とヨーロッパにおける「歩兵の復活」
・第Ⅲ章 近世の戦場
 
……火砲の普及と近代戦争の幕開け
・第Ⅳ章 近代の戦場
 
……戦争の「近代化」――軍事組織の刷新=師団と参謀本部、焦土戦
・第Ⅴ章 現代の戦場
 
……総力戦と「冷戦」、次世代の戦争の可能性


また、本書では各章のテーマにそぐう戦闘の事例を紹介し、
これを「決戦」と位置付けています。

とはいえ、本書が意味するところの「決戦」は、
一般にイメージするものとはやや異なり、

 したがって、本書で言及する「決戦」とは、
 
 ⑴ 「殲滅と攪乱」が効果的に機能し勝利に貢献した戦闘
 ⑵ 戦争目的に最大の貢献を為した(あるいはそれに準じる)戦闘
 ⑶ 何らかの技術革新をもたらした戦闘

のいずれかであると定義します。

同上、「序章」より

すなわち、単なる大規模な会戦というだけでなく、
その後の影響を含めて「歴史を動かした」と見なせるものを選抜した、ということになります。

本書に収録されている決戦は、以下の24からなります。

・第Ⅰ章
 メギッド(前1457)……トトメス3世のパレスティナ遠征
 カンナエ(前216)……第2回ポエニ戦争、ハンニバルの猛攻
 アレシア(前52)……カエサルのガリア戦争
 アイゴスポタモイ(前405)……ペロポネソス戦争の終盤
・第Ⅱ章
 カーディシーヤ(636)……イスラーム勢力による「アラブの大遠征」
 チヴィターテ(1053)……ノルマン人の南イタリア進出
 襄陽・樊城(1268~73)……モンゴル(元)による南宋遠征
 ラウペン(1339)……西スイス支配をめぐる大規模会戦
・第Ⅲ章
 パヴィア(1525)……第3次イタリア戦争の決勝戦
 鄱陽湖(1363)……元末の戦乱と朱元璋の采配
 ジョーン・モド(1696)……ジューンガルと清朝の覇権抗争
 ケベック(1759)……フレンチ・インディアン戦争の決戦
・第Ⅳ章 近代の戦場
 アウステルリッツ
(1805)……ナポレオン戦術の最高峰
 ナッシュヴィル(1864)……南北戦争の転換点
 ケーニヒグレーツ(1866)……普墺戦争の決定打
 呉淞(1842)……アヘン戦争の終盤
 イサンドルワナ(1879)……ズールー戦争最大のイギリスの苦闘
・第Ⅴ章 現代の戦場
 ガリポリ戦役
(1915~16)……第一次世界大戦、オスマン帝国の抗戦
 ヴェルダン(1916)……第一次世界大戦最大規模の戦争
 スターリングラード(1943)……第二次世界大戦、独ソ戦の転換
 硫黄島(1945)……「海兵隊史上で最も高い代償」
 テト攻勢(1968)……ベトナム戦争における大規模攻勢
 湾岸戦争(1991)……「砂漠の剣作戦」
 キーウ(2022)……ウクライナ戦争と無人戦争の可能性

「決戦」とはいえ、上述のコンセプトから
あえて無名とされる戦闘を多く採用しました。

また、本書は前作『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』以上に、
戦闘の解説などで図版を多用していることも特徴です!

そのため、本のサイズも前作よりやや大きい、A5判となっています。

1-3.どんな読者におススメ?

軍事史や歴史に興味がある方は言うまでもありませんが、
「ありきたりの概説書はちょっと飽きたな……」という方にはぜひおススメしたいです。

とりわけ、前作『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』をご購読いただいた方は、より一層楽しんでいただけると思います!
と言いますのも、本書は『「世界史」の読み方』でいう第Ⅲ部と同様のスタンスで書かれたものであり、
前作の第Ⅲ部の第2章でモヒの戦いを解説しましたが、これをほぼ踏襲したものと考えていただければ、イメージしやすいかと思います

軍事史という、まだ見ぬ歴史の一面を、ぜひご堪能ください!!




2.より楽しむための「読み方」


では、本書をより楽しむための「読み方」のご紹介を!


2-1.おススメの読み方は「好きな章から」

本書は1章(あるいは1戦闘解説)ごとに完結するオムニバス形式で書かれています。
ですから、どの章から読んでも、基本的には問題ないようになっています

もちろん、冒頭から通して読んでいただくことも、まったくもって異存はありません。
とはいえ、まずは目次に目を通していただき、
「この戦闘は聞いたことがある」「これはなんだかテーマが面白そう」といった、ご自身の興味関心に沿って読んでいただくという選択肢も、強く推奨いたします!


2-2.この本を読了したら……

前作『「世界史」の読み方』もそうですが、
本書もまた、専門書への橋渡しとしての役割も自認しています。

したがって、本書でさらに軍事史への関心が高まった方は、
ぜひ専門書も含めた、関連する書籍に手を伸ばしていただきたいと思います。

関連書籍を探す手っ取り早い方法は、本書の参考文献一覧です。
本書を書くにあたり参考とした諸文献、
とりわけ日本語の文献はいずれも読み応えのある(それでいて必ずしも難解とは限らない)ものばかりです

関連書籍に手を伸ばすことで、さらに頭の中で情報が網羅的に体系化されていくことでしょう。
前作もそうですが、本作はそうした体系化の土台を提供するプラットフォームに過ぎないのです。
であるからこそ、読者の皆様にはさらに先に進んでいただきたいと思うのです。




***




いかがでしたでしょうか。
今回はテーマが設定されている以上、前作よりさらに深掘りされた内容となっています。
歴史のまだ見ぬ一面との邂逅に、
また、前作『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』の続編としても、
本書をお手に取っていただけましたら幸いです。


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伊藤 敏《世界史講師》
読んでいただいただけでも、充分嬉しいですよ!