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柿澤勇人の激動の1年間。『スクールオブロック』『オデッサ』 『ハムレット』その稽古中の素顔に迫った

 2024年2月、第49回菊田一夫演劇賞を受賞するなど、舞台での活躍目覚ましい柿澤勇人がキャリア初となる写真集を刊行した。
 
気になる中身は、2023年夏に上演されたミュージカル『スクールオブロック』から、2024年の舞台 『オデッサ』 『ハムレット』と過酷な主演作に挑み続けた怒涛の1年間の舞台裏に密着した内容に。
 
今回は写真集の話題を中心にインタビュー。
怒涛の1年について振り返ってもらうと同時にプライベートでの素顔にも迫った。

◾️稽古中の写真が凝縮された1冊に


——意外にもキャリア初の写真集とのことですが、発売が決まった時のお気持ちは?

 
正直、写真集を出すなんて思いもしませんでした。
だから最初は「嫌だ」って言ったんです。(笑)
ただ、この1年を通して3つの舞台をやって、その姿を撮ってもらうというコンセプトだと聞いて「それならいいね」って。
 
——稽古中のお写真などを見ての感想はありますか?
 
普通の写真集だったら「カメラがある」ことを意識しそうじゃないですか。
でも、そういうのを一切意識せず撮られていたので「こんな表情してるんだ」って驚いたものが多かったですね。板の上の僕しか知らない方が「楽屋ではこういう顔をしているのか」と楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。
 
――カメラを全く意識していないカットも多いんですね。
 
もうね、意識する暇もないぐらい大変な作品ばかりだったんです。
だから稽古にずっと集中していて、正直気づけなかったんですよね。

◾️写真を見返すと思い出す、それぞれのしんどさ

――出来上がった写真集を見て、稽古中のことを思い出すものでしょうか?
 
そうですね。どの作品も大変さの度合いは違ったんですけど、写真を見ていろいろなことを思い出します。
 
例えば『スクールオブロック』は、ギター初挑戦で、しかもお客さまの前で弾かなきゃいけない。
役柄としては、ロックを愛する破天荒な先生だったので、自分とはかけ離れた役だったんです。
ちょっとジャンプアップしないとできない役という意味で大変でした。
 
『オデッサ』は鹿児島弁と英語と標準語を使いこなす役。
でも、鹿児島弁も英語も知らないし、普段使わない言語でのお芝居へのプレッシャーがすごくありました。
芝居の内容的にも、常に頭を回転させていたので、もうスパーク寸前、頭が本当に破裂しそうっていうのを1時間半ぶっ通しで、1回も袖にもはけられず、常にワナワナして「なんとか物語を紡がなければ」と思っていました。
 
『ハムレット』は3時間半、しゃべりっぱなし、叫びっぱなし。
感情を駆使して……いや、駆使というか、行ったり来たりしなきゃいけない役だったので、それがそのまんま表情に出ているなと写真を見て感じました。
体型もずいぶん違いますよね。
 
――そうなんですね!
 
このとき人生で1番体重が落ちているときだったんですよ。
あと、2キロ落ちちゃったら、SOSを出してくれってトレーナーさんに言われていたくらい。
今より5キロも軽かったんですよね。
当時はあまり自覚していなかったんですけど、今見るとあばらも見えちゃっているし、痩せているなと思います。
 
――それは絞ろうというよりも、落ちてしまった?
 
絞ろうとも思っていないし、トレーニングも全くしていませんでした。
ご飯を食べるようにはしていたんですけど、本当に大変な舞台だったんです。
絶対に倒れないようにしようということだけを意識していました。改めて写真を見ると、頑張ってたんだなって思いますね。
 
――1年を振り返って、自分の中で大きく変化したなと気づくことはありますか?
 
いや、わかんないな。(笑)
周りからは「この作品やったら変わるよ」とか言われてたんです。
でも、自分の中で明確に「こう変わった!」っていうのは今のところないんですよね。
本当に「よく乗り切ったな」って思うくらい。ただ、そう思うのも大抵1週間くらいで、あとはいつも通りの日常が続いていく感覚です。
もしかしたら、もうちょっと時間が経った後で「やっぱ変わっていたわ、あれ以降…」ってなるんじゃないかなと思います。

◾️唯一記憶にないのは“飲酒”カット

――写真集の中には、終演後のカットもありますね。
 
カメラマンの黒沼さんが、袖とか袖の廊下で待っていてくれて。表情が柔らかいものが多くて、やっぱり終わった瞬間が一番ほっとしているんだなと思いましたね。舞台前は毎回「倒れるかもしれない」「セリフを噛むかもしれない」「セリフが飛ぶかもしれない」「怪我するかもしれない」っていろんなことを考えているし、1回1回が勝負だから、戦闘モードの顔をしているんですけど、それとは真逆だなって。
写真を見て、想像以上にほっとしているなと気付きました。
 
