大人の大学進学 (1)進路決定のポイント
小学生の頃から「高校までは行かせてあげる」と言われ続けて、大学進学という選択肢が最初からなかった私。ところがコロナ真っ只中の2021年、武蔵大学で練馬区特別履修生として一年間学んだことで、まるで止まっていた時計が動き出したように進学意欲が湧いてきてしまいました。
「デザイナーの勉強部屋」にも書いてきた通り、いろんなことを自分で学んできたほうだと思うけれど、大学の授業というのはやっぱり全然違うんですね。世の中にはまだまだ知らないことがあるんだという実感と、それを心底楽しむことができた、という満足感と。
今頃なんですが、ちょっと呪いが解けた感じでしょうか。この一年の経験はインパクトがありました。
もちろん他の若い大学生と違って、将来かかってないというお気楽さもあるわけなんですが(逆にいうと、今さらそんなに将来変わりようもない)、シンプルにこう思ってしまいました。
「大学ってこんなに面白いところだったの? 知らなかったよ、ずるい!」
まずは身近なところで検討
こんなに楽しい大学生活(前期後期1科目ずつでアレですけど)、一年で終わってしまうのはちょっと悲しい。なんとか続ける手立てはないものか。
後期の頃から少しずつ調べ始めました。
まず、一年親しんだ武蔵大学の「科目等履修生」制度で続けるという選択。ところが区の補助がなくなるとやっぱり費用が重くのしかかってきます(つくづく練馬区には感謝しかないですが)。1科目につき38,500円かかるので、短期なら良くても関連科目を続けて取っていくというのは難しそうです。
そうなるとやはり通信制しかないかということで、2つの候補で検討しました。
大人になった今、入学しないという選択肢はありません。(幸いなことに入試もない)
選択肢1 某芸術大学
在籍中という知人から話を聞いていたので以前からちょっと興味があった芸術大学。資料を取り寄せたり、サイトを見たり調べてみました。
ただ、私も長いことデザイナーをやってきて、もちろんまだまだ知らないことも分野もあるんですが、デザインについては専門学校で学んだし、実務経験もあるので、文字通りの「学び直し」になってしまう。今の職種でいまさら学歴はいらないですし。
美術も興味はあるし好きだけど、今から大学で専攻して学びたいかというと、ちょっと疑問もある。美術館に行ったり、以前通っていたカルチャースクールなど、独学プラスアルファでも良い気がしてきました。
選択肢2 放送大学
通信制大学の代表とも言える放送大学。心理学が評判良さそうなので興味を持ちました。武蔵大学で後期に受けた「コミュニケーション理論」で、言語心理学が出てきてすこぶる面白かったのです。これはもっと学んでみたいと心底思った知らない分野。SF好きだった私は未知の世界に弱い。
反面、難しいのかもと思ったのですが、やってみて失敗しても就職や将来がかかっているわけでもないから別に何も困らない(ここは大人の開き直り)。
その他、いろんな意味で私の性格や生活に合っているような気がして、また仕事にもプラスになる気もして、こちらに入学することにしました。
決定ポイント
すでにいろんな方がまとめていますが、放送大学に決めたポイント。
まず、多くの人が一番にあげているように、費用がリーズナブルということ。
これは収入が保証されていないフリーランスには、特に非常に大きな点。というより必須ポイントと言えるかも。
放送授業1科目11,000円、面接授業5,500円。入学料は全科履修生で24,000円(10年間在籍できる)。放送授業はテキスト代込み。※2023年4月現在
しかも年間いくらではなく、授業ごとに支払えばいいので、懐具合や仕事の塩梅を見ながら取っていけるのです。なんならちょっと休んでもいい。これは大きい。
次に、これもみんな言ってる「放送授業見放題」。
取っていない授業でも、入学するとネット上で自由に見ることができます。でもまあテレビラジオで放送しちゃっているので入学しなくても見られるんですが、ネットだといつでもアクセス可能になります。
これがいいのは、先に見てから次の受講を決められることでしょうか。視聴してから単位に挑戦するか判断できるので、失敗が少なそう。
分野が意外に幅広い、というのもポイント。
教養学部しかないんですが、さまざまなコースが用意されていて、自由度も高い。
興味を持った心理学のほかに、文学、社会学、法律関係、情報系。芸術大学にありそうな博物館概論などの授業もちゃんとある。著作権についての授業もあるので、これはそのうち取っておきたい。
好きな語学に関しても、特に面接授業では普段お目にかかれないような言語も並んでいて、すごい量。ちょっと齧ってみたいという欲求にも対応。卒業条件を考えなければ、興味の赴くままになんでも学ぶことができそうです。
そしてその面接授業が楽しそうということ。
最初よくわからなくて電話をもらった時に聞いて教えてもらったのですが、面接授業というのは他で言うスクーリングのことのようです。卒業要件には一定単位以上取ることが入っています。
面接授業は学習センターに直接行って受けますが(例外あり)、多くは土日の2日間で完了するらしく、社会人でも予定が立てやすい。週一で同じ時間に受けるものもたまにあるようで、こちらを取れば通学気分が味わえますね。
内容は実にバラエティー豊か。全国各地にある学習センターのどこの授業でも受けられるし(ただし人気があるものは抽選)、その土地ならではの特徴ある内容も散見されるので、余裕ができたら旅行がてら行ってみるというのもやってみたいなあと思いました。
このやたらと都合がよい放送大学。設立当初から存在は知っていましたが、当時はネット配信がなくて放送のみ。大学としてはいったいどうなんだろうね、と(知りもしないのに)ずっと思っていました。インターネットの普及、加えてこの3年オンラインで物事済ませることが劇的に多くなって、普通に選択肢に入ってきた印象があります。武蔵で対面授業の良さも実感しましたが、なんらかの制約のある人にとっては持続可能なとても良いシステム。サステナブル。
卒業した後で、また別コースに入り直す強者もたくさんいるみたい。
特典
これもいろんな方が取り上げてますが、
学割が効くようです。
アドビ、アップル、アマゾンプライム、この辺はデザイナーには(超)嬉しいです。調子に乗ってモリサワパスポートも調べましたが、こちらは商用不可のよう(残念)。
また、放送大学は国立美術館キャンパスメンバーズ制度に加入していて、東京だと東京国立近代美術館本館、国立映画アーカイブ、国立西洋美術館、国立新美術館で常設展が無料だったり、特別展が割引だったり。他でも学割が効くでしょうから、4月からは展覧会に多めに行くのも裏テーマ。
さらに学生用のシステムの中に自習室を発見。単位とは関係なく、自分で基礎的な勉強をすることができるようですね。これについては今のところ言及している人を見かけないですけど、化学や数学、英文法、PCスキルなどのコースが用意されています。
武蔵大学から一年後。この4月に入学です。
次回は願書や手続き、その過程で知った衝撃の事実(?)について書いてみようと思います。