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3人ミュージカル『ワイルド・グレイ』に挑む俳優・福山康平「楽しみ半分、怖さ半分」の理由は?

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』にて、2022年から2024年までの2年間アルバス・ポッター役を務めた福山康平。その次なる舞台、ミュージカル『ワイルド・グレイ』が2025年1月に根本宗子の演出で開幕する。
 
2年間、アルバス・ポッターを務めたことで成長したことは「いっぱいあるな」と笑顔で答える福山。今、彼の中に感じている舞台への思いを聞いた。

■「稽古、稽古、稽古……」の日々

――(取材時)いよいよ平間壮一さんと、廣瀬友祐さんと合流しての稽古を控えている段階とのことですが、心境を教えてください。
 
福山:頭の中がとにかく「稽古、稽古、稽古……」。すでに歌唱指導の益田トッポさんとみっちり稽古をしているのですが、教えていただいたことを毎日頭の中で整理して、次の日が来て、そこで教えていただいたことを整理して……の繰り返し。今回は3人で2時間、僕が関わる曲だけでも9曲ほどあるという状態なので、今はそれを片端から稽古しているという状況です。
 
――なかなかの曲数ですね。
 
福山:これまでにも、ミュージカル『生きる』で歌うことは経験しました。ただ、そのときはソロではなかったので。ここまでの曲数がある作品っていうのは、今回が初めてなんです。だからこそ、とにかく稽古するしかないなと、日々そのことが頭を占めています。
 
――出演することが決まった際は、どういう気持ちでしたか?
 
福山:もちろん「嬉しかった」は、まず来るんですけど、それと同時に「ものすごく高い壁が目の前に来たな」というのが正直な感想でした。2年間『ハリー・ポッター』に出ていて「これが終わった後、自分はいったい、どういうふうになっているかな」とずっと考えていました。
 
というのも『ハリー・ポッター』の前までは、仕事がある時期ばかりじゃなかったというのもあって。なので、2年間仕事がずっとあるというのが嬉しかったんですけど、終わった後、また元の状態に戻ってしまっては意味がないなと。どうやってステップアップしていこうかなと考えていました。
 
そんなタイミングでお話をいただいたのが『ワイルド・グレイ』。ストレートプレイばかりだったので、楽しみ半分、怖さ半分というのが正直なところです。稽古は苦しいものだと思うから「たくさん苦しむんだろうな、1ヶ月」って。プラスの意味でですけど、そう感じています。

■アルバス・ポッターとしての2年間も怖さはあった

――具体的に怖さっていうのは、何に対する怖さ?

福山:今回の舞台は3人の俳優とピアノ、チェロ、バイオリンによる舞台なんです。その少人数で2時間、18曲を回す。ほぼ舞台袖に捌けることはないし、歌のボリュームもあるし、今までにやったことがないことをたくさんやることへの怖さ……。自分がここから(稽古期間の)1ヶ月でどう変わっていけるのかが、楽しみであり、怖いんですよ。
 
――初日を迎えたら、その怖さはなくなるのでしょうか?
 
福山:いや、どうなんでしょうね。『ハリー』をやっていた2年間も、怖いなって気持ちはずっとありましたから。それは、ちょっと今日体調が悪いなとか、いつもとリズムが違うなとか感じても、そういう中で3時間40分、最後までやり通すというのがなかなかに大変で。舞台というのは、1回幕が開いたらストップはできませんからね。それがおもしろさであり、演じる側としての怖さでもあると思っています。
 
なんか僕「怖い怖い」ばっかりしか言ってないですね。もちろんちゃんと楽しんではいましたよ(笑)。
 
――2年間やっていても、怖さというものは付きものだったんですね。
 
福山:初日を迎えて間もない頃の怖さは今と似ていました。「どうなっていくんだろう」「ちゃんとやり通せるのだろうか」って。ただ、だんだんやっていくと、次は慣れてくることに怖さを感じるんですよね。それから『ハリー』の場合は1個掛け違うと、どこかで修正しないと、どんどん流れていってしまうから、ハプニングも絶対にあって。それらに対応するために、本番中常に気を張っていたと思います。
 
でも、やりがいはすごくありますよ。すごく楽しいし、舞台に立つということはやはり魅力的だなって。廣瀬(友祐)さんと平間(壮一)さんも、一度お会いしただけですけど、すごく素敵な方たちだし、間違いなく、僕を引っ張ってくださる2人なので、もう全力で今回はぶつかって、盗めるものを盗んで、くらいついていこうと思っています。

■「失敗しちゃいけない」からの脱却

――『ハリー・ポッター』の舞台に立った2年間を通して、福山さんの中で考えが変わったことや成長したことはありますか?
 
福山:いっぱいあります。箇条書きにするとなると、難しいんですけど。ただ、一番大きなところで言うと作品や稽古に向き合うにあたってのマインドが変化したなと感じています。今までは「失敗しちゃいけない」とか「どうやったらうまくいくかな」みたいなことを考えがちだったのですが、今は「失敗してもOK」「恥かいていこう」みたいな気持ちでいられています。2年間舞台をやっていて「どうせうまくいかないこともたくさん起こる」ということに気づけたんでしょうね。
 
ーーそう思えたのはなぜ?
 