――たしかに。疲れているというよりも、安堵という言葉がふさわしいですね。
 
そうですね。どっと疲れが出るのは全部終わってから。
毎日舞台が終わっても、また次の日がやってくると思うと、ほっとできるのは束の間ですけどね。
 
――もう1つ柔らかな表情で言うと、お酒を飲んでいるお写真も良い表情をしています。
 
この日、飲みすぎちゃって、まったく覚えていないんです。
この写真集で唯一覚えていないのがお酒を飲んでいる写真(笑)。
 
――そんなにリラックスされていたんですか?
 
いつも僕がお世話になってる飲み屋ということもあって。
普段から一人でも行くし、友達とも行くし、マネージャーとも行くしっていうお店なんですね。だから「すごく自然な表情で飲んでるんだな」って思いましたね。
どんな話をしてたんだろう……全然覚えていないな。(笑)
 
――気を許せる環境だったんですね。飲みすぎて覚えてないことってあるんですか?
 
しょっちゅうです(笑)。
強くはないんでしょうね。いつも親友とかマネージャーとかと飲むときは、一緒に帰ってくれるということもあって、安心感があるから調子に乗っちゃうんですよ。
ただ、迷惑はかけていないみたいで「何話してた?」って次の日聞くと「幸せそうだったよ」ってだいたい言われます。(笑)
 
――そんな瞬間が見れるだなんて、ファンの方にはたまらないですね。
 
ぜひ注目してみてください。(笑)

【リーズンルッカ’s EYE】柿澤勇人を深く知るためのQ&A

Q.舞台期間中、体調を整えるためにしていることはありますか?

A.できるだけ湯船に浸かっています。家でも銭湯でも、体を温めることは大切かなって。常に汗を出すようにしようとしています。

Q.昨年、各地を巡る中で、1番美味しかったものは?

A.この1年は地方でご飯もお酒も、余裕がなくてほとんどいけてないんですよね。
普段はパッと思いつくんですけど。ただ、すごく美味しかったものは覚えていて、それはハムレットが全部終わって、大阪で食べた焼肉。
そしてその焼肉屋に行くまでの30分ぐらいの時間で飲んだ缶ビール。
楽屋の片付けをして、最初の2〜3口が特に「めっちゃうまい!」と思いました。

Q.公演期間中に食べているものは?

A.朝はバナナと冷凍のミックスベリーをミキサーの半分くらいまで入れて、そこに豆乳と甘酒とプロテインを入れて飲んでいます。公演終わりはバナナかサプリが多いんですけど、『ハムレット』の時は玄米おにぎりと黒にんにくを一緒に食べていました。

Q.最近プライベートで行きたいところは?

A.スキーですね!毎年「行きたい」と思いながらも、去年は結局行けなかった。
天然雪のスキー場なら北海道でも長野でも、どこでもいいな。行きたいなあ。

<編集後記>

柔らかな雰囲気でインタビューと撮影に臨んでくれた柿澤さん。1年間、骨太な経験をひっきりなしにされてきたのにも関わらず、それを特別なこととはせず、肩肘張らずに振り返る姿が印象的でした。次はいったいどんな形で我々を楽しませてくれるのか。楽しみです。

<マネージャー談>

いつもどんな仕事にも真剣に取り組むかっきー。
舞台、ドラマにとどまらずバラエティも終わった後は必ず脳内反省会が繰り広げられているのです。今日も明日も汗だくになりながら日々前進あるのみです。
一緒に汗かいて前に進んでいきたいと思います。

<撮影中の様子はこちら!>

【プロフィール】
柿澤勇人(かきざわ はやと)
1987年10月12日生まれ、神奈川県出身。2007年、劇団四季公演『ジーザス・クライスト=スーパースター』で初舞台。劇団四季退団後は舞台・ドラマ・映画と幅広い分野で活躍する。
主な出演作舞台作品に舞台『海辺のカフカ』『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』『オデッサ』『ハムレット』、
ミュージカル『デスノートThe Musical』『メリー・ポピンズ』『ジキル&ハイド』『スクールオブロック』等があり、映像作品には、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、日本テレビ「真犯人フラグ」、TBS「不適切にもほどがある!」がある。
10月から放送されるフジテレビ「全領域異常解決室」、TBS「ライオンの隠れ家」に出演
 
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取材・文/於ありさ
写真/是永日和
ヘアメイク/松田蓉子
スタイリスト/五十嵐堂寿
 
 


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