はじめましてと歩合給の使い道
私は、Lepairという革の加工や修理の請負業者を立ち上げ、今後このnoteでは業務にまつわる小話を書いていけたらと思っています。
ただ、今回初めましてのご挨拶として、立ち上げに至った経緯を革とは無関係な切り口から書いてみようかと思い、このタイトルとしました。
私は今まで季節によって売上が変動するような会社で勤務してきました。あまりに仕事量が時期で異なるので、定期賞与とは別に歩合給というか、残業代が季節で大きく違いました。
ボーナスは、世間的にも時期が統一されているため、使い道は割と決まっている人が多い様に思いますし、私はほぼ全額を貯金にしていました。しかし、歩合分については残業によっての家事短縮や疲労解消などに使ってしまうということを数年間続けてきました。
もともと歩合分は自分が頑張った成果なので、自由に使って良いと決めたものの、数年経つと、何も残らないことについて、歳を取ったときに後悔するのではないかと思うようになりました。
今は体力もあり、好奇心もあって、仕事に熱意を持って打ち込めていますが、年老いたとき、若い頃の時間を何に使ったのだろうと思ってしまうことが急に怖くなりました。
そこで、頑張った人しか手に入れられない何かを形として残してみようと思うようになり、あまり興味のなかったハイブランド品から歳を取っても使い続けられそうな何かを探すということを始めました。
最初は恐る恐る10万円程度のダウンコートを購入しました。
冬のワンシーズンを着てみて、落ちないボリューム感と絶対的な暖かさから、実は高級品とはデザイン料がほとんどを占めているのではないかという偏見が薄れました。
そして、次はロエベの革バッグを購入しました。
以前から足の蒸れや臭いを気にしていた私は日頃から革靴を愛用しており、適切なメンテナンスを行うことで長持ちし通気性もある革という素材を大変魅力的に思っていたので、歳を取っても持つことのできそうなデザインを重視して選びました。
注文したバッグが届いて、それを手に取った時、感動で本当に涙しました。
美しいデザインで選んだものでしたが、そのフォルムを表現するための革選びが本当に素晴らしいと思ったからでした。
「本物に触れることは大切」という言葉は好きではありませんが、高級品とは多くのプロフェッショナルが集った珠玉の一品なのかもしれないということを知りました。
そして、その高級品を手にした時の高揚感と感動を維持し続けられるようなお手伝いをしたいとブランドの立ち上げに至りました。
せっかく長持ちする素晴らしい革を選んで製造されたものです。流行が変わったり、趣味が変わったりして使わなくなってしまうのは本当に勿体ないと思うのです。
あぁ、きっと私のロエベのバッグは、流行に左右されない曲線美と使いやすさを追求したデザイナーさんがいて、
そのデザイナーさんの書いたパターンを手に、革を嗅いで、触って、撫でて、そうやって革を選んだ人がいて、
その革からどこのパーツにどんな部位を使用するか頭を悩ませながら裁断する人がいて、
そうやって多くの人が真剣に取り組んだ積み重ねが国境を越えて私の手元に届いたんだと思うんです。
それが手に取った瞬間分かるあの衝撃はサイコメトラーのようです。笑
私も誰かに衝撃を与えられるよう邁進します。
どうぞ宜しくお願いします。
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