薔薇の牧場に舞う者は (2020/01/10) 新春#02 『忍 魂』【3】✦承前
「そうですね。あなたの名刺には、名前の読み方と思しきものが振ってある。
Nicky Satow
これがあなたの名前だ。」
「ニックネームです。
日本人でなくとも全く気になさらないことは判っていましたから。何の気兼ねもなく伺いました。」
「国籍・人種等は全く気になりませんね。
我が社中には様々な国の者が在籍しています。互いの国同士が友好国とは限りません。かつては戦争をしていた当事国、今も敵対国同士の者も大勢います。国籍・人種など気にしていたら一日だってもちません。」
「だからこそ、
Research Institute
for Universal Calligraphy
と称していらっしゃるのですね!
Universal Calligraphy【書美学】
という命名が素晴らしい!
International ではなく、“Universal” ❗
先ずはこちらについて解説お願いします。
「『手書きの用筆法における統一理論』を志向する、という理念だとお考え下さい。
欧米には“カリグラフィー”があり、日本や中国には“書”あるいは“書法”がある。一見別々のものに見えますが、【方筆】理論で切り込めば両者は各々互いのヴァリアントに過ぎません。
異文化の伝統として今に繋がっているため別々のものと思い込んでいるだけです。」
「誠に申し訳ありませんが、それは飽くまで『用筆法』についての解説ですよね。」
「そうです。それで充分では?」
「いいえ!!
何度も申し上げる!私が聞きたいのは、
Universal Calligraphy/Escallics
の根底にある、『想い・思想・志』です。それを知ったうえで作品を創作するのと、知らずに形だけ創るのとでは全く意味が違います!!モチベーションがまるで違うのです。あなただって創作者ならお解りの筈!!!」
「あなたは、前所長の作品集
『Esterra Works』
をご覧になってはいないのですか?」
「あります。コバヤシに見せてもらいました」
「後書きに載っていた筈ですが?」
「載っていました。前所長の想い、が。
ですが、私がお聞きしたいのは、
現所長=貴方
の想いです!!!」
しつこい奴だ。何でそんなことを聞きたい?聞いてどうする??
「地球儀があるのですね?」
唐突に言いながら部屋の隅にあるそれに近づく。
「はい、暇な時はよく眺めています。廻しながら・・・。」
「一方で、日本地図もすぐ横に貼ってあり・・・両方見較べることができるようになっている・・・フム・・・
「では伺いましょう。世界が平和になり、地球全体で一つの連邦国家になったとして・・・その場合、世界政府の首都を置くとしたら、何処が最適だと思いますか?」
思わず苦笑する。
「そんなことが貴方の問いに関係あるのですか?」
「あります!大いに!!お答え下さい。それこそ、Universal な視点で考えて何処が相応しい、とお考えですか?」
「チェルカスラヴィヤでしょう。」
「ほう、何故?」
「貴方の言う前提:世界が統一されたとしても直ぐに動乱が皆無になるとは想定し難い。落ち着いた情勢になるまでには、相当の時間を要する筈。少なくとも統一直後には不満分子が世界各地で反乱を起こすと思われる。」
「それで?」
「仮に反乱が起きた場合、中央政府は直ちに即応部隊を現地に派兵しなければならない。
則ち、世界各地に向けて迅速な
『内線作戦』
を展開できる中心地であることが絶対条件になる。
とすれば・・・」
「とすれば・・・」
「チェルカスラヴィヤが最適だと思います。」
「・・・・・・」
「さあ、私は答えた。今度は貴方の番だ。
貴方の来訪の目的は何か正直に応えてもらおうか。
夜遅く訪ねて来て色々と問い質してくる貴方の目的は何だ?貴方は一体何者なんだ?
答えられないなら帰ってくれ!今直ぐにだ!!」
「・・・・・・」
ドアを指して言う。
「ドアは開いているぞ。」
「ニコラ」
「何だって?」
「ニコラ、だ。」
「綴は?」
「N・I・C・H・O・L・A」
「・・・・・・」
「この名・・・所長・・・あなたの記憶にある筈だ。遠い昔に。
「俺の話を聞きたくないか?聞いた方が良い、と誰かに言われなかったか?
どうなんだ?RUCA所長?
いや、そろそろこちらもあなたを名前で呼ぶことにしよう。あなた生来の名前・・・あなたの親がつけた名で。
●●●●●● 」
(2020/01/10)(23:45) @名古屋・日本
遅い・・・体験レッスンは 23:30 までの筈!
募集案内にも謳ってあるし、これまで時間厳守で通してきた。定時に終わり、直ちに連絡する約束だ。
それが今夜に限って・・・遅い!!
考えるより先に、立ち上がった。
★次回、(2020/01/10) 新春#03 に続く