福山:『ハリー・ポッター』の本番をやっているときに、スコーピウス役の門田(宗大)くんと、たくさん話し合ったからですかね。「もっとこうしていこうよ」「このシーンのこのセリフこうなんじゃないか」って。それまでの僕は、わりと毎日頭を切り替えて「稽古場でやったことを忠実に」みたいなマインドになりがちだったんですけど、「もっと自由に楽しめばいいじゃない」みたいなことを言ってくれて。それは大きかったかなと思います。
 
「あとは俺がなんとかするからちょっと1回ぶっ壊そうぜ」みたいな時期もあったんですよね。今までやってきたことを全部忘れてみるみたいな。「大脱線はしないけどチャレンジしてこうよ」みたいなのを言い続けてくれたんです、スコーピウスは。
 
――なるほど。もともとはそういうタイプではなかったんですね
 
福山:失敗しちゃダメというか、そこには正解がないかもしれない1本道に正解を探しに行くタイプでした。でも『ハリー・ポッター』が終わって、過去の舞台の稽古場とか思い出してみたら「先輩たちって、わざと脱線しにいってたよな」って思うこともあって。自分もそうしてみよう、あえて脱線してみようと今は思っています。
 
――お話を聞いて『ワイルド・グレイ』に対して楽しみと怖さが半々おっしゃっていた理由がわかった気がします。
 
福山:3人なので、ものすごく濃密だと思うんです、会話も。それを楽しめたらいいなと言うのと、あとは単純に廣瀬さんと平間さんの歌を、この距離で聴けるのは、とても幸せなことなので、それも楽しみです。
 
それから『ハリー・ポッター』をきっかけに僕のことを知ってくださった方もいてくださると思うので、その方たちにちゃんとしたものを見せることができたらいいなと思います!

【リーズンルッカ’s EYE】福山康平を深く知るためのQ&A

Q.2024年、どんな1年でしたか?

A.最初の半年は終わりが決まっていた『ハリー・ポッター』を最後まで、後悔のないようにやっていこうと、すごく前向きに過ごした前半だったかなと思います。『ハリー』が終わってからは……俺、何してたっけ(笑)。あっ、久しぶりに映像(ドラマ)の現場に参加させていただいて、映像の難しさだったり、おもしろさを久し振りに感じましたね。総じて楽しい1年でした。

Q.プライベートでは、どんな1年でした?

A.僕、魚をおろすのが好きで、よく寿司を握ってるんですけど、非常に上達できた1年でした!(笑)お寿司の会を定期的に開くのですが、毎回ちょっとずつ何かを変えてるんですよね、おろし方とかお酢の加減とか。今年は、特にコハダをめちゃめちゃ触ったんですけど、コハダをおろすのが上手になりました。

Q.どのタイミングでそんなことをする時間があったんですか?

A.「ハリー」はダブルキャストだったんで、オフの日に市場に行き……

Q.バイタリティがありますね。

A.魚を触ってる時間が幸せなんですよ。触るというか見てるだけでもいいんですけど、すごくワクワクしちゃうんです。だから、僕にとってはリフレッシュなんですよね。

Q.今やってみたいことはありますか?

A.寿司を握る時って、人の家に行って握るか、自分の家に呼ぶかなので、その1日だけしかできないわけですよ。だから、1週間連続とかでやってみたいなとは思います。1週間あれば、いろんな魚を買ってちょっとずつ買って、いろんな魚に触れられるし、3日目が美味しい魚とかにも挑戦できますし……寿司屋になりたいんですかね?(笑)。

<編集後記>

『ワイルド・グレイ』に向けての思いや、『ハリー・ポッター』での2年間の話はアツく真剣に一言一言を選びながら語ってくれた福山さん。一方、魚やお寿司の話となるとその表情は一気に柔らかく。本当にお好きなのだなというのが伝わってきました。そのギャップでこれからもファンの方を魅了していくこと間違いなし、そう感じた11月の雨の日でした。

<マネージャー談>

インタビューからもわかるように、とても真っ直ぐで、そしてとても不器用な俳優です。黙々と寿司を握る姿や、楽しそうに魚を眺めている姿を想像するにきっと職人気質なんだろうなと思います。不器用で、寡黙で、凝り性・・・そんな俳優にはうってつけな気質をこれからもどんどん伸ばして発揮していって欲しいです。

<撮影の様子はこちら!>

【プロフィール】
福山 康平(ふくやま こうへい)
1998年3月13日生まれ、東京都出身。2013年、ピアノの発表会にてスカウトされる。2015年、映画「予告犯」で物語の鍵となるヒョロ役をオーディションで射止めデビュー。映像や舞台で精力的に活動中。
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<公演情報>

ミュージカル『ワイルド・グレイ』
2025年1月8日(水)~26日(日) 新国立劇場 小劇場
名古屋、大阪、高崎公演あり
脚本:イ・ジヒョン
音楽:イ・ボムジェ
翻訳:石川樹里
演出・上演台本・訳詞:根本宗子
訳詞:保科由里子

出演(チーム固定のWキャスト):

ロバート・ロス役:福士誠治
オスカー・ワイルド役:立石俊樹
アルフレッド・ダグラス役:東島京

ロバート・ロス役:平間壮一
オスカー・ワイルド役:廣瀬友祐
アルフレッド・ダグラス役:福山康平

STORY:
慣習と規範に縛られた19世紀末、ロンドン。
文学界の異端児オスカー・ワイルド(立石俊樹/廣瀬友祐)は小説「ドリアン・グレイの肖像」を連載するが、美と若さのために魂を売り渡す青年ドリアン・グレイの物語は、時代に合わない破格的なテーマと内容で英国社会に衝撃を与える。議論と批判は収まらず、結局主人公のドリアンが死を迎えるという望まない結末で小説を出版する。そんなワイルドを支え続けるのは、友人であり支持者であるロバート・ロス(福士誠治/平間壮一)だった。二人が望んでいた自由が芸術の中でさえ挫折したその時、ドリアン・グレイにそっくりな青年アルフレッド・ダグラス(東島 京/福山康平)が現れる―

公式HP:

取材・文/於ありさ
写真/まくらあさみ


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