子どもの気持ちがよみがえる。目黒区美術館「生誕130年 武井武雄展」
目黒区美術館で開催中の武井武雄展に行ってきました。
子どもの頃キンダーブックを買ってもらったり、母もよく名前を口にしていたので(武井武雄って声に出して言いたい名前ですよね!)とても懐かしく、武井武雄はディックブルーナと並んで私の原体験と言っていいかも。
お目当てはやっぱり「童画」。武井武雄の絵はなんとも言えない異国情緒があって、不思議なリアル感もあって、いろんな国にいってみたい!(空想の国も含めて)と子どもの私の気持ちを掻き立てました。
展示を見て回りながら、そんな気持ちがすっかり蘇ってきて、にんまりしたり、(密かに)笑ったり。
今見ても、いろんな国に行ってみたい!(空想の国も含めて)と思わせてくれる。こんなパワーのある絵って他にあるだろうか。それともこれは私の思い出と結びついているから?
懐かしいのにとてもモダンで、描き込みや世界観のつくり込みがすごい。可愛いというのとは違って、ちょっと不気味な感じもしなくはないのだけど、そこもまた魅力。描かれた絵の先にも物語がたくさん隠されているような、想像力も刺激してくれるのですよね。
ああ、やっぱり武井武雄はいい。
改めて、こんな絵を見て育ったのは幸運だったなあと思います。
この展示では、彼のつくった本もたくさん見ることができました。そちらは初見だったので、とても新鮮。
「刊本作品」としてまとまっていたのですが、これがまたすごい。
異常な(と言っていい)情熱を持って、つくられている本たち。材料から懲りに凝っていて、紙でできているとは限らないんですね。そこがもう先見の明というか、今見ても新しい。
パピルスを作っている人を探して、その人がパピルスを栽培して(!)その本を刊行する分を用意するのに4年費やしたとか、訳がわからないんですが、セロファンとか透明フィルムとか、果てはゴブラン織りの本とか。
あとは普通に(?)エンボス加工とか、竹尾の新発売の気泡のあるふわふわした紙に箔押しとか。
会員にならないと買えなかったらしいので、私なんぞが知る由もなかったのですが、その見事な本が並べられていて、眼福というか、デザイナーとしても大変面白かったです。
実験的なことをたくさんしているので、今で言うところの「デザインのひきだし」的な感じもあります。コストがかかりすぎで、なんの参考にもならなかったかもしれませんが(笑)。
他には版画や彼のデザインしたかるたなどもあり、盛りだくさんの展示でした。
すごくいいなあと思ったのは、娘さんのためにつくったトランプ。家にあったハガキ(誰かから届いたもの)を切って、そこにトランプの絵柄を描き込んで作っているので、表には宛名や消印が押してあったりして(なので当然、遊んでいるうちになんの札か覚えてしまう!)遊んでいるところを想像するとこちらまで楽しくなってきます。
黒柳徹子の絵本の展示(実際は依頼後すぐに亡くなってしまい、お話に合わせて既存の絵を選んで構成したらしい)もとても良くて、タイトルの変てこりんさに反して(失礼!)とても素敵な話でした。絵とお話が不思議に合っているのも感動的。
その展示のそばには武井武雄の本も読めるように置いてあって、私のお気に入りだった「九月姫とウグイス」もありました。家に帰って探してみたんですけど、なぜか見つからず。忘れた頃に出てくるのかも。
武井武雄展は今週末、8月25日まで。
目黒区美術館はちょっとレトロな建物で、まわりにはプールやいい感じの木陰があり、夏休みらしい景色が広がっていました。