デザイナー的感想:三島喜美代―未来への記憶をみてきた
デザイナーとして仕事をしてきて、チラシやポスター、以前は新聞広告なども、今までどのくらいつくってきたでしょうか。
家具や本と違って、私の主な仕事の広告はつくってもすぐに捨てられる運命のものだから。やや自虐的に言うこともあったのですが、今回はそんな印刷物を題材に作品をつくり続ける三島貴美代さんの展覧会に行ってきました。
会場は練馬区立美術館。
雨の日の美術館
会期が始まってからずっと行けるチャンスをうかがっていたのですが、立て込んでいてなかなかタイミングが合わない。先日、大雨の降った日に「今日行かないと行けないかも!」と行くことにしました。
行ってみると雨の日プレゼントの企画があり、ポストカードのプレゼントがもらえました。こんな日によくきたね、って感じでしょうか。
ちょうどギャラリートークが始まったばかりのなかなか良いタイミング! お話の中で“こうしてみると面白いんじゃないか”ということでやってみた、ということがいくつも出てきて、妙に親近感を抱いてしまいます。
そんなわけで今回は、学芸員さんの解説付きで最初から最後までざっくり鑑賞した後で、もう一度最初に戻って気になった作品をじっくり見られるという贅沢仕様でした。
動画以外は撮影可、ということだったので、写真も少しばかりご紹介します。でもあの大きさ感とか、不思議なリアル感とか質感とか、あるいは作品の中に埋没する感じとか、行ける方はぜひ実物をご覧いただきたい!
おもちゃ箱のような楽しさ
展覧会の構成は最初は平面的なコラージュから始まり、やがて印刷物を陶で表現するという立体作品へ。そしてなぜかそれが巨大化していくという展開に、理屈抜きでなんとも楽しくなってきます。
最初の発想は、皿洗いをしている時に茶碗が割れたのを見て、新聞が割れたら面白いよね、と思ったのがきっかけとか。
捨てられるはずの印刷物を作品として再現ということなんですが、当方駆け出しの頃に、まさにこういうスーパーのチラシもつくっていたので、なんとも言えない気持ちにもなります。そういえば、あの頃はすごい勢いで量産していたよなあ……
巨大な少年漫画雑誌のオブジェを見ていると、自分もいつのまにかその中に取り込まれていくような不思議な感覚も。
ゴミを再現した作品のディテールも、これでもかとこだわっていて、つくりこみもさることながら、缶ひとつひとつも、あ、こんな飲料あったよね、などなど、ずっと見ていても飽きません。
面白いなあ。
圧巻の「20世紀の記憶」
そして最後の展示室は、いっぱいに敷き詰められた大量のレンガ「20世紀の記憶」。
表面には1901年から2000年までの新聞の見出しが写し取られています。
自分がリアルタイムで見聞きした過去の出来事も、生まれるずっと前の出来事も、同じように積まれていて、100年という年月が並列に、ランダムに、形となってそこにある。100年分の時の可視化。
何度もうろうろしていたら、人が引けて一人だけで鑑賞するタイミングも。近くのレンガを読んだり、遠くを見渡したり。遠い未来からやってきた人になったような気さえしてくるようなトリップ空間でした。
後半の立体作品が見どころとは思うけれど、前半のコラージュ作品もとても楽しいです。全体だけでなく、近寄ってジロジロ見るのがおすすめ。(夢中になって近づきすぎないようにしないとですが!)
いつものように展覧会ポスターが欲しいなと聞いてみたら、今回2種類あったというのに開会早々に売り切れてしまったそうです。すっかり出遅れました、残念。
「三島喜美代―未来への記憶」は、練馬区美術館で2024年7月7日(日)まで。
西武池袋線中村橋駅からすぐ。
インタビューも見つけました。面白いです。
おまけ
満足して外に出たら、展覧会の看板の横にゴミ収集車が停まっていて、二度見してしまいました。
おまけ2
展覧会ポスターはゲットしそびれたので、クリアファイルとポストカードを買いました。
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