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小さな賞金稼ぎ

今までしてきたいろんな仕事(+らしきもの)について書いています。今回は一回きりのまぼろしの小遣い稼ぎの思い出。

子どもの頃、長期休みには毎年、川崎北部にある母方の祖母の家に行って過ごしていました。同じ川崎の南部に住んでいたので1時間ちょっとで行ける場所でしたが、当時の北部は今と違って畑も多く、工業地帯にある我が家とは生活も違い、新鮮な毎日。

滞在中は近くに住む兼業農家や商売をやっている親戚宅で手伝いもしていました。

いとこがとにかく多く、年の近いいとこたちとは一緒に働いたり遊んだり。たまに引率役の大人たちに遊びに連れて行ってもらったりする時は、ちょっとした遠足のようで楽しかったのを覚えています。遊園地などの他、お寺に皆で行って中を見せてもらう、なんてこともありました。

休み中、主に滞在していた祖母の家は典型的な古い日本の家屋で天井が高く、部屋は畳。あかりをつけても少し薄暗い。

ある夏、その家でノミが大量発生してしまったことがありました。

以前からいないわけではなかったのですが、その年の天候のせいか、それとも猫がいるからか、目を凝らすと跳ねているのが見つかるほど。

そこで祖母と同居していた一番上の伯父が、子どもたちを集めてお触れを出しました。

「ノミ一匹につき1円」

ノミ1匹に対し、1円の賞金を出すというのです。退屈が嫌いな子どもたちが乗らないはずはありません。

一人一枚ずつA4ほどの紙をもらい、捕まえたノミをセロテープで貼り付けていきます。持っていって見せると伯父が1円玉をくれて、今度は紙の下半分にその1円玉を貼り付けていきます。

ちょっとしたポイントカード。

子どもの目線は低く、目も良いので、薄暗い家の中でもノミはどんどんつかまります。普段から網を使わず蝉を採ったりしていたので、小さい手も素早い。

今なら子どもに害虫退治を頼むなんてとんでもないと思うんですが、そこは昭和。誰が一番たくさん集めるか、みんなで紙を見せあったりして私たちは夢中になっていました。

ところが何日か経った頃、これが祖母に見つかってしまいました。

彼女はトカゲや蛇が大の苦手。たぶんノミも苦手だったのでしょう(好きな人なんてあまりいないと思いますが)。

おまえたちはなんてことしてるんだ!とこってり怒られてしまいました。

そして集めたシートは没収。ノミはともかく、そこに貼られた1円玉も一緒に。

私たちは伯父の指令でノミ退治に駆り出されているだけで本来ならなんのお咎めもないはずが(役立ったはずなのに)、報酬まで没収とは…… 

違法(?)な手段で手に入れた金を持つことは許さん!ということでしょうか。理不尽でも大人の決めたことには逆らえない時代……というか、言い出した伯父も祖母には勝てなかった模様(いつの間にか消えていた)。

そんなことならノミのシートと1円玉のシートを分けておけばよかったのでは、と子どもながらに思いましたが後の祭り。その年以降大量発生はなかったので、その反省を生かせることはなかったけれど。

苦手な生き物が絡まなければほがらかな祖母は、知的でユーモアがあって皆の人気者。大好きな祖母とユニークな伯父のちょっと変わった思い出です。

まあ、報酬抜きにしても面白かったですしね。

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藤原ユカ| L'escargot Design
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