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よーく考えて投票した彼女へ。あきらめないで、次も投票に来てね。
これまで市役所に入って25年、育児休業期間以外は選挙事務をしてきました。その選挙事務の中でも、いえ、これからも含めた選挙事務人生の中でもおそらく一番印象に残るだろう出来事が、10月31日の衆議院総選挙でやってきました。
あまりの感動に、どうやって書き始めようか、迷いに迷っています。
投票締め切り1時間前に現れた彼女
彼女は夜の7時前に、投票会場に一人でやって来ました。美人で少し派手な感じのする若い女性で、ちょうど職員は晩ごはんのために入れ替わりをしているときでした。私が選挙人名簿で確認作業を担当していたときです。
彼女に「○○○○(お名前)さんですね?」と話しかけると、すぐに私に対して質問が始まりました。
選挙の入り口で何を確認しているのか。
「そうですけど、なにを確認したんですか?」
そうですよね、入り口でなぜ名前を呼ばれるのか、気になりますね。
あれは、期日前投票を済ませていないか(一人で何回も投票していないか)を確認することや、その会場で投票する権利がある人なのかを確認しています。
名前を呼ばれると、本人なら躊躇なく「はい」と自信を持って返事するだろうという前提のもと、お名前をお呼びしています。
お知らせ券を持っていること、自分の名前ならすぐに返事してしまうだろうということ、手元の名簿にある生年月日や性別を参考に、本人だろうなぁと推測し、二重選挙をしていないか確認しているだけです。
その後、投票用紙を渡した後は、その選挙人がどんな行動をしたのか、私たちは選挙の秘密を守ります。誰が選挙に来て来なかったか。これは守秘義務で、誰にも言いませんし何にも利用しません。ただ、目の前のこの人に投票用紙を渡していいのかを確認しているだけです。
彼女の質問が約1時間続く。
これを皮切りに、約1時間、投票会場で彼女の質問が始まりました。
ここからは、彼女が私にした質問を、私の記憶にある限り、記しておきたいと思います。
「タレントさんがSNSで『選挙に行って投票しよう』と呼びかけているから来たんです。いったい何をしたらいいんですか?」
「この人たちの中から一人を選ぶんですか?どれも私の思うことを言ってないんですけど。」
「消費税をなくして欲しいんです。そう言っている人はだれですか?」
「同性婚を認めたいんですけど、なぜ同性婚は認められていないんですか?」
「どれを書いたら同性婚を認めることになるんですか」
「夫婦別姓もいいと思うんです。名前なんて問題じゃないから。選ぶくらいいいやんと思うんですよね。どうしたらいいんですか?」
「衆議院議員って何ですか?」
「安部さんを辞めさせたいんです。アベノマスクが許せない。どうしたら辞めさせられますか?」
「えーーー、一番エライ人って安部さんじゃないんですか?は?スガ?キシダ?知らない!誰?」
「名前を選ぶのと政党を選ぶのと、どう違うんですか?」
「総理大臣がだれになるか、どうやって決まるんですか?」
「どの政党の言っていることも私の思っていることとちょっと違うんです。どうしたらいいですか?」
「政党から選ばれるって、どうやって?順位?」
「もう一度アプリで自分の考えとチェックしてみていいですか?・・・プライマリーバランス?・・・国債?・・・直接税?・・・コロナ対策?・・・地球温暖化対策?・・・温室効果ガス?・・・私の考えは革新?」
「この人、会社に来たんですけど、全然興味なくて。会社の偉いさんがいいっていうから、いやなんです。」
「私が選挙に来たってことで、何か変化はあるんですか?」
彼女はよく考えた結果、比例区選挙だけ投票
結局、彼女は小選挙区は棄権しました。誰の主張も自分とは違うと判断したようです。
政党名を入れる比例区は、私が後は自分で考えて、自分で書いてねと言って離れてからも5分は記載台でうなっていました。
そしてやっとのことで何かを書き終え、投票箱に入れました。
パチパチパチパチ
27才の彼女は生まれて初めての選挙を、本当に真剣に悩んで悩んで1票を投じました。
「この結果はどうやってわかるんですか?」
・・・報道で結果を知って、彼女が失望していないことを心から願います。
彼女は、日常生活をおくりながら、自分がどういう選択をすべきか考え、勇気を持って投票会場に来たし、いい加減な気持ちではなく真剣に投票という行動を考えられていました。
勇気を持って、変えたいんですと言ってやってきた彼女。
どうか、どうか、彼女のような人が、がっかりしない、あきらめない政治がありますように、心から祈ります。
私はというと、一生懸命に自分の考えを行動にうつそうとする彼女を少しでも手伝うことができて、嬉しかったです。
立会人さんも「いいことでしたね~」と言ってくださいました。
発言が投票誘導にならないように、言えること、言えないことを考えながら答えていくのは、とても楽しかったです、脳トレみたいで。
私は投票管理者で、実は最後の1時間はものすご~く確認作業がたくさんあるんです。
彼女の家庭教師的話し相手になっていたので、確認事務や片付けができませんでした。
一緒に働いていた職員が協力して作業をしてくれたことで、ミスなく時間通りに無事に運営することができました。これには感謝しかありません。
彼女はカクシン。
彼女「すごいですね、何でも知ってるんですね!」
ありがとう。たぶん、中学校の社会の先生も教えてくれてたと思う。
彼女「私って、カクシンなんですね♪」
アプリの選択肢で、「革新的・やや革新的・どちらでもない・やや保守的・保守的」が出てきたとき、彼女は「何これ?」とまたまたまた立ち止まりました。
私が、「私が感じるところでは、あなたは革新的だと思いますよ」と言ったら、ものすごく嬉しそうにしていました。
何回も「私はカクシン♪」と言っていました。かわいい。
これからも、あきらめずに投票に通ってほしいです。
ただでさえ人口の少ない若年層、もし仮に全員が投票しても高齢世代の50%が投票に行ってしまうと若者世代は数ではかないません。
がんばれ、彼女!がんばれ、若い人!
ちなみに。
初めて選挙に行った高3の息子は、
選挙結果にがっかり無力感・・・というのが感想のようです